[3000円ワイン]ここがひとつの到達点〈日本/マスカット・ベーリーA〉
「ふるさとワ旅」で手に入れた、 #3000円ワイン を飲みました。
いただいたのは、ヴィノーブル・ヴィンヤードさんが醸造する、マスカット・ベーリーA。ヴィノーブルさんは2021年8月に広島県の県北にオープンしたばかりの、小さなワイナリーです。
醸造長である横町さんは、東農大の醸造科を卒業されたあと、同じく広島県の三次ワイナリー、山梨県の勝沼醸造での勤務を経て、2013年に独立されています。
その後もブドウの苗木の栽培と販売にたずさわりながら、フリーランスとしていくつものワイナリーの立ち上げを支援してこられたそう。
つまりいわゆる「本格派」の、日本ワイン醸造家なのです。
そんな横町さんですが、実際にお会いするととても親切。
うちの「コミュ力爆弾」である父からの図々しい声かけにこころよく答えて醸造設備を見せてくださったばかりか、
ブドウの栽培方法、クローンの違いについて、酵母による味わいの変化のことなど、大変コアなお話を、完全に父を置いてきぼりにしながら語ってくださいました。ありがとうございます最高か。
言葉の端々から伝わってくる、「本格派」の情熱。
そんなヴィノーブル・ヴィンヤードさんの樽熟マスカット・ベーリーAをいただいたので、ご紹介します🍷
これがまた、美味いベーリーAだったんだわ…!
マスカットベーリーA バレル・エイジド[¥3500]
<ワインdata>
国:日本 種類:赤ワイン 品種:マスカット・ベーリーA ヴィンテージ:2021 生産者:ヴィノーヴル・ヴィンヤード インポーター:―
<バランス>
酸味★★★☆☆ タンニン:★☆☆☆☆ 香り:★★★★☆
日本固有の品種であるマスカット・ベーリーAから造られるワインには、特徴的な香りがあります。それがいわゆる「キャンディ香」と呼ばれる、いちごキャンディをくちに放り込んだときのような、甘やかでカワイイ香り。
味わいは軽やかで、基本的にすっきりと飲みやすい。実は香りほどには甘くなく、お醤油やお出汁を使った和食にも寄り添う日本チームの有力選手。
一度「マスカット・ベーリー・Aが飲みたい!」と思うと、ちょっとほかでは代えがきかない、キュートな魅力を持った品種…と、わたしは思っています。
ところがこのベーリーA、ワインのコアファンには、そこまで人気が出ないんですよね。ある意味ではわかりやすすぎるシンプルな香りと、いまいち決定打に欠ける味わいが、ベーリーAを地味な存在にしちゃうのかな〜と、思っていました。思っていましたとも。かつてのわたしも。
そう。ベーリーA、美味しいワインは、ちゃんと美味しい。
そういう意味で今回のワインも、「ちゃんと美味しい」ベーリーAだったのです。
外観は完全に「淡い系」です。紫がかった美しいルビーレッドが、ゆらゆらと揺れています。
そして、グラスに注いだ瞬間から、ふわりと香るキャンディ香。
しかしこれが「ザ・いちごキャンディ!」というには、ちょっと柔らかい印象なのです。
最初はむしろおずおずと、様子をうかがいながら登場してくる感じ。温度があがるにつれてじわじわと花開いていく様子は、なんというか、奥ゆかしい和の姿勢さえも感じるのでした。
さらにこちらのベーリーA、樽熟されているんです。いわゆる「樽香びしばし!」といった強い印象ではないのですが、この熟成によって、香りの輪郭がほんのりと複雑みを増しています。
味わいとしてまず感じるのは、とても綺麗な酸。いい。酸っぱすぎないぎりぎりラインで、ワインをクリアな印象に仕上げています。いい。
そしてこれまたイイのが、「かすかに甘い」んですよね〜。ベーリーAってときどき、「香りめっちゃ甘いのに、くちあたりめっちゃドライ」みたいなデレツンの子がいて、「おまえ甘いんとちゃうんかい!」って突っ込みたくなることがあるんですが、
その点、このワインは奥ゆかしい控えめなキャンディ香と、和三盆みたいなかすかな甘みが、とても「ちょうどいい」感じのバランスになっていました。
ちなみに、これまでにわたしが「おお、これは美味い!」と驚いたベーリーAはふたつありまして、
最初に衝撃を受けたのは、かの菊鹿ワイナリーを傘下に抱える『熊本ワイン』さんの『マスカット・ベーリーA 樽熟』。
そしてもうひとつが、山形ワ旅で出会った、『朝日町ワイン』さんが造る『マイスターセレクション 遅摘み マスカットベーリーA』でした。
どちらも、ブドウの熟度が(おそらく)高いこと、そして樽熟をしていることが特徴的。
今回のヴィノーブルさんのワインには、三次ワイナリーさんのベーリーAにも使われている、「木津田ヴィンヤード」のブドウが使われています。
三次さんの『ベーリーA 木津田ヴィンヤード』も美味しかったので、木津田さんのブドウの熟度が上がりやすいということなのだろうと想像します。
日本でブドウの熟度をあげることって、相当難しいことなのだと思います。収穫がほんの1日ずれるだけで、台風で全滅しかねない。
でも、十分に熟したベーリーAと樽の相性って、結構よさそうだよなぁ…と、気難しい日本の気候に思いを馳せます。
「ベーリーA、ほんとはそんな造りたいわけじゃないんですけど…」と、とつとつと語る横町さん。素直か。
本当は、国際品種にもっとちからを入れて行きたいんですって。
うん、でも、わかるよ。これ飲んだら。世界を視野に入れてるってことが。
だってなんかこれ、ブラインドで飲んだら、ボージョレのガメイかな…?って言っちゃうくらいの美味さ、ある…!
うちの夫氏はこのワインを飲んで、「これが、日本のベーリーAのひとつの到達点じゃないかなぁ」などとのたまっておりました。
きっと、たくさんある到達点。軽くてドライ、甘やで丸い、美しいロゼにスパークリングなど、山の登りかたも頂上の風景も、きっとひとそれぞれ千差万別。
なにはともあれ「樽熟ベーリーA」、わたしはとても好みであります。今後のベーリーAの発展が、ますます楽しみになるワインだったのでした🍷
それでは、ここまでお読みいただいてありがとうございました♪3000円ワインをこよなく愛する、3000円ワインの民ますたやがお送りしました(^○^)またね!
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■ ますたやとは:
関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワインは週に約5本(休肝日2日)、夫婦で1本を分けあって飲みます。2021年J.S.A.認定ワインエキスパート取得、2022年コムラードオブチーズ認定。夫もワインエキスパートを取得、現在はWSETLevel3を英語で挑戦中の、ワイン大好き夫婦です!
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