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今治、ワインと愛に出会う旅

そうだ、しまなみ海道を途中下車しよう。

そう思い付いたのは、いままさに今治市内へと向かっている、長距離バスのなかでした。

台風直前の空のもと、バスはぐんぐん島を渡っていきます

しまなみ海道、途中下車の旅

降り立ったのは、大三島(おおみしま)です。

瀬戸内海の真ん中、芸予諸島の一端を担うこの島は、愛媛県最北かつ最大の島であり、大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)の総本社をその懐に抱く「神の島」とも呼ばれています。

さて、そんな島に降り立った、ますたや姉妹。

そう。今回のワ旅のおともは、我が心の酒友、「ワイン好きだけど、よう知らん」と豪語するますたや妹(酒豪)でございます。みなさま、なにとぞお見知りおきをよろしくお願いいたします。

さあ、行き当たりばったり姉妹ワ旅のスタートです!

今回この島を選んだのには、ちょっとしたワケがありました。

この大三島には、「大三島みんなのワイナリー」というワイナリーが存在しています。

今年の5月に伊勢丹新宿でおこなわれた「世界を旅するワイン展」にも出店されていたこちらのワイナリー。実はこのとき、わたしが勤務するブックロードワイナリーのブースにも、ご挨拶をいただいていたのでした。

『広島に帰省することがあれば、きっと足を伸ばそう』

そう思い描いてからはや数か月。そんな思いも、日常の忙しさに紛れてすっかり忘れていたのです、が。

しまなみ海道を渡るバスの車窓から、台風直前のもやに沈む瀬戸内の島々を眺めていたとき。それはまるで天啓のように、ハッと思い出されたのです。

「ここで降りよう!」「いいよ!」

妹、ふたつ返事。(フッ軽)

こういった経緯で、突如決まった島のワイナリー訪問。行き当たりばったりではありますが、行くと決まると急に楽しみになって来た…!

行き当たりばったりですが無事に到着!
どんな出会いが待ってるかな?

大三島みんなのワイナリー訪問

大三島みんなのワイナリーは、地域おこしの一環として着想されたワイナリーです。耕作放棄地を譲り受けて2015年に植樹が開始され、2017年に委託醸造を、そして2019年からは自社での醸造をはじめられています。

醸造家の川田さんは静岡がご出身とのことですが、東京でのNPOの活動中に現在の代表の方と知り合ったそう。この代表の方がワインがお好きで、ワインの世界に導いてもらったんだと、お話をうかがいました。ワインとの出会いって、本当に不思議なご縁があったりしますよね。

「ワインは、ひとを繋ぐお酒だと思っています。それが、いちばん好きなところです」

優しい雰囲気でとつとつと語る川田さん。わかります。すごくわかります。川田さん、さっそく気が合うじゃん※言い方

「ちょうど台風が来ていて畑に出られなかったので、今日は仕事が少ないんですよ」と川田さん。そんなことないのは(職務上)身に染みてわかっておりますが、その気遣いが温かくて染みる…!

ちなみに今回お話の最中に、「もしかして…ますたやさんじゃないですか?」と急に話題を振られていきなり背筋が伸びたますたや(本人)。どうやらご夫婦でポッドキャスト番組『ワインの輪』の大ファンでいらっしゃるそうで、「ますたや」の名前を知っていてくださったんですって。ありがたみがすぎるな…!(※単に圧が強めのいちリスナーです…!)

というわけで、まさにそんな「ご縁」もありまして、なんと醸造所の見学までさせていただきました。いやあ…嬉しすぎて舞い上がる…!行き当たりばったり旅の、わらしべ長者感がすごい…!

醸造所は、販売所から車でしばらく行ったところにあります。建物は、道の駅にあった施設を解体して移転したのだそう。ちなみにブッチャー(圧搾機)が2階にあるのは、自然落下によってよりクリアな果汁をタンクに入れるためなんですって。勉強になる。
うちのタンクよりも大きなタンクがずらり。
「この器具、使ったことあります?」「なんですかこれ?」「オーツーさん(醸造器具メーカー)に言ったら作ってくれますよ」などと醸造器具でひとしきり盛り上がる。ド新人でも、一応ワイナリー勤務者の端くれ。
なんと樽熟成中のMBAを試飲させていただきました。
樽は3年目とのことで、液体に溶け込んだ樽香と果汁のある甘やかな風味が、美しい酸と調和しています。あと数か月すると、もっとバランスが整うかな、とのこと。ひゃ~、リリースが楽しみすぎる…!

畑には現在、ヴィオニエをはじめ、シャルドネ、マスカットベリーA、ピノ・グリ、そして新しくシラーを植えられたそうです。

ヴィオニエは栽培が難しくなかなか実がならないそうですが、ここにシラーを植えたのは「ヴィオニエと合わせて、ローヌブレンドが造ってみたくて」とのことでした。

瀬戸内から生まれるローヌブレンドなんて、もう夢とワクワクしかないじゃない…!

醸造所のお隣には、小さな美術館と、廃校を利用した宿泊施設が併設されています。ここに泊まって星を眺めながらバーベキューなんて、最高だなあ…!

ところで瀬戸内の島々は、「瀬戸内海式気候」と呼ばれる気候帯に位置しています。温度と湿度が安定していることが特徴ですが、地中海の気候にも似ていると言われており、ここで育ったオリーブや柑橘類は今や全国区の人気を誇ります。えっへん。

一方で、この気候の穏やかさは、ワイン用ブドウにとっては過熟に繋がり「酸が出にくい」という課題になるんだそうです。農業、難しいな。

たとえば、昨年のシャルドネは早めに収獲するなど、いかに酸の輪郭を出すかという点でご苦労と工夫をされているんですって。

「でも、はやめに収獲したことによって出る酸味って、”骨格”になるような酸とはちょっと違うんです。だから今年は完熟までいきますが、収穫開始から終わりまで1週間ほどかかるので、その前半と後半の熟度の違いを生かそうと思っています」

収穫日の違いで…!なるほどー!と、首がもげるほどうなずきます。

職人の勘と、論理的な組み立て。そのどちらもが必要なところがワイン造りのおもしろさでもあり、難しさでもある――穏やかな川田さんの語り口からそんなプロフェッショナルの姿勢を感じて、静かな感動が続いていきます。

いやぁすごいなぁ、かっこいいなあ川田さん…!そして、かっこいいなぁワイン造り…!

醸造所の目の前には穏やかな瀬戸内海が広がっています

道すがらの会話のなかでは、わたしが勤務しているワイナリーの形態である「都市型ワイナリー」についても話題にあがりました。そのなかで印象的だったのは、「ここは他に雑音がないから、ブドウに集中ができるんです」とおっしゃった言葉でした。

わたしは、自分が勤めている都市型ワイナリーのことが大好きで、「たくさんのひとの生活の隣に、ワイナリーがあること」を誇りに思っています。

ここにしかない楽しさがあると思っているし、ここでしかできない社会への貢献があると信じているからです。

けれど「ここでは、最低限の生活はできるけど、それ以上のことがなにもない。でもそのことで、ワイン造りに集中できることは幸せです」と語る川田さんの実直さに、なんというか率直に、胸を打たれるところがあったんですよね。ホントに、そうだよなー。

「畑の声を聴く」って、確かにここでは、できるに違いない。だってこんなにも空は高いし、青と緑のコントラストは美しく、きっと星空は、無限に広がっている。

そんな自然のスケールが、ワインに反映されないわけがない――そんなことを本気で信じられるくらいには「自然」がすぐそばにある、そんな光あふれる場所だったのでした。

ちなみに川田さんに好きなワインを聞いてみたところ、「ブルゴーニュ、ですかね…」とのお答えが。ほほう?!

なんでも、かつてミシェル・グロのクロデレア(1999)を飲んでいたく感動したことが、ワイン沼への片道切符だったんだそうですよ。あー、そりゃあまた、難儀な切符を手渡されたことで…!

「だからこそピノ・ノワールは、自分には造れないというか…」とはにかみ笑いをこぼす川田さんの未来像に、なぜかピノ・ノワールのワインがちらついたことは、ここでは内緒にしておきます🤭

お仕事のお邪魔をしましたので、せめてお手伝いを。
なんだか、昨日までの日々とやってることが変わらない気もしますが…!

さて、ひとしきりアツいお話をうかがったあとは、販売所である「大三島みんなの家」に戻ります。ここではワインのテイスティングができます。もちろん、「やる」一択オブザ一択。

現在のキュベはほぼ自社畑醸造。
ひとつだけ「三次ワイナリー」のブドウを使ったキュベを造られているそうです。

島白(シャルドネ)2022

さてテイスティングですが、まずいただいたシャルドネ。これがいきなりびっくりするほど美味しかったんですよ…!

アプリコットや白桃の香りに、ゆずやレモンの柑橘の香り。飲んでみるとクリアな酸が広がって、淡い樽香とフレッシュな風味が全体をふっくらと包み込みます。え、いきなりの完成度。なんじゃこれ…!

この年は早摘みのシャルドネを使った年とお話されていたので、綺麗な酸はおそらくここから来ているのだろうと想像します。お話の感じだとどうも川田さん的にはまだ納得しきっておられないような感じでしたが、いやいや十分美味しいバランスでした、わたしは間違いなく好きですよこれ…!

あとから知ったことなんですが、大三島ワイナリーさんでは極力濾過を少なめにされているんだそうです。圧搾後の果汁も上から下への重力によっておこない、なるべく自然な清澄に任せることが多いんですって。

いや~、でもこれ、正直聞かないとわからなかったです。わたし、どちらかというとにごり感や自然派感には敏感なほうなのですが、透明感のある本当に綺麗なワインで、びっくりしました。

言われてみればこのふくよかさは粗濾過によるもの、かもしれないけれど、そこにちゃんと「意味がある」からこそ、気づかず通りすぎてしまったような気がします。

隣りにいた「ワイン飲むけど、よう知らん」うちの妹も、ひとくち飲んだ瞬間に「えー?!美味しい、なにこれー!」と申しておりました。わかるわー、妹氏、気が合うー。

島紅(マスカットベーリーA)2022

続いていただいたのは、マスカットベーリーAです。醸造所内でいただいたのは樽熟でしたが、こちらは樽を使っていないキュベとなります。

いやぁ…これも美味しかったですねぇ。凝縮感のある果実味と、ふわっと開いたいわゆる「いちごキャンディ香」。ふくよかでかわいくて、でも、きちんと上品なバランス。これはですね、なんていうか「これを飲みたい」と思う日があるワインです。

川田さんは山梨県のダイヤモンド酒造さんで修業を積まれたそうで、「特にベーリーAの造り方は、ダイヤモンドを踏襲しているところがあります」とのこと。ダイヤモンドさんのマスカットベーリーAって、ワイン有識者のあいだでも評価が高いんですよね。

いやしかしそれを「踏襲する」ったって、そんな簡単な話なワケがない…!

ちなみに、妹がテイスティングしていたベーリーAロゼスパークリングもちょっと味見しましたが、こちらはチャーミングながらもほんのりとした塩っぽさがあり、いわゆる「海ワイン」感が出ていておもしろかったです。

っていうか、全体的にジューシーで親しみやすいのに酸が綺麗に出てるっていう、完全にアタシ好みのワインじゃないですか…?

というわけで、初めていただいたのにも関わらず、いきなり推しができてしまいました。忖度なく、というか、多少ひいき目があったとしてもそれを軽く超えるくらい好きです。もー、こういうことがあるから、またワインに会いに行っちゃうんだよなぁ…!

「ワインと出会ってなかったら、妻とも出会ってなかったわけですからね」と、なんだかちょっと小声で教えてくださった川田さん。なんてカワイイご夫婦なんだ。また絶対に戻ってきます!

ご夫婦そろってキュートでほっこり

というわけで、行き当たりばったり途中下車で、とても温かな時間を過ごしました。

さあ、これからは本日のワ旅の、目的地へと向かいます!

ワインバー「blue_no(ブルーノ)」の扉を開く

しまなみの島々を渡り切り、四国本土へと上陸した我々。いよいよ今治市内に到着です。

今治城の天守閣から見下ろすまちなみ

向かったのは、今治駅からほど近い飲み屋街。陽の高い時間は閑散としていますが、そんな界隈を抜けてビルのエレベーターをあがった先に、そのお店はあります。

それが今回の旅の目的地。その名も「ワインバー・blue_no(ブルーノ)」さんです!

こんにちわー!

さて、こちらのワインバーの店主である青野ソムリエは、何を隠そう、わたしのお友達です。

青野さんとの出会いは、青野さんがわたしの「ワ活ラヂオ」を聞いてくださったのがきっかけ、というなんとも光栄なもの。その後ワイナリーにお越しくださったり、「うん、じゃあ、この机のうえのワイン全部ください」という頭のおかしい…じゃなくてありがたいお申し出をいただいたりと、なんとなく情報量の多い関係なのです。おんなじ獅子座だし。

今回お休みが取れることがわかったとき、いちばんに頭に浮かんだ目的地がここ、ブルーノさんでした。

しかし、どうしても日帰りの日程しか取ることができず、諦めかけてたんですね。だってそりゃあワインバーっていったら、夜から開くのが当然なわけで…

でも、とにかくちょっとでもお目にかかれればとご連絡したところ、「お店、何時でも開けますよ」とのありがたいお言葉をいただいたのでした。菩薩かな?

念のためですが、いつもそうというわけではないことは、胸に刻んでおきましょう。それにしても、ホントなんというご厚意…。いや本当にありがたいというか、持つべきものはワインバーの店主というか…!※言い方

ちなみに今回は6種のペアリングをお願いしておりまして、事前にお食事やワインについて相談しておりました。

わたしからのリクエストは「ワイン飲むけどよう知らん妹が、ワイン沼にハマるようなラインナップをお願いします!(※ワイン飲み友達増やしたいから)」というもの。

この、抽象的かつ概念的なリクエストに対して、青野ソムリエからは「おまかせください」とのお返事をいただきました。心強すぎる…!

さあ果たして、どんな世界が待っていたのでしょうか。そして、果たしてワイン飲み友達は増えたのでしょうか…?!

青野劇場の、はじまり、はじまり〜!

駆けつけシャンパーニュと、夏野菜によるエネルギー補給

[フィリップ・ガメ/ブリュット ロゼ・ド・セニエ]

「はい、1杯めです」
いやシャンパーニュやないかい!

早速1杯めから、謎の大盤振る舞いに身震い。GAMETちゃんですってよあなた…!

シャンパーニュといえば、いいワインの代名詞。(雑)

ピノ・ノワール100%の濃い果汁みと、それを包み込む厚みのある酸味。暑い中歩き回ったあとの1杯めには最高すぎるんだけど、のっけからいいワインすぎて先が思いやられるんですけど…!

このシャンパーニュのじゅわぁとした酸味の雰囲気に、トマトベースのお料理がよく合うんです。

夏野菜のティアンドレギューム、はじめて声に出す料理名ですが、お野菜だけとは思えないほど旨味が凝縮しててとてもよきでした。季節ものって、目にも舌にも、心にもいいよね。

とうもろこしの甘みに寄り添う、シャルドネの深淵へ。

[ドメーヌ・トロ・ボー/ブルゴーニュ・コート・ドール・ブラン]

「うーん・・・・ま、いっか」
今、不穏なセリフ呟いてなかった?

不穏な雰囲気とともに注がれたのは、ブルゴーニュ・シャルドネ。その名もトロ・ボー。いやトロ・ボーて!(いいやつ)

お友達スペシャルとは薄々勘づいておりますが、青野さんの「お友達」の範囲がやたらと広そうで心配。

そんな心配をしつつ、シャルドネをいただきます。ほんのりトロピカルな香りに溶け込んだ、繊細な樽のニュアンス。エレガントなのに、ほんのりふくよか。ああ、これはあれだな、いいワインだなぁ…ほんと切ないんだけど、やっぱりブルゴーニュって、美味いのね…

「・・・え、これ、さっきとおなじ品種なん?!味が全然違うんだけど!」

ここで妹氏、思わぬ『シャルドネ』の深淵をのぞくことになります。さきほど大三島ワイナリーさんでいただいたシャルドネとの、「美味しい」の方向性の違いをはっきりと感じた様子。

そうでしょう、そうでしょう…?!おなじ品種でも産地や造り手によってテイストが変わる、これぞまさに!ワインの素晴らしさ!面白さ!な ん で す よ …ッ!!(鼻息)

そんなトロ・ボー氏には、とうもろこしのムースと地元で採れたエビのお料理が提供されました。

潮の香りたっぷりのエビに、ふくよかなシャルドネととうもろこしの甘みが重なり合う。なんだこれ。底抜けに優しくて、とろける時間。

自然派ゲヴェルツの包容力が、分厚いマグロを包み込む。

[ドメーヌ・ガングランジェ/アルザス・ゲヴェルツトラミネール2020]

お次は、アルザスのゲヴェルツトラミネールです。「これは、ますたやさんに飲んでもらいたくて…」とひとこと添えていただいて、ようやく意図に気づきます。

実はこのドメーヌ・ガングランジェ、以前Twitter(X)で青野さんからオススメいただいた1本だったんです。

なんだそのハッピーサプライズ感。「えっ♡これ、飲んでみたかったの…♡(トゥンク)」なるやつオブザなるやつ…!なんなの青野さんイケメンなの……!?(※イケメンなのは間違いないです)

そんなゲヴェルツトラミネールには、マグロのミキュイが登場しました。尾のほうの身を使っているとのことで、一般的なマグロと比べるとしっかり歯ごたえを感じます。

まるで繊細なお肉のような味わいと、自然派のにごりのある風味が、くちのなかでまろやかに溶け合う。は〜〜、もう無理。(無理じゃない)

やっぱり美味いブルゴーニュと、なすびの可能性

[ドメーヌ・ローラン/ブルゴーニュ キュヴェ MCMXXVI 2018]

ドメーヌ・ローランは、ドミニク・ローランのネゴシアンとして立ち上げられたドメーヌです。赤い果実味の豊かなやや若ピノ・ノワールという印象で、きちんとエレガントながら人懐こい、わたしの大好きなテイスト。

こんなのをいただくと、「やっぱブルゴーニュっね美味いよね…」と思わず呟いてしまいます。本日2回め。は〜、そうなんだよね…ブルゴーニュって、美味いんだよねぇ…!(涙)

そうやって姉がしんみり感動している隣で、わが妹は「なんでコルクって開けたら、1回におうんですか?趣味?」などという質問を投げかけ、青野ソムリエに遊んでもらっていました。お世話していただき、ありがとうございました。

ここで登場したのはナスを使ったパスタなんですが、様々な食感に仕上げられたナスが、くちのなかで再構成されていく樣が鮮やかでした。

やや若の印象があるとはいえ6年ほど経っているピノ氏の、ほんのりとした熟成感がナスの持つ控えめな甘みによく合って、とにかく美味しかったです。もうひと皿食べたい。

熟成チリカベの本気と、トリュフの香り漂う鹿肉の握手

[ドムス・アウレア/ケブラダ・デ・マクール マグナム 2008]

メインのお料理に合わせるのは、チリのカベルネ・ソーヴィニヨン。マグナムボトルから注がれる、澄んだきらめきのある魅惑の液体です。

凝縮した黒系ベリーの果実と、舌のうえを満たす旨み。15年の熟成を経ているとは思えない、豊かで上品な酸が果実の輪郭を美しく彩っています。

「ふたりとも、嫌いな食べものはない?」
「昔はキノコだったよね〜」「ね〜」
「・・・・今は、大丈夫?」
「「今は、大好き!」」

あっぶね〜

鹿肉と、きのこ&トリュフのソース

一瞬、造り直しが頭をよぎったと、のちの青野ソムリエは語りました。ピンポイントに当てにいってすみません。

鹿肉、めちゃくちゃ美味しかったです。もうあたしにはそれしか言えない。美味しいものを食べたら、美味しいとしか言えないんですよ人間1回めのアタシには。

青野劇場の真骨頂と、繋がり、広がる、ワインの輪。

[大三島みんなのワイナリー/島みかん 宗方温州スパークリング 2022]

実は大三島のワイナリーを旅立つとき、「よかったら、これお持ちになってください」と託されたものがありました。

それがこちら、島みかんを使ったスパークリング。店頭からは売り切れていて、エチケットも貼られていない1本とのこと。貴重…!

しかも、これは本当にたまたまなんですが、青野さん実は今度、大三島ワイナリーさんの畑をお手伝いに行かれるんですって。

そんなの一緒に飲むしかないじゃん…!ということで、ソムリエにもご一緒していただきました。

ペアリング最後のデセールは、抹茶を使ったバスクチーズケーキが出てきます。そこに、即興で柑橘系のソースが重なって、楽しいセッションだなもはやこれは…!

スパークリングの目の冴えるキリッとした酸味と、柔らかなみかんの香り。柑橘ソースとの鮮やかな協演に、ここにまたひとつ「ワインの輪」が繋がっていくことを感じずにはいられないのでした。

[チェレット/バローロ・キナート]

さあ、本来のペアリングに戻ります。

こちらは、バローロ・キナートといって、バローロをベースにボタニカルのフレーヴァーを加えた甘口ワインということですがなにそれ初めて聞いた…!

バスクチーズケーキのほのかな緑の香りと、キナートのハーバルな香りが寄り添いながら、全体を優しい甘みがまとめあげる。シックでオトナ、でもちょっとかわいいなんて、アタシが目指したいレディ像そのもの。(知らんがな)

こうして夢のような青野劇場は、いつのまにか終焉のときを迎えたのでした。やだ、終わりたくなくて泣いちゃう。

【おまけ】今治ブルーノと東京ブックロード、夢のコラボおめざ

[葡蔵人〜bookroad〜ワイナリー/富士の夢2022]

帰り際、「これ、よかったらお母さんに差し上げて」とお持たせにカヌレをいただいてしまいました。あふれ出る親戚のおばちゃん感…!(好き)

そこで翌日、ちょっと遅く起きた朝のおめざとして、ブックロードの『富士の夢 2022』と合わせてみることに。

こちらの富士の夢、うちの醸造家から「これ、よかったらお母さんに…」といただいたものでして…デジャブ?

シンプルでクラシカル、ほんのりラム酒のきいたカリシュワ食感カヌレに、富士の夢のなめらかなくちあたりが寄り添う、リラックスペアリング。

青野さんのお料理って、ブックロードワインの味筋と相性いい気がするんだよな〜…(チラ)

というわけで、ぜひまたなにかうちのワイナリーともコラボしてくださいませ!(ブログで口説く)

そしてワ旅は終わりゆく

あまりの居心地の良さにうっかりのんびりしてしまった我々。いつしかバスの最終時間がせまっており、今治の町中を猛ダッシュで駆け抜けました。なんかいつもこんなじゃない?(学ばない)

汗だくでたどり着いたバス停で「どうだった?」と妹に尋ねたところ、肩で息をしながらコメントが返ってきました。

「ワインのことはわからないけど、まるでエンターテイメントみたいだったね!

まるでエンターテイメント…!
本当にその通りだったよ、ブログに引用します…!!

というわけで、行き当たりばったりで始まった今治ワ旅、終わってみれば今回もたくさんのワインと、暖かなひとの繋がりに出会えました。

ワインがあるところには、誰かの愛がある。

そんなことを繰り返し確認するように、こらからもワ旅に出たいと願う、2023年夏休みのますたやだったのでした。あー、楽しかった!

さあ、TOKYOにもどったら、またワイン造りに励みますよ!果たしてわたしはこのまま無事に、帰れるのでしょうか…?!
(台風でダイヤが乱れに乱れまくっている新幹線の車内よりお届けしました)

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■ ますたやとは:
関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワイン好きが高じて、2023年3月から都内のワイナリーで働きはじめました。
2021年J.S.A.認定ワインエキスパート取得/2022年コムラードオブチーズ認定。夫もワインエキスパートを取得し、現在はWSETLevel3を英語で挑戦中。

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