コンテンツの力と共感力
「大きな嘘をつくために、小さな真実を積み上げる」
リアリズムの本質として知られるこの言葉。壮大なフィクションを描くためには、そのフィクションに必要な部分以外は現実を踏まえなければリアリティーが出ない、という意味です。
そんなリアリティーが詰め込まれた結果、多くの共感を得てきた「宇宙兄弟」。先日、この漫画から生まれたこの漫画から筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療法の研究開発費を集める「せりか基金」の授賞式を取材しました。この授賞式で、作り手の思いに直に触れ、思わぬポイントでとても感動しました。
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その前にあった授賞式でのみなさんのスピーチも、テクノロジーで、今の世の中ではハンディキャップとして捉えられる疾患などと共生しようとする取り組みもすごく良くて、この時点で私の満足度はかなり高まっていました。
正直、その後に続くお二人の「ご挨拶」は、あくまでご挨拶だと思っていたのでそんなに注目していませんでした(失礼)。ところがここで、自分でもびっくりするほどささりまくりました。たまたまパソコンとカメラの電源が切れて、替えのバッテリーもなくて、ICレコーダーを回すだけでしっかり話を聞けたからなのか。2人のご挨拶が響きまくり、 記事でも厚めに書きました。
記事の中に書きましたが、リアルが詰め込まれた作品だけに、作者が「漫画の中で勝手に幸せな未来を描いていいのか」と葛藤したこと、漫画は私たちが生きている現実世界を紙に定着させようという試みなのに、今回のせりか基金はそこからもう一度現実に戻ってくるという希有な例であること。リアリティーとそれに伴う共感で、コンテンツは現実世界にこんなにダイレクトに影響を及ぼせるということが、とても感動的でした。
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私の実家には、数千冊の絵本と書籍がある一方で、親の教育方針なのか漫画と出合う環境で育たなかったので、ほとんど漫画を読んだことがない子ども時代でした。高校生で同級生に勧められた漫画をたまーに借りて読むくらい。なので、漫画については超素人なのですが、それでもこんなに感動できるということにも少し驚きました。
でも、この話は「漫画」に留まらない「コンテンツの力」に共通する話で、文章メインだけど、同じくコンテンツを作っている人間として理解できたから、当事者として響いたのかなあと思いました。
コンテンツを大事に思うだけでなく、コンテンツの力をもっと信じてシナジーを生もうとしていることが感じられました。これからもコンテンツの力を信じて、「世の中を少しでも生きやすくする」という自分の課題に取り組みたいなーと勇気をもらった1日でした。
▲担当するコラムニストが知らない漫画の内容に触れたときは、効率良くキャッチアップするべく、その漫画のアニメを見まくるなどの努力()をしています。