【美術館の名作椅子#15】京都国立博物館 平成知新館
京都国立博物館 平成知新館
設計:谷口 吉生
開館:2014年
・BQ01 Bench
デザイナー:ヴィム・クイスト
発表:1970年
メーカー:spectrum
価格:¥861,600(現在廃番)
オランダの建築家ヴィム・クイストがデザインしたベンチ。
オランダのクレラー・ミュラー美術館新館設計の際に合わせて館内用ベンチとしてデザインされた。
平成知新館では館内に多数用いられているが、特にグランドロビーに置かれたものが特徴的で竣工当初の写真にも確認することができる。
谷口吉生建築ではこだわりの名作椅子が用いられることが多く、このベンチも明らかにこのロビーに合うように選定されている。
いや、むしろこのベンチを置くためにこのロビーを設計したのでは、とすら思えてくる。
「豊田市美術館」や「谷口吉郎・吉生記念金沢建築館」でも採用されているところを見るとこのベンチは谷口氏のお気に入りに違いない。
・PK80 Bench
デザイナー:ポール・ケアホルム
発表:1957年
メーカー:FRITZ HANSEN
価格:¥2,923,800(2024年7月現在)
この【美術館の名作椅子】でも、もはやお馴染みの名作中の名作。
ざっと挙げただけでも、東京国立博物館本館、東京都現代美術館、国立新美術館、サントリー美術館、MOA美術館など、その他多くの美術館・博物館で採用されている。
ここ平成知新館にもやはり置かれていた。
低い座面と固い座り心地が特徴。
輸入家具はどのメーカーも毎年ガンガン値上げしており、2年前に250万円だったこのベンチも(それでもなかなかだが)、公式HPによるといつの間にやら最廉価のレザーでもなんと約300万円!
この写真だけでも2脚600万円!!
恐ろしい。
しかしさらっと置いてあるベンチが1脚300万円なんて知ってて座ってる人は何人いるかね。
・EAMES ALUMINUM GROUP MANAGEMENT Chair
デザイナー:チャールズ&レイ・イームズ
発表:1958年
メーカー:Herman Miller
参考価格:¥400,400(2024年7月現在)
資料室の椅子はイームズのアルミナムグループマネジメントチェア。
アルミニウムの用い方がいかにもミッドセンチュリー。
同じく谷口吉生建築の東京国立博物館 法隆寺宝物館でも用いられている。
いつまで経っても色褪せないラギッドな魅力溢れる名作椅子だ。
・LIMA Chair
デザイナー:ティト・アニョーリ
メーカー:ixc.
価格:¥160,600(FX革)(2024年7月現在)
ペルーのリマ出身でイタリアへ移住したという経歴のデザイナーで、自身の出身地名を冠した椅子。
発表年がわからなかったがインターデコール(Cassina ixc.の前身)時代から存在するモデルなので2002年(Cassina ixc.に商号変更年)以前の1990年代あたりか。
・Aline Chair
デザイナー:Andreas Störiko
発表:2004年
メーカー:Wilkhahn
価格:¥83,000(2024年7月現在)
このようなオフィス・業務用途の軽量椅子はシンプルな分、減らす要素がないためデザインと機能のバランスが絶妙なものが多い。
ちょっとした角度の付け方やフレームの長さや太さのバランスにデザイナーの意図やセンスが如実に現れる。
ある意味真のデザイン力を問われる分野なのかもしれない。
そのような視点で見てみるとこのようなタイプの椅子にも新たな発見が色々あり面白い。
・ULTRA Stacking Chair
デザイナー:ステファン・ショーニング
発表:2008年
メーカー:liv'it
ベルギーのデザイナーによるイタリア製の椅子。
ぱっと見なんでもない椅子だが、背面から後脚につながるゆるく描かれるカーブと、座面からスッと落ちる細い前脚のバランスにデザイン性を感じる。
日本では以前 Cassina ixc. で扱っていたようだが現在は扱っていない。
・Ice Chair
デザイナー:キャスパー・サルト
発表:2002年
メーカー:Fritz Hansen
価格:¥69,120(現在廃番)
フリッツハンセンが初めてリリースした屋内外兼用のチェア。
オプションでシートパディングもあったようだ。
屋外用の雰囲気を漂わせているが特に屋外用にデザインされたものではなく、アイスと言う名のとおり、この椅子を置くことで室内も涼しく演出できるということでアイスと命名されたとのこと。
国立新美術館でも大量に採用されているが残念ながら現在廃番。
京都国立博物館平成知新館は贅沢な空間の使い方や抜けのある開放感が素晴らしく心地よい建物だ。
その建物を引き立てるようにこだわりの名作椅子が採用されている。
特にグランドロビーに並ぶ《BQ01 Bench》や、2階に置かれた《PK80 Bench》などは場の空間そのものも含めたインスタレーション作品のようにすら感じる。
《BQ01 Bench》に座って見る眺めは本当に贅沢な景色だ。
向かって左に見える本館(明治古都館)との新旧の対比も美しい。
そういえばその本館を設計した片山東熊は上野でも東京国立博物館敷地内に表慶館を設計している。
そしてそのすぐ裏にはやはり谷口吉生設計の法隆寺宝物館がある。
ここ平成知新館は法隆寺宝物館とかなり似ている佇まいだ。
片山東熊と谷口吉生。
東京と京都。
偶然の一致かあえて揃えたのかはわからないが、建築家の選定や建物の外観ともに少なからず影響はあるのだろう。
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