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「きもの、着てるだけでエライ!」声を大にして言いたい。

こんにちは、マタギです
私は先日、着物への敷居を低くしたい、という熱い情熱を語ったばかりなのですが、実は、着物への敷居が高いことも大事だと思っているのです。

正直着物は語った通り、めんどくさいし厄介だし、大変です。
だからこそ、着物を持ってて、一人で着られて、その上何かしらお茶だのかるただの三味線だの、特殊技能を持っている(披露できる)なんて人が尊敬され、憧れの対象となり、商売(なりわい)にもなりえるからです。

だれでも簡単に手に入れられて、誰でも簡単にちゃちゃっと着られて(今は二部式とかワンピース型、作務衣なども便利ですね)忍者や花魁がそこらへん歩いていたら、日光江戸村はなくなってしまいますもんね!

なので、「どこでどうやったら手に入るのか?または作るのか?」「お手入れは?」「マナーは?」って興味を持った人が、調べて前進していくのをお手伝いできれば私の役目は5割終わります。


今日の記事では、情報発信はそこそこに、きものを着たいけどまだちょっと怖いわ、めんどくさいわ、という方に向けて、メンタリティの面で背中を押せればなと思っています。


きものが怖くて着ていけない人へ



じつは私、30代のころは(今もですけど)着付けを正式に習ったことは一度もなく、衿芯を入れることさえ知らなかったし(入れずにヘロヘロの襟のまま出かけた)、
帯周りは常に汚くて、帯締めはほどけまくり、さらにデカパイが帯の上に乗ってました。今でもたまに乗ってて、写真で見つけて残念な気持ちになります。(補正が甘いとそうなる)

そして、ガツガツ大股で歩き、出版社のパーティーではせっかくおしゃれしてたのに、着物のままスパスパ煙草を吸い、コーヒー飲んでシミをつけたりしてました。
さすがに今はやらない↑💦
失敗をかさねて、学んで、少しづつ改善しました。

昨日なんて、着物のまま歩いててやきそばパンかじっていたら、焼きそばが訪問着に落ちてソースのシミが出来て笑ってしまいました。わて、もう50やぞ💦

着物を着るようになって少しづついろんな人に教わって、意識が変わっていったので、あの頃よりは多少マシに着られるようになっただけで、今でももっと美しい所作を目指していきたいです。だって、他の人に憧れを持ってほしいから。(いや、やきそばパンかじってる人は憧れられるわけがない?わかってます💦今は棚上げで)


あこがれの所作というものも、実際美しく着こなして動いている人を目の前で観ないと、意識できません。だから、そういう人が集まる場所に、出向いてほしいです。

私はうまく着られてないから…
恥ずかしいから…
ツッコまれたり、残念な人ね、と冷淡な視線を向けられるかもしれない…と、臆してやっぱりお洋服にしよう、と妥協するのをやめてほしいのです。


上を目指し、上だけを見て、上の人をかってに恐れ不安になるのを辞めてください。

上、っていうのは自分よりレベルの高い人のことです。
上をみたらきりがない。ヒエラルキーの頂点の人たち(伝統工芸とかハイソな人たち)には逆立ちしても張り合えないからです。

それよりも下を見てください。


やたら上を恐れるよりも、下を見て勇気を出す!


世間の人の大部分は、その着物がポリエステルなのか、正絹なのか、プリントなのか手書き友禅なのか、見分けがついていませんし、あなたがお花の先生なのか料亭の中居さんなのかの区別がつかないのです。

まあ、多少自分でも持っていて着たことのある団塊世代のご婦人とかなら、みれば「いいもの」「そうでないもの」くらいは分かるかもしれませんが、男性や若い人はほぼわかっていません。
60万円の大島紬よりも、プレタポルテの大量生産振袖の方が可愛いし、お高いと思っています。

「ただのきもの」「きものを着たご婦人」ロケーション次第では「いいべ!」インバウンドの観光客には「ワンダホ!ニッポンにはまだkimonoのひとが歩いてるなんて!!」と感動してくれます。
それが大部分の人の感想です。




上のお写真の女性たちは、「芸者体験」に集まった素人さん・日本舞踊のお弟子さんで、きものはレンタルショップのポリエステルの黒留めそでです


この前、能舞台で能楽師さんに能カルチャーを教わるっているイベントに参加しました。そこで、観世流の流派のお家に代々伝わるお衣装や能面をみせていただきました。そういうすばらしいものを身に着けて、一流の人が踊る舞台は、遠くのお席でも5000円、いいお席は25000円かかります。

そして、舞妓さんとか、芸者さん、いますよね?あの人たちは歩く工芸美術品と言われています。
舞妓さんは自分で着られないくらいおそろしい着付けを男性にしてもらっています。帯とかも自分で締められない。
何百年の伝統の手描き友禅の着物と西陣織の金ぴかの帯、べっこうのかんざし…
昭和初期まで、そんなものは幕府献上品であり、やんごとなき身分の貴族や大名家の子女しか着られない。
財閥や、とにかくお金持ちか、舞台で芸能をみせる特別な職業の人だけに許された装束でした。

本来なら美術館収蔵レベルの伝統工芸品を、何人もの手を借りて支度していて、そんな若い女の子がブラブラ歩いていたり、お客さんと一緒に京都のバーで飲んでいたり(もちろんノンアルですよね?)するんですよ!

私は仕事で六本木のキャバクラに取材に連れて行ってもらったことがあります。美しく着飾ったキラキラした若い女の子達がたくさんいました。目映かった。お客さんは、彼女たちをながめておしゃべりしてお酒を飲むのに、60分5万円とか10万円とかを払うのです。すごい世界。でも、女の子たちは最初からそんなブリブリの姿で街を歩いたりしない。
その姿を見るためには、クラブにお金を払わないといけないのです。

数字のはなしばかり出してえげつなくてごめんなさい。

脱線しましたが、着物は本来、お高くてお手入れが大変で、ランニングコストもすごいかかるんです。そんな衣装を、外に着ていけて、出歩ける。見かけたら、それはただで観られてラッキー、有難い代物なのです!!

そういう意識で、外へ出かけたら、きっと楽しくなると思うのですよ!

「わたしが着物をきて出かけるだけで、日本の伝統工芸の逸品をただで魅せてあげているのよ!」とは思わなくてもいいんですが、「私が日本をおしえてあげる!」くらいの気持ちでどうでしょう?

今は亡き、鈴木履物店の主人の金言

私の心に輝き続ける。



深川門前仲町に、かつて「鈴木履物店」という下駄・草履やさんがありました。そこの店主は、おじいさんで、数年前に亡くなられて、お店はもうたこ焼きやかなにかに変わってしまいました。
彼はこの界隈で、さいごの「本物の粋を知る人」として尊敬を集めていました。メディアで「鈴木履物店・門前仲町」と調べると、
いろんな記事が出てくる 深川・粋界隈では有名人です。



私もかつでそのお店で、自分にぴったりなぞうりを選んでもらったり、下駄の鼻緒修理をしてもらったりしました。
「長く履くためには、1回ごとに左右を入れ替えて収納するんだよ」とか、鼻緒が緩んだらすげ直してあげるから持っておいで」といろんなことを教わりました。

あるとき店主の鈴木さんに、
「40過ぎてるのにこんなにピンクの可愛い草履を履いちゃっていいのでしょうか?」と質問したとき
「いいんだよ、そういうの(年齢)気にしなくても。いくつになっても、女性はおしゃれして出かけなくっちゃな!。そうすれば世の中がパーッと明るくなるんだよ。何歳になっても女性が明るく生きることが、世のため人のためなんだ」と答えてくれました。


その言葉が、いまでも私の心に常夜灯のように温かく照らし続けてくれています。


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