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【美術展2025#11】ブラック・ジャック展@そごう美術館

会期:そごう美術館
   2025年1月16日(木)〜2月25日(火)
巡回:福岡アジア美術館
   2025年4月26日(土)~6月22日(日)

半世紀前の1973年に登場したマンガ『ブラック・ジャック』は、現在第一線で活躍する医療従事者の多くに影響を与えたといわれ、作品に込められたテーマやメッセージは、今なお多くの人々に深い感銘を与えています。

本展では、500点以上の原稿や200以上のエピソードなどから手塚治虫の情熱と執念を大解剖。『ブラック・ジャック』を深くまで知る人、初めて知る世代など、すべての人々に向けて、『ブラック・ジャック』の魅力を余すところなくお楽しみいただける『ブラック・ジャック』過去最大規模の展覧会です。

そごう美術館


1980年代前半。
私が小1の頃、友人の家に「ブラック・ジャック」の単行本が並んでいたのを覚えている。
だがその時は表紙に描かれている絵や色使いが不気味で手に取ることはなかった。
その頃「鉄腕アトム」や「ジャングル大帝」などの存在も知ってはいたが、それらはすでに一昔前の漫画という認識だった。

学年が上がるにつれ「キン肉マン」や「キャプテン翼」「北斗の拳」などのジャンプ漫画に毎週心躍らせていたが、それらとともに私は「ドラえもん」や「パーマン」「忍者ハットリくん」等の藤子不二雄漫画も大好きだった(今でも大好きだが)。

小5の春。
「手塚治虫」という存在を意識をして初めて手塚漫画を読んだ
藤子不二雄漫画を読み漁る中で「まんが道」にハマり、作中に神の如く描かれる手塚治虫に興味を持ったものの、やはり「鉄腕アトム」や「ジャングル大帝」はすでに対象年齢を過ぎているような気がしていた。
ある日、新しく同じクラスになった友人の家に遊びに行った際、本棚に並ぶ大量の漫画の中に手塚漫画があった。
その時手にしたのは「火の鳥」だった。
ページを開いた瞬間の感動は今でも覚えている。
…が、「火の鳥」の話は3/7から東京シティービューで始まる「火の鳥展」のために残しておこう。

とにかくその日を境に、私は手塚治虫にすっかり魅了されてしまったのだ。
「火の鳥」はもちろん「ブラック・ジャック」や「ブッダ」などをなけなしの小遣いでこつこつと買い揃えながら、青年向けの「きりひと讃歌」「奇子」「アドルフに告ぐ」「陽だまりの樹」なども読み漁った。
子供向けと思っていた「鉄腕アトム」や「ジャングル大帝」だって実際読んでみたら裏テーマのようなものが何層も散りばめられていて実は深い内容だった。

1989年、小6の冬。
手塚治虫が亡くなった。
ショックだった。

没後に臨時増刊した朝日ジャーナル
中1なりたてなのによくこんなの買ったな

この年、元号が昭和から平成に変わり、私は小学生から中学生になった。
私の中で大きく時代が変わった年として記憶に残っている。

1990年、中2の夏。
東京国立近代美術館で「手塚治虫展」が行われた。
この時、私は初めて自分の意思で美術館に行った。
その後幾度となく東京国立近代美術館には訪れることになるが、その度に都心の美術館で行われた展覧会にどきどきしながら地下鉄を乗り継いで行ったあの日のことを思い出す。
私にとって記念すべき大切な展覧会だ。


さて、今回の「ブラック・ジャック展」だが、2023年から東京、長野、名古屋、京都、長崎と巡回してきた。
そして横浜の後は4月から福岡アジア美術館での福岡展が決定している。
2023年の東京展はタイミングが合わずに行きそびれたので再び首都圏で行われる今回の横浜展は楽しみにしていた。

セゾン、東武、伊勢丹、三越、小田急等の「百貨店系美術館」が軒並み閉館していった時代を目の当たりにしてきたが、横浜のそごう美術館は「百貨店系美術館」として生き残っている最後の砦とも言えるかもしれない。

やはり漂う百貨店っぽい雰囲気
初出はなんと50年前!
名シーン

展示室内は最初と最後のブースだけ撮影可。
残念だが漫画原稿が中心の展示内容だったので、やはり色々と権利問題がややこしいのだろう。

当時の時代感

撮影可のブースのパネル。
だがこれらを撮ったとて…(全巻持ってるし…なあ)…とは思ったが一応押さえておく。パチリ

この後は原画展示が続く。
そんな中、数台のモニターにて関係者らが手塚治虫とのエピソードを話す映像が流れていた。
その中の一人、手塚治虫の長女、手塚るみ子氏の映像に足が止まった。
るみ子氏はなぜかでかでかと全面にシド・ヴィシャスがプリントされたシャツを着ていた。
そのセンスに釘付けになってしまい話は全く入ってこなかった。
なぜこの場であえてそのシャツ選んだ?
るみ子氏よ、あんたパンクすぎるだろ


通せんぼ
開催地との関わり
大団円


手塚治虫の生原稿を久しぶりに見た。
描いて、描いて、修正を繰り返して、描いて、ホワイトを入れまくって、切って貼って、描いて、描いて、直して、そして描いて、…とにかく細部までとことんこだわりまくっている
400ページの作品のために1000ページの原稿を描き、600ページをボツにしたという伝説のエピソードは伊達ではない。
印刷物では伝わらない生原稿のみが持つ圧倒的パワーは半世紀たった今でも全く色褪せることなく私の心に刺さった。
素晴らしかった。

作品についてはここで多くを語る必要はないだろう。
ぜひ多くの人に会場に足を運んでもらいたい。
そしてもし手塚漫画をまだ読んだことがない人がいたらぜひ一度手に取ってほしい。
そこに世界の全てが描いてある

家に帰ったら、久しぶりに「ブラック・ジャック」を1巻から読み直そうと思った。


こちらもおすすめ。
関係者たちのもうひとつの「まんが道」
今回の展示映像や図録内の関係者インタビューなどと関連性が高い。



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