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ガバナンスの優先順位

前回までは、僕自身がベンチャー企業、中小企業、大きい会社それぞれで体感したエピソードをガバナンスを切り口にして、それぞれの見方でお伝え話してきました。

今回はエピソードではなく、企業がガバナンスに取り組む際の優先順位についての話です。

ガバナンスへの反応

先日、異業種交流を目的としたオンラインセミナーに参加しました。
僕は初めての参加だったので「ガバナンスの仕事をしています」と自己紹介しました。
数十名の参加者同士、面白そうな活動にはあれこれと質問があったのですが、「ガバナンス」は全く質問はありませんでした。

ニュースの見出しにはもってこい「ガバナンスの欠如」

ニュースで企業の不正が取り上げられると、原因は「ガバナンスの欠如」と、よく耳にします。

不正を起こした会社は、原因究明のために社内以外の第三者(委員会)による調査が行われます。
調査結果報告では「風通しが悪く、ものを言えない企業風土があった」や「ガバナンスが機能していなかった」など聞き覚えのあるフレーズも出てきます。

既に構築されているガバナンスの検証です。


あるいは最近のニュースでは、東芝の事業分割に関する会見がありました

当初、事業の3分割を計画されていたようですが、「3つもの会社をガバナンスできるのか」という株主の疑問があがり、「3つの会社を新たな形でガバナンス体制をつくるとなると、確かに厳しいところがある。本体(東芝/インフラサービス会社)とデバイス会社の2社でガバナンス体制をつくった方がよい」)との考えで、2分割になった、という会見内容です。

これはガバナンスに取り組む会社の姿勢の話です。

このことからも「ガバナンス」という言葉は、企業の不祥事や不正が発覚したタイミングであったり、今後の経営方針に向けられる材料の一つとして語られることが多いと感じます。

東証の上場企業はコーポレートガバナンス・コード(コーポレートガバナンスのガイドラインとして参照にする原則・指針です)の適用を受けますが、未上場のベンチャー企業や中小企業についてもガバナンス体制構築の積極的な取り組みを推奨する記事も多く見かけます。

では実際問題、ベンチャー企業や中小規模の会社、未上場の会社は、現場感としてガバナンスはどのように認識されているのでしょうか?

優先順位

僕自身、ガバナンスに関係する仕事を国内外対象に6年以上携わっていたので、会社にとってのガバナンスの必要性と取り組む理由、そして具体的に何をるすことかは理解しています。

その理解で言えば、取り組み内容やボリュームに違いはあっても、会社の規模や形態、場所に関わらずガバナンスの取り組みがは必要であると思っています。

理由は、会社を良くするためのものだからです。

しかし実際には、会社に取り組む資源が足りなかったり、自社に合った具体的な取り組みが解らないなど、なかかな着手には至らないことも多いと思います。
あるいは取り組んでいても、ガバナンスと言うフレーズは「管理」のイメージが強いので、やらされ感が見え隠れするケースもあり、推進が上手く行かないケースもると思います。

友人のベンチャー企業でも、必要性は知っているけれど「今はまだいいよ」 のと認識でした。

いつどのような状況になったら着手するのか判断の基準は難しいですが、残念ながらガバナンスへの優先順位は低いようです。

多くの人にとってガバナンスは他人事?

一方で、社会全体の流れで言うとガバナンスの優先順位はグッと上がってきます。

今、就職活動や転職活動では、会社の業績や業界順位などの経済的な価値を判断基準にする以外に、非経済的な価値として社会や人、環境への配慮は重視されます。
SDG’s対応を意識したガバナンスの取り組みも同様です。

にもかかわらず現場感としてガバナンスの優先度の低さや興味を持たれない原因は何なのでしょうか?

ガバナンスを理解するストレス

ガバナンスを検索すると「よく分かるガバナンス」「〇〇分でわかるガバナンス」 といった解説記事も多く僕も読みます。

丁寧に解説されていますが、弁護士の方やコンサルの方などガバナンスを理解をされている方の視点をベースに説明がされていることも多く、ガバナンスが専門外の読み手からすると、当たり前に使われている用語が理解できなかったり、全体像がわからなかったりと、記事によっては表層的な理解で留まってしまうこともあります。

解説なのにスッと読めない、あるいは理解するために前後を読み返すことはストレスです。

ガバナンスの優先順位が低くなる原因の一つは、この「理解するためのストレス」ではないでしょうか?

ストレスなく理解したい!

僕が働いてきた一社では、ガバナンスを担当しました。
大きな会社だったこともありガバナンスの体制は構築されてたので、理解を深めるために定期的にガバナンス研修を行っていました。
その研修コンテンツ中で評判が高かったのは、実例を用いた説明です。

誰もがニュースで知っている不正などの話を事例にして、「この会社は何の機能分が足りていなくて不正が行われたのか」とか「不正が見つかったキッカケは何だったのか」など色々な切り口でディスカッションすると、様々な意見がでますし、所属部署は役職によっても意見が様々です。
ガバナンスの定義の理解よりも先に、ストレスなく自分の意見、自分ごととしての理解です。

ガバナンスを理解する順番

僕の体感として、既にガバナンス体制が構築されている会社と、ガバナンスが構築されていない、あるいは優先度や興味が低い会社との違いは手を付ける順番です。

1)ガバナンス?
2)まずは内容を理解しよう(ストレス)
3)なるほど、こういう事を言っているんだ
4)では、時期が来たら取り組もう

よりも

①不正があった会社はこんな末路を辿ったよね
②なんで起こったの?
③そもそもなんで発覚したの?
④きっと☓☓が原因だから、我社には〇〇は必要だよね
⑤とりあえず我社のガバナンスの一歩として〇〇から取り掛かろう

の順番が良いのでは?と思います。

このステップではある程度の知見があるに越したことはありませんが、②③④は内容が荒くとも起業まもないベンチャー企業や諸事情でガバナンスと距離を置いていた会社でも意見交換は行えると思います。

そして⑤の段階で、弁護士やコンサルなどの専門家の出番ですが、既に④で自分たちの現場感をベースにした考えがあるので、⑤はより実践的なものになると思います。

このようなステップが、ガバナンスに興味を抱き優先順位を上げるキッカケになると思うのですが、どう思いますか?


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