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【美術館の名作椅子#03】国立新美術館

国立新美術館

設計:黒川 紀章
開館:2007



・CH25 Lounge Chair

《CH25》×10

デザイナー:ハンス J. ウェグナー
発表:1950年
メーカー:Carl Hansen&Søn
価格:504,900(2024年5月現在)

ハンス J. ウェグナーの名作CH25。
それまでになかった大胆で彫刻的なフォルム。
背から脚部につながるフレームの処理が秀逸すぎる。
戦時中の物資不足の中であまり一般に知られていなかったペーパーコードを素材として座と背に使用している。
一脚に使用される長さは400mにも及ぶとのこと!



・CH07 Shell Chair

《CH07》《Coffee Tables》

デザイナー:ハンス J. ウェグナー
発表:1963年
メーカー:Carl Hansen&Søn
価格:507,100(2024年5月現在)

発表当時、その斬新すぎるデザインから受け入れられずに数台しか製作されなかったとのこと。
1998年にカール・ハンセン&サンが復刻すると大きな反響を呼び、今では名作椅子のひとつとして名を馳せている。
この椅子は東京国立博物館本館にも多数採用されている。
上質なレザークッションと木製のフレームがしっかりと体重を受け止める。
低い座面と背中の角度が体にフィットして安定感がある。
美しいフォルムと安定感のある座り心地が素晴らしい。
同じくウェグナーの《Coffee Tables》も置かれている。
写真をよく見ると奥の階段下にCH25とともに数台ぶち込まれているが、人目につかないバックヤードに保管するか、せめてもう少し丁寧に扱っていただけたらと思ってしまう。
私も大好きな椅子なだけに。



・CH24(Yチェア)

《CH24》

デザイナー:ハンス J. ウェグナー
発表:1950年
メーカー:Carl Hansen&Søn
オーク材・オイル仕上げ 
価格:146,300(2024年5月現在)

レストランにはCH24が並ぶ。
この椅子は《Yチェア》の名の方が伝わりやすいだろう。
北欧名作椅子の代表的な一脚として君臨する。
この椅子にもペーパーコードが使用されており非常に軽く座り心地も良い。
我が家でもダイニングの椅子として一時期検討したが、アーム部の出っ張りが机の高さとほぼ同じで、机の角にぶつかって入らないため採用を諦めた。
だがやはり美しい椅子だ。
素材や塗装の仕様が各種あり価格も違うが、ここのものはオーク材・オイル仕上げ仕様か。



・CH53 Footstool

《CH53》

デザイナー:ハンス J. ウェグナー
発表:1966年
メーカー:Carl Hansen&Søn
オーク材・オイル仕上げ 
価格:115,500(2024年5月現在)

Yチェアの隣にはCH53が並ぶ。
編み込み方がYチェアと同じく中心が窪んでいるためYチェアとの相性が良い。

《Yチェア》 《CH53》



・PK80

《PK80》
《PK80》

デザイナー:ポール・ケアホルム
発表:1957年
メーカー:FRITZ HANSEN
価格:2,923,800(2024年5月現在)

東京国立博物館本館東京都現代美術館など、多くの美術館・博物館で採用されている名作中の名作。
ここ新美術館にも大量に置かれている。
低い座面と固い座り心地が特徴。
輸入家具はどのメーカーも毎年ガンガン値上げしており、2年前に250万円だったこのベンチも(それでもなかなかだが)、公式HPによるといつの間にやら最廉価のレザーでもなんと約300万円!
この写真だけでも4脚1200万円!!
恐ろしい。
しかしさらっと置いてあるベンチが1脚300万円なんて知ってて座ってる人は何人いるかね。



・PK22

《PK22》

デザイナー:ポール・ケアホルム
発表:1956年
メーカー:FRITZ HANSEN
オーラレザー 価格:822,800(2024年5月現在)

ポール・ケアホルムの代表的な椅子。
ミース・ファン・デル・ローエのバルセロナチェアをオマージュしているとのこと。
確かに基本的なフォルムは似ているが、こちらは横から見ると厚みが全くなく、フレームにもケアホルム的ストイックさが見られる。
個人的にはバルセロナチェアよりも《PK22》の方が大きさも座り心地もシルエットも好みだ。
6/29からパナソニック汐留美術館で始まるポール・ケアホルム展が楽しみだ。(※レビュー済

《PK22》と《PK80》 さすがの相性の良さ



・ANT Chair

《ANT Chair》

デザイナー:アルネ・ヤコブセン
発表:1952年
メーカー:FRITZ HANSEN
塗装仕上げ ¥53,680(2024年5月現在)

別名アリンコチェア。
この椅子も多くの美術館で用いられている。
黒でこれだけ整然と並ぶと本当にアリンコに見える。

《ANT Chair》

地下には白が大量に。
こちらはラッカー仕上げ。

ラッカー仕上げ ¥56,980(2024年5月現在)



・Seven Chair

カフェ待機用セブンチェア
監視員用セブンチェア

デザイナー:アルネ・ヤコブセン
発表:1955年
メーカー:FRITZ HANSEN
塗装仕上げ ¥78,980(2024年5月現在)

アントチェアを改良した後発の椅子だが今やこちらの方がメジャーか。
コピー品が作られまくっているが唯一FRITZ HANSENのみが正規品。
長い歴史の中で様々なバリエーションがあり、もはや全容は不明。
名作椅子業界の中でも代表的な一脚だがシンプルすぎてコピー品が溢れすぎなのが玉に瑕。
カフェ待機用に置かれたものは触った感じ本革ではなく合成皮革なのだが張り地の仕様がわからず。
特注品だろうか。
質感は本革に劣るが公共の場で用いるには合成皮革の方がメンテナンス性が高いので使い勝手は良いかもしれない。



・Swan Chair
・Egg Chair

《エッグチェア》 《スワンチェア》

スワンチェア
デザイナー:アルネ・ヤコブセン
発表:1958年
メーカー:FRITZ HANSEN
最廉価仕様 ¥558,800(2024年5月現在)


エッグチェア
デザイナー:アルネ・ヤコブセン
発表:1958年
メーカー:FRITZ HANSEN
最廉価仕様 ¥1,207,800(2024年5月現在)

ともにデンマークのSASロイヤルホテルのためにデザインされた。
美術館やホテルのような公共の場にとてもよく合う。
自邸で使うには日本の普通の家ではなかなかハードルが高い。
新美術館のものはセブンチェアと同様に合成皮革だと思うのだが張地の仕様が特定できず。
ファブリックとレザーでかなり価格に差が出るので参考価格として再廉価仕様のものを記載。



・Ice Chair

デザイナー:キャスパー・サルト
発表:2002年
メーカー:FRITZ HANSEN
価格:69,120(現在廃番)

フリッツハンセンが初めてリリースした屋内外兼用のチェア。
オプションでシートパディングもあったようだ。
屋外用の雰囲気を漂わせているが特に屋外用にデザインされたものではなく、アイスと言う名のとおり、この椅子を置くことで室内も涼しく演出できるということでアイスと命名されたとのこと。
京都国立博物館でも大量に採用されているが残念ながら現在廃番。



・RIN Chair

デザイナー:細野 弘通
発表:2008年
メーカー:FRITZ HANSEN
価格:93,000(現在廃番)

鳥の巣の形状がデザインソースとされる椅子。
花のようにも見えるその形状はシンプルながらも個性的である。
残念ながら現在は廃番のようだ。



新美術館は北欧系、特にデンマークのCarl HansenSønFRITZ HANSENの製品にこだわっている。
いずれも名作揃いだが、個人的にこの美術館はポール・ケアホルムの作品がとてもよく合うと思う。
ここは名作椅子がたくさんあるので椅子を見に来るだけでも楽しい。



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