ふるさとワ旅2022~福山・三次編~
ますたも歩けばワインにあたる、とは、よく言われたものです。(言われてない)
ワ旅のまえに
さて、今年の10月の三連休は、わたしの故郷であります広島県におりました。
わたしが生まれ育ったのは広島県東部、岡山県とのほぼ県境に位置する、福山市の山奥です。
電波がぎりぎり届く我が実家は、家から最寄り駅まで徒歩45分。電車は1時間に1本が走るという、日本によくある田舎町です。
そんな、ドをふたつ重ねたいほどの田舎町である我がふるさと。お盆のはずだった実家への帰省が、やれフランスだ、やれ福岡だ、などと言っているうちに延び延びになっておりまして、ついに冬の足音が聞こえ始めたこの連休に行ってくることができました。おかあさーん!おとうさーん!元気してたーー?!
というわけで、今回の旅のメインは「実家への帰省」。さすがに今回こそは、 #ワ旅 なんかできんじゃろう~?(フラグ)
【1日め:その1】福山駅ちかくのナチュラルワインレストラン 『LUONTO(ルオント)』
福山駅までは、地元駅から福塩線に乗って35分。ちなみに「地元駅」というのは、我が家から徒歩45分という例の駅です。(さすがに父に送ってもらいました)
福山市といえば、広島県第二の中核都市です。18歳までこの町で暮らしたわたしにとって、「福山」は地元から行ける、いちばん近い「都会」。福山に出てプリクラを撮るというのが、わたしの中学時代の最大の「イケてる」でした。そこ、笑ってるひと、同世代!
さてその「大都会」(とは言ってない)福山で、初日のランチを食べることにしたますたやと夫。
ぱぱっとグーグルマップを検索し、出て来たお店に入ることにしました。それが今回最初におとずれたお店、イタリア料理とイタリアナチュラルワインのお店『LUONTO(ルオント)』さんでした。
こちらのルオントさん、福山の山間部である服部(はっとり)地区に農場を持っておられるそうで、そこで採れた農園野菜を使って料理を作ってるんですって。へ~!
というわけで、まず、料理がとっても美味しいのですよ。
ひと皿のうえで幾層もの味が感じられ、美味しいし、なにより楽しい。
そして、そんな「楽しい」味わいの料理には、ナチュラルワインがバチっと合うんだなぁこれが…!
料理とワインが美味しいのはもちろんのこと、ルオントさん、スタッフさんたちもみんなにこにこされていて、すごく素敵な空間でした。
なんなら入店まえから「ランチはコースしかなく、全体のお時間がちょっとかかっちゃいますが大丈夫ですか?」と親切なご案内。ワインや料理についてもひとつひとつ丁寧に教えてくださいますし、ふと厨房に視線を向けると、「なにかおかしいなと思って」とシェフがカトラリーを持ってきてくださいます。確かに今、困ってたけど……!
いやあ、福山にこんな素敵なお店があったなんて、のっけからワ旅への期待に胸がふくらんできます。いや違う違う、ワ旅じゃないのよ、帰省なのよ!
「昼は適当にラーメンでも食うか……」などと言っていた、出がけのわたしにも教えてあげたい。この町どうやら、ワイン、あるぞ。(ワ旅じゃん……!)
【1日め:その2】福山わいん工房さん直営の角打ちショップ、『CHOISIR(ショワジール』
さて、日も落ちはじめ、すこし冷え込んできた夕暮れどき。次のワイン処にお邪魔します。
福山駅からほど近い場所に、スパークリングワインを専門に醸造されている『福山わいん工房』さんがあります。我が町の自慢!
こちらは、シェフとしてフランスで修業なさっていた古川さんが、2016年にご夫婦ではじめられた小さなワイナリーです。
実は今回福山わいん工房さんには、事前に見学のお願いをしてました。でもこの日はちょうど、瓶詰デイとのことで伺うことは叶いませんでした。そうだよねぇ、お忙しい時期ですもんね…!と、思っていたら、「よかったら、店舗のほうにお越しください」と教えていただきました。なるほど、そんなお店があったのか!
というわけで、今回うかがったのは、福山わいん工房さんの直営店「ショワジール」。からだも冷えて来ましたし、早速うかがってみましょう!
お店はカウンターの立ち飲み形式になっていて、横に5人ほどが並べます。15時からオープンしているお店ではすでに、常連の方がまったりワインを楽しまれていました。
角打ちでは日本ワインだけでなく、フランスやオーストリアなど、世界のワインもいただけます。
ワインを片手にすると、自然、お隣どうしのお話も弾みます。「いつもいらっしゃるんですか?」「僕は毎週来てますよ」「そのランニングウェアかっこいいすね!」などなど。ワイン、ほんと人を繋げるんだよなぁ…!
この日はカウンターに、醸造家である古川さんの奥様が立たれていました。奥様もとてもお優しくて、「今日は残念です、あしたなら見学来ていただけるんですよ~!」とにこにこ教えてくださいます。
さらにお店の奥には、魅惑のセラーがあります。常連さんいわく「入ったら出て来れなくなりますよ…」とのこと。ミイラ取りかよ。
そんな、ピラミッドセラーが、こちらです。どうぞご覧ください。
懐中電灯!!
そうなんです。こちらのセラーに入るときには、なんと「これどうぞ」と懐中電灯が手渡されるんです。
セラーの中はつねに暗室にたもたれていて、足元が見えにくくなっています。おかげでエチケットも見えにくいので、懐中電灯で照らしながら選ぶんですね。
こんなところにもひしひしと、ワイン愛とワインへのこだわりが感じられます。そうよね、ワインにとっては、冷たくて暗いところがいいもんね…!ワイン愛を全身にひんやりと感じつつ、探検家気分でじっくりとワインを選ばせていただきました。全然出られないわ。(やはりピラミッド)
福山わいん工房さんのワインはちょうどヴィンテージのはざまで、在庫がだいぶ少なくなっているとのこと。それでも今夜のために、ロゼ泡を1本捕獲しましたよ。よ、よし、ようやくこれで出られる…っ!(あぶね〜)
【1日め:その3】駅前で運命の出会い『山野峡大田ワイナリー』
福山から帰るためには、電車に乗らなければなりません。そしてこの電車、前述のとおり1時間に1本なんですね。つまり、遅れることができない。1本遅れると、次に電車が出るのは1時間後です。
そういうわけで、足早に駅へと向かう途中。おや?なにか、駅前に賑わいが……
近づいてみると、どうやら食べ物関係の野外イベント中。そして、ここに広島県のワイナリー、『山野峡大田ワイナリー』さんが出展されているのを見つけてしまいました。
こ、これは足を止めざるを得ない~~~~!
急ぎ足でワインをいただきながら、ワイナリーの方の人懐こい笑顔に思わず話がはずみました。
山野峡大田ワインさんは、畑の歴史自体は10年ほど。しかし、自社畑によるワイン造りだけでは収量が足りず、ずっと買いブドウでの醸造を続けて来られたんだそうです。
そして、ようやく今年のヴィンテージから、自社畑だけで規定量をクリアすることができるようになってきたそうで、「ほんま、泣けるんよ~」とのお話に、なんだかわたしもうるうるしました。
「畑仕事は大変なんじゃけどね、でも…嬉しいんよ」そんな言葉のはしばしに、農業の過酷さと喜びがにじみます。
ちなみに、電車の時間のこともあり1杯だけで出ようとしたら、「嬉しすぎるけぇもう1杯飲んでって!電車で飲みゃええけぇ!」と、にこにこおすすめされて、結局2杯になりました。営業上手か!(好きです)
【1日め:その4】福山わいん工房の泡と、母の味
さあ、夜は母の手料理で乾杯です!
年に1度か2度しか帰って来ないのに、料理くらい作ってやりなさいよ…と、自分でも思わなくはないのですが、ここは娘特権ということで、お言葉にあまえて「母の味」を堪能しました。
家で食べる料理って、基本的に「名前」がつかないじゃないですか。エビフライとか、ピーマン焼いたやつとか、肉じゃがとか。前日から残っていたおかずも出て来るし、いちおう和食のような、でもかけるのはマヨネーズだったりとか。
そういう、雑多で、全体的に茶色いけど、全部絶対おいしい「うちの味」。そんな食卓にふわっと寄り添ってくれる、優しく地味深いスパークリングワインでした。
出汁感も感じられたし、和食とか、いいんじゃないかなぁ…!
そしてこの日はもう1本、おなじくMBA泡の小さいボトルもいただいてました。
おなじMBAではありますが、中身はちょっと違うんですって。福山わいん工房さんはタンクが小さいものしかなく、おなじものを一気に作ることが難しい代わりに、ひとつひとつ少しずつアッサンブラージュの比率などを変えているのだそう。
しかもこちら、小さいながらも瓶内二次発酵!キュヴェローズと比べると、こちらのほうがいわゆるキャンディ香が感じられ、ドライながらも果実味や糖度を感じられる、かわいいテイストに仕上がっていました。美味し~!
なお、こちらのスパークリングは、新幹線のグリーン車に採用されているそうです。醸造家古川さんは、「これ」を飲むために生まれてはじめてグリーン車に乗られたそうなのですが、社内販売が古川さんの元にまわって来られたときは、なんとすでに売り切れ!
「すごく残念がってました(笑)」と、ほがらかに笑う奥様。なにそれめっちゃカワイイエピソードじゃない?
そんなこんなで、まさか地元でこんなにいろんなワインと出会えるとは思っていなかった初日。
福山のワイン力(わいんりょく)、まだまだあるんじゃないですかこれ…?!
【2日め:その1】新進気鋭の本格派ワイナリー『ヴィノ―ヴル・ヴィンヤード』でブドウとたわむれる
さて翌日は、両親と夫と連れ立って、県北ワイナリーめぐりへと出発します。今日の運転手は、お父さん。飲めなくてごめんよ!でもよろしく!(とことんお言葉に甘えるスタイル)
1軒目の目的地は、2021年に新しくできたワイナリー、『VinobleVineyard(ヴィノーブルヴィンヤード)』さんです。
高速道路の三次(みよし)インターチェンジを降りてから、わずか「30秒」で到着。感覚的には、高速を降りたらすぐ左折!みたいな感じです。
母いわく、「こりゃあ、ます子らァがおらんかったら見逃すわぁ」だそう。とにかく、高速降りてすぐにぐりんとまわって、無事にワイナリーへと到着しました。
ところで、ワイナリーに隣接している畑では、ちょうど収穫がおこなわれていました。ブドウ畑の向こう側に、働くみなさんのお姿が見えています。
「え~、かっこいいね…」「かっこいい…」
そんなことを小声でぼそぼそ言いながら、わたしと夫がいつものようにブドウ畑をしげしげ眺めていると………
「おーい、ます子、畑見せてくれるんだってよ!」
コミュ力爆発系人類である父、スタッフさんとともに颯爽と登場。なんで?
スタッフさん「中に入ってもらってええですよ!」
よくわからないまま、畑へと案内されました。
畑では、メルロー収穫の真っ最中。いやいやめちゃくちゃお仕事中じゃねぇですか…!
恐縮しつつブドウ畑を進んでいきます。とはいえ、こんなこともなかなかありません。楽しい〜〜!
「よかったら、収穫もしてってください」
なぜか我々のためにハサミがご用意され、お母様のあたたかいご指導のもと、畑作業に参加させてもらいました、貴重すぎかよ!
こうして、すこしの時間でしたが家族そろって収穫体験をさせていただくことができました。なにこの展開、ありがたすぎるな?!
「あ!あなた、社長さん!?」
さて、あまりお邪魔をしないようにと畑からそそくさと出て行こうとしているときに、父が急に大声をあげました。こ、今度はなに?!
「インターネットで見たよ!すごい人なんじゃろ~?!」
なんと、ヴィノーブルヴィンヤードの醸造家である横町さんがいらっしゃり、元気よく声をかけているではありませんか!ちょっと父!ここまで来るとコミュ力というよりは、ちょっと図々しいぞ…!
しかし横町さんは嫌な顔などひとつも見せず、というか、むしろめちゃくちゃ親切にブドウ畑について教えてくださいました。
全国各地でたずさわっている畑のこと、農作業のこと、ブドウのクローンの話まで。大きな話から細かい話まで、本当にたくさんのことを惜しげもなく教えてくださいます。
で、こうなる。
「ブドウ畑は、リスクしかないです」と語る横町さん。
県東部はイノシシの生息域となっており、昨年は甚大な被害が出たのだそう。金網を張ったり、電流を流したりして対策しても、根本的な解決にはならないようで、淡々とした語りの中には、自然相手の仕事のすさまじさが滲んでいました。
そんな厳しいブドウ栽培の話に、しみじみ聞き入っていると……
「わかりますよ」
………え、いま誰か、「わかる」つった?
え…もしや……?
「いのしし、出ますよねぇ。電流を流してもなァ、下をくぐられたらしみゃあ(おしまい)じゃし、台風が来たら倒れるし、雨が降ったら刈れんし、ほんま農業は、リスクだらけですよねぇ!」
まさかの父、自分の稲作知識(※趣味)をもちいて、ハイパープロフェッショナルと渡り合おうとしている…?!?!
思わず横町さんのほうを振り返りましたが、ハイパープロフェッショナルは嫌な顔ひとつすることなく、さらに懇切丁寧な説明をくださったのでした。か、かっこよすぎかよ~……!!!
その後店内にもどり、ワインのテイスティングもさせていただきました。
ここでコミュ力爆発人類の父が、「こんなんしてもらったら、なんか、美味しい気がしてくるよなぁ」とぽつり。
いや~、もう、それはほんとうにその通り。というか、わたしは「それ」こそが楽しくて、全国各地、世界各地へとワ旅をしているといっても過言ではありません。えぇこと言うじゃんか父…!
「このワインの向こうに、あのひとがいる」
そう思いながら飲むワインって、ほんとうに最高の贅沢だと、わたしは思っています。そんな贅沢な時間をくださって、ありがたすぎるワイナリー訪問でした。いやぁ、楽しかった。また、絶対に行きます!
【2日め:その2】連休といえば!三次ワイナリー
さてお次は、ヴィノーブルの横町さんが最初に勤務なさったワイナリーでもあります、三次ワイナリーさんへと向かいます。
三次さんへは、ヴィノーブルさんから車で10分とすこし。雨足は強まってますが、車内でわいわいしているうちに到着です。
三次ワイナリーさんといえば、日本でも珍しい「貴腐ワイン」が造られることでも有名なワイナリーです。三次は「霧の町」なんだそうで、町を埋め尽くす霧はときに「霧の海」とも呼ばれているそう。この霧が、貴腐ワインを造るボトリティスシネレア菌をすくすくと育むんですね。
そんな三次ワイナリーさん、設立年は1994年と県内のワイナリーのなかでもっとも歴史があるワイナリーです。
わたしがこどもだった頃の連休の過ごし方のひとつが、「三次ワイナリーに行く」ことでした。車でうちから1時間と少し。渋滞もすくないし、適度ににぎわっていて、しかもお酒を買って帰れる。ちょうどいいドライブコースだったんですね。
もちろんこどもだったわたしはワインは飲めませんが、ここで「ブドウジュース」を買って帰るのが、いつものお楽しみでした。
この日はあいにくの雨模様でしたが、外の広場ではイベントがおこなわれていました。そうそう、こういうところで食べる「肉」って、なんかやたらと美味かったよな~!
三次さんには、ワインの有料テイスティングコーナーも用意されています。
ああでもない、こうでもないとセラーのなかで話し合っていると、ガラス越しに両親からの視線が……
すみませんこの夫婦、ワイン関連行事になると長ぇんですよまじで………
というわけで、悩みに悩みまして、夫がお好みだった「芝床ヴィンヤード」のマスカットベーリーAをいただきました。
うむうむ、大満足!これから飲むのが、楽しみだな~!
【2日め:その3】カヴァと鍋とメルロー
そんなわけで、近距離ドライブは無事に終了。ちなみにこれが、10年乗った父お気に入りの車の、最後の長距離運転となりました。父も車も、どうもお世話になりました!
夜は鍋ということで、気軽なカヴァで乾杯です。
そして、お腹いっぱいの食後には、ヴィノーブルさんでいただいてきたメルローをいただきました。
・・・いやさらっと書いたけど、メルローなんかおやつに食べることある?!
ワ旅のおわりに
そんなわけで、金曜日夜からの3泊4日の広島旅は、無事に終わりゆきました。ますたが歩けばワインにあたる。これ、いつかワインの歴史書に載せといてください。
空港から我が家へと向かう快速電車では、ちょっと贅沢にグリーン車を使いました。大人力!
座席に座り、旅の思い出を噛みしめながら、ショワジールさんで買ったカナダの缶ワインリースリングをいただきます。これがまた、めちゃくちゃ美味しいんだよな〜…!
東京と広島は決して「遠く」はないけれど、では週末ごとに帰れるかというと、それもなかなか難しい。
離れているうちは「ま、みんな元気にしてるだろう」とぼんやり結論づけているのですが、こうして帰ってみると、なぜだか望郷の思いが強くなるのは不思議です。さっき帰ってきたばっかりなのに、またすぐに帰りたいんだよな〜…!
このウタのその後に続く数行を、しみじみと感じられるようになったのは、オトナになったのか、はたまたいつまで経ってもこども心のままだからなのか。
またひょいっと気軽に広島に帰るため、そして引き続き美味しいワインを飲むために、明日からもしっかり働いて、稼ぎまっせ!えいえいおー!
・・・そんなことを心に誓った、充実の連休最終日だったのでした。
は~、美味しかったし、楽しかった!🍷
それでは、ここまでお読みいただいてありがとうございました♪また次の #3000円ワイン か #ワ活 でお会いしましょう!
3000円台のワインをこよなく愛する3000円ワインの民、ますたやでした(^○^)今夜はイタリアのナチュラルワインで乾杯中!🥂
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■ ますたやとは:
関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワインは週に約5本(休肝日2日)、夫婦で1本を分けあって飲みます。2021年J.S.A.認定ワインエキスパート取得、2022年コムラードオブチーズ認定。夫もワインエキスパートを取得、現在はWSETLevel2を英語で挑戦中の、ワイン大好き夫婦です!
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