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豹変幼馴染8(連載小説)

「よっ」


カフェの席に座ってへらへら笑っている元カレに怒りが込み上げて来る。


「・・・何の用?」


私が立ったまま睨みつけると、元カレは、気にせずに、


「まぁ、座れよ」


と言ってきた。


仕方なく向かいに座ると、元彼は私にアイスコーヒーを頼んだ。


「お前、それで良かったよな?」


ていうかどうでもいい。早くここから去りたい気持ちで一杯の私。


「で、何の話?もしかして、荷物のこと?私の荷物、まだたくさん残ってるから、取りに行きたいんだけど」


早く切り上げたくてそう言う私に、元彼は、まあまあというように両手を上げた。


「ところで、お前、今どこに住んでるの?ビジネスホテルとか?」


「友達の所。泊めてもらってるけど?」


「いつまでも友達に迷惑かけても悪いだろ?帰ってくれば?」


「は?」


元彼の言葉の意味が分からない。


「いや、あんたが浮気して出てけって言ってた気がしたけど」


「浮気じゃないって。あの時も言ってただろ?好きな奴ができて告白するから別れるって。でも、そいつに好きな奴いるから付き合うのムリっていわれてさ」


「へー」


私は感情のこもらない相槌を打った。


何そのとことん自分勝手な理由は!?

私を追い出しておいて、自分が振られたらよりを戻せると思ってるの?


勝手すぎない?


「悪いけど、私なら住む場所困ってないから。友達も迷惑じゃないって言ってくれてるし」


「なー、考え直せよ。別に俺達そんなに険悪な感じでもなかったし、いい感じで付き合ってたじゃん」


「それを壊したのはあんただけどね」


それに、コウキと一緒にいて思った。

元彼は、自分中心の人で、私のこと考えて行動してくれてない。

コウキはいつも私のこと心配してくれて、労ってくれるし、一緒にいるのがとても居心地いいんだ。


元彼といても、文句言われるだけで、楽しいというより、好きという感情が消えても流されて付き合っていた気がする。


「俺、やっぱり、お前のこと好きだし」


元彼の言葉に、全然感情が動かない。


「ふーん、残念だけど、私は好きじゃない。もう帰るわ」


私はそういうと立ち上がる。

こんな事いってる元彼が荷物返してくれそうもないし。


「待てよ、嫉妬してるだけだろ?」


元彼が私の手首を掴んで引き止めてくる。


はぁぁぁぁ?

私は呆れて元彼を見る。


本当に心から何でこんな奴好きだったんだろう、私。


「離してよ」


私が力を込めて手を振り払おうとすると、元彼も力づくで自分の方に私を引き寄せようとする。


「やめてよ!!」


私が叫んだのと、元カレが吹っ飛んだのが同時だった。


「ミクちゃん!大丈夫?」


そこにいたのはコウキだった。


「コウキ!」


安心して、思わずコウキの胸に飛び込む。


「お前、浮気してたのかよ」


コウキに突き飛ばされ、元カレが私たちを睨んできた。


「あんたに言われたくない!浮気なんてしてないし!」


もう最低・・・。

この上私の浮気を疑うの?


「ミクちゃんは、浮気なんてする人じゃない。あなたに追い出されて、住むところがなくて困って電話してきたから、泊めていただけです」


コウキが怖い顔で元カレに話す。


「あなたはミクちゃんを追い出して、他の女性を好きだって言ったんだから、もうそこで別れてますよね?しつこくしないでください」


コウキの言葉に、元カレは、


「くそっ」


と言って顔を歪めた。


「もう、連絡してこないで。荷物もいらない。私の分は捨てて」


そう言い残すと、私達は何か喚いている元カレをその場に残してカフェを後にした。


しばらく歩いていると、足から力が抜けそうな感覚になる。


「コウキ・・・」


「わ、ミクちゃん!」


コウキに支えられて、近くの公園のベンチに座ると、心配そうな顔でコウキが私を見た。


「大丈夫・・・じゃないよね?もう、無茶するから」


「だって、服とかカバンとか取り返したくて」


コウキが私を引き寄せる。

元カレとの対峙は、私にとって結構メンタル的にきつかったらしい。


コウキに引き寄せられて。胸の鼓動を聞いていると、少しずつ落ち着いてくる。


「服もカバンも、僕が買うから」


コウキの言葉に、思わず反論する。


「そこまでしてもらえないよ、だって・・・」


私が反論しようとすると、コウキが私の顎を持ち上げて、キスをしてきた。


え・・・。

思考が止まる。

それと同時にドクドクと怖いくらいに鼓動が高鳴る。


「ミクちゃん」


唇を離したコウキは悲しそうな顔で私を見た。


「僕が、もう元カレといるミクちゃんを見たくないから」


コウキの顔に、胸がキュッとなる。


「うん、ごめんね・・・」


私はコウキの胸に顔をうずめながら感じていた。


もう、私、コウキが、好きだ。


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