僕にとって大学受験とは何だったのか?

大学受験の空気がクラスメイトのなかでも出はじめたのが高2の夏。親が教師だったからなのか、親友が入っていた個人塾になんとなく面白さを感じたのか、僕は右へ倣えで受験勉強をはじめた。

受験勉強といっても、休憩と称して当時発売されたドラクエVIに没頭し、通っていた個人塾で勉強が終わったあとに夜な夜な近所のゲームセンターに繰り出していた。お世辞にも真面目に取り組んでいたとはいえないこんな状況で、大学に進学したいと思った一番の理由は「休みの長さ」だった。

「レベルの高い大学に行くほど年間の休みが多いんだぜ」

塾の先生が言ったこの言葉が印象的だった。とはいっても休みを使って何かやりたいことがあったかというわけではないので、僕はもともとぐうたら気質だったのかもしれない。

ほどなく志望校を決めることになり、見栄っ張りな僕は六大学をメインに受験することにした。そこで学びたい大義は何もなく、受ける学部は募集枠の多かった経済学部が中心。結果は一つ下の後輩に「来年、一緒にがんばりましょうね!」と言われるぐらいさんざんだったが、一緒に学ぶ親友の影響や個人塾の先生の指導が良かったのか(本当にありがとうございました)一通だけ合格通知をもらったMARCHの一角校に滑り込んだ。

余談だが、見栄っ張りな僕は当時、美容師という職に憧れていた。美容師専門学校に通う友人の参考書を借りて、受験勉強とは別に(というか受験勉強より真面目に)座学にいそしんでいた。大学の合格通知書が届いたとき「美容師になりたいので大学には行きたくない」「大学は休みが多いのでその時間に勉強して美容師になることも考えている」と母にだけ話したところ、母はそこまで止めることもなく、

「せっかく受かったんだし、まずは行ってみなさいよ」

と言った。結局、入学したあとは美容師の"び"の字も出ない生活をしていたことを振り返ると、母は僕のことを何でも知っている良い理解者なのだなとこの文章を書いていてあらためて思う。帰省には距離も時間もかかるのでなかなか足を運べないが、盆と正月ぐらいはしっかり顔を見せにいこう。

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