●美術館の名作椅子#17●東京都写真美術館
東京都写真美術館
設計:久米設計
開館:1995年
・AIR FRAME 30014 Bench
デザイナー:デヴィッド・チッパーフィールド
発表:1992年
メーカー:ixc.
価格:¥300,000前後(張地により変動)(2024年現在)
名作AIR FRAMEファミリー《3001》シリーズのベンチモデル《30014》。
シンプルで主張せずに場に馴染むので、多くの美術館・博物館で用いられている。
東京国立近代美術館、東京藝術大学大学美術館、神奈川県立近代美術館葉山館などにも置かれている。
グレーのシートが写真美術館の世界観と非常によく合っており、この場所に置かれるべくして置かれているといった雰囲気を漂わせている。
・AIR FRAME 3014 leather sheet bench
デザイナー:デヴィッド・チッパーフィールド
発表:1992年
メーカー:ixc.
価格:¥352,000(FX革)(2024年現在)
多くの美術館・博物館で用いられている《3001》シリーズのベンチモデル《30014》に対して、割とレアな薄型レザーバージョンの《3014》。
クッション性を犠牲にしてまで存在感を消すために極限まで薄くしたストイックなシートが印象的で、逆に唯一無二の存在感を放っている。
・AIR FRAME 3003 3P Sofa
デザイナー:デヴィッド・チッパーフィールド
発表:1992年
メーカー:ixc.
価格:¥418,000〜(張地により変動)(2024年現在)
様々なバリエーションがあるAIR FRAMEシリーズだが、ロビーにはナロータイプのソファ《3003》が並ぶ。
《3001》シリーズのソファモデル《30013》に対して一回り小さいためそれほど広くないスペースには最適だ。
・BRONX フォールディングチェア
デザイナー:川上 元美
発表:1992年
メーカー:INTER DECOR(現 Cassina ixc.)
価格:現在廃番
監視員用の椅子。
現Cassina ixc.社がインターデコール社だった時代のPBモデル。
残念ながら現在廃番。
シンプルかつスタイリッシュなデザイン。
折り畳んでもスタイリッシュ。
デザイナーの川上氏は東京藝大卒→院修後、ミラノの建築事務所に勤務。
1971年日本に帰国後、川上デザインルーム設立。
東京藝大や多摩美大で客員教授も務めた。
武蔵野美大のYouTubeチャンネル上で川上氏本人が語る動画も興味深い。
・HAL RE Tube Chair
デザイナー:ジャスパー・モリソン
発表:2010年
メーカー:Vitra
価格:¥41,800(2024年現在)
イームズがデザインしたプラスチックチェアをジャスパー・モリソンが再解釈したシリーズ。
用途ごとに様々な種類のベースが揃う。
ジャスパー・モリソンは各社でデザインを手掛けているが、どのデザインもシンプルながらもさりげないデザイン性が加えられており、それがアイデンティティにもなっている。
・Chair 66
・Table 90A(d. 100)
・Chair 66
デザイナー:アルヴァ・アアルト
発表:1935年
メーカー:Artek
価格:¥59,400(2024年現在)
・Table 90A(d. 100)
デザイナー:アルヴァ・アアルト
発表:1933年
メーカー:Artek
価格:¥196,900(2024年現在)
《Stool 60》に背もたれを付けたようなデザインの《Chair 66》と、《Stool 60》をそのまま大きくしたような形状の《Table 90A》。
シンプルなデザインだが、artek製はやはり細部のこだわりやバランス、美しさがコピー品とは全然違う。
汎用性があり《Stool 60》とともに名作中の名作椅子のひとつだ。
・マットソン イージーチェア
デザイナー:ブルーノ・マットソン
発表:1976年
メーカー:天童木工
価格:¥128,700(2024年現在)
天童木工が初めて契約した外国人デザイナー、ブルーノ・マットソンが1974年に初来日した際、日本人のためにデザインした椅子。
その2年後に製品化されて現在までロングセラーを誇っている。
さりげなく資料室脇に並べられていた。
資料室内にも天童木工のワーキングチェアが並んでいたが残念ながら資料室内は撮影禁止だった。
・まとめ
東京都写真美術館には ixc.のAIR FRAMEシリーズが多数置かれている。
主張せずにどんな場にもすっきりと馴染むシンプルなデザインは美術館のような公共の場には最適なため、多くの美術館・博物館で採用されているが、とりわけここ東京都写真美術館とは相性の良い印象を受けた。
その他、やはりシンプルなデザインの名作椅子が並ぶが、控えめなデザインのモデルが多いのは、物質感が弱い写真作品よりも椅子が主張してしまわないようにという配慮だろうか。
ちなみに「ixc.」は、イタリアの名門「Cassina S.p.A社」の日本での独占代理店「Cassina ixc.社」のオリジナルブランド。
「Cassina ixc.社」のカタログや店頭ではCassina製品とixc.製品を織り交ぜた写真やディスプレイで商品提案が可能なため、一部では「ixc.」と「Cassina」が混同されていたりするがあくまでも別ブランドだ。
だが「ixc.」は「Cassina」の威光を借りることなくともそのデザイン性や機能性の評価は高く、実際に多くの美術館・博物館他公共施設などにも採用されている素晴らしい国産ブランドだと思う。
なお「Cassina ixc.社」(旧インターデコール、旧Cassina Japan)の変遷は創業者の著書に詳しく描かれている。
創業者の熱い思いが詰まった日本インテリアデザイン史の名著だと思う。
椅子好き・インテリア好きの方にはぜひ読んでいただきたい。
併せて「Miki Tateno Kawano SAKURANOKI」さんのnoteも非常に興味深いので紹介させていただく。
【美術館の名作椅子】まとめマガジン ↓