キャラが濃いぜ、ちばワイン!
千葉県の4つのワイナリーが一堂に介する、メーカーズディナーに参加しました。
宴の場所は千葉駅から徒歩7分、”千産千消(ちさんちしょう)”のフレンチビストロ「レコルト」さん。ここに、千葉県でワインを造る4つすべてのワイナリーの、ワインと醸造家が集います。ひえ~、豪華 of the 豪華…!
ちなみにレコルトの店長である大塚さんは、千葉県発の酒屋IMADEYAさんの日本ワイン部門の立ち上げにたずさわられた方。そんなご縁もあり、IMADEYAさんプレゼンツによるこんな豪華な会が催されたのでした。うれしい。
さて、千葉県にある4つのワイナリー。この醸造家たちがまた、キャラが濃……じゃなくてたいへんに個性豊かなんですよ。日本ワインのおもしろさって、生産者と距離がちかいところにもありますよね。ご本人のことを知ると、もっとワインが楽しくなる。
もちろん!醸造家ご本人ばかりでなく、ワインもそれぞれキャラが濃…じゃなくて、個性豊かなラインナップ。
そんな #ちばワイン 四天王たちの、キャラの濃さ、とくとご覧あれ。(もう隠せない)
齋藤ぶどう園
千葉県内で唯一のワイナリーとして、90年間「ぶどう酒」を造り続けて来られた斎藤ぶどう園さん。創設はなんと1930年、90年の孤独です。
第二次世界大戦時には、潜水艦や魚雷のソナー製造のために造ったワインをすべて軍に渡していたとのことで、あ、それワインの教科書で習ったことあるやつ…と、歴史の生き証人感、半端ない。
そんな長い歴史をもつ斎藤ぶどう園さんですが、実はこのワインがなかなか手に入らないんだ…!
生産本数が多くないこと、おもに地元で消費されること、そしてなによりもファンが多いことから、市場に出回りにくい齋藤ぶどう園さんのワイン。実はわたしも今回が、初めましてだったのでした。
最初にいただいたのは「デラウェア2021」でした。で、このファーストタッチがびっくりだったんですよ。香りを取った瞬間から立ちのぼる、野生酵母の生き生きした香り。
こ、これはいわゆる「ザ・ナチュラルワイン」。そうだったの斎藤さん…?!
ということで、醸造家マサコさんにお話を聞いてみました。すぐ本人に聞けるのすごい時間だなこれ…!
マサコさんによると、「必ずしもすべてを野生酵母発酵させるわけではない」んですって。酒質を見ながら、それが適切と判断したときに、野生酵母でのワイン造りを進めるているんだそう。へー!
昔から野生酵母なんですか?とうかがった際の、「昔はむしろ培養酵母なんてなかったので…」という言葉のなるほど感がすごいし、「昔」の悠久感がすごい。斎藤さんのワインは、今をときめく「ナチュラルワイン」という言葉よりも、「ひいじいちゃんのやり方を受け継いだワイン」のほうがしっくり来る…!
そして、このあといただいた「樽熟2020(ヤマブドウ)」。これがまたデラウェアとは全然キャラが違ってるんですよね。クリアでスマートな造りながら、樽が溶け込んだエレガントな味わい。まわりの参加者の方とも「さすがの貫禄を感じるね」なんて話していました。なるほどー、ひとつひとつの造りが違うって、こういうことか…!
「自分たちが飲む、晩酌用の酒を造りたい」と語る醸造家マサコさん。晩酌用の酒、なにそれ最高じゃん。
それにしても、「野生酵母のおもしろさと、クリーンさ、どちらも大切にしたい」と真摯に語るカッコいいマサコさんが、なぜか会場の隅でひとりご機嫌に踊っているところ、わたし、見逃しませんでしたよ…?(どういう感情…?)
Sawa Wines(サワワインズ)
お次は八街市(やちまたし)のサワワインズさんです。千葉県といえばピーナッツ、ピーナッツといえば八街市。風の強い街としても有名で、カラカラに乾燥した土壌から巻き上がる砂は、「やちぼこり」なんて呼ばれています。洗車が大変そうな地域だな…!
そんな八街を、なんと「ワイン特区」にしちゃったのが何を隠そうこちらの山本さん。ちなみにこのとき、ワイナリーは山本さんち一軒だけでした。いやどういう行動力?
実はわたし、昨年こちらのシャルドネの収穫にうかがっています。そして、ぴちぴちのシャルドネとたわむれながら、山本さんからいろんなお話をうかがったんです。
先代のブドウ畑を引き継いではじめたワイン造り。スズメバチの襲来、大雨で折れ曲がったブドウの樹、醸造許可がおりる直前に「ダメ」になってしまったシャルドネたちーー
「醸造がやりたい方に言いたいのは、とにかく、やったほうがいいということ」
朴訥と語る山本さんの、静かな言葉に胸を打たれたこと、今でもときどき思い出します。
ところでサワワインズさんのワインって、キュートな果実味にあふれるんですよ。まじめで物静かな山本さんがときおり見せるはにかみ笑顔みたいな、キュートなフルーツ感。クリアな口当たりとのギャップが、萌えだよな〜
「海もあり山もあり、食も文化も豊かだと言われる千葉県ですが、ワインだけが足りてなかったと思っています。わたしも食文化のいったんを担いつつ、あくまで地酒としてワイン造りをしていきたい」
穏やかで、淡々とした雰囲気ながら、意外とよくしゃべる山本さん。イタリア品種を植えてるところ見ても、ほんとは陽気なタイプなんじゃないの山本さん……!?(ギャップ萌え)
船越ワイナリー(多古ワイン)
お次は成田空港の裏っかわ、のどかな多古町に位置する船越ワイナリーさんです。
町おこしをしたい!と考えた船越ワイナリーさんの社長。もともとお米を作っていたこともあり、「日本酒」の製造を考えてたんですって。ところが日本酒の醸造許可を取ることが難しく、ワイン造りに切り替えて生まれたのがこの多古ワインさんなんですって。社長、切り替えてくれてありがとう…!!
そんな多古ワインの醸造家戸張さん、通称「バリちゃん」は、今をときめく醸造家1年生!
前任の醸造担当が退職されて、あわや醸造ができなくなる…?!という危機を、当時なんと事務員としてお手伝いをしていたバリちゃんが救ったのでした。救世主じゃん…!
「ひえ〜〜〜ッッじょ、醸造家だなんて〜〜〜〜ッッ」
謎の挙動不審を発動しながら、会場の端で縮こまるバリちゃん。どうしたバリちゃん…?
「ひゃ〜〜せっかくカンペ書いたのに、字が汚くて読めません…!」バリちゃん…?
「やだ〜〜〜なんかわたし、みんなから変って言われるんです〜〜〜」
うん、否定はしないかな…!(率直)
そんな様子がちょっとおかしいバリちゃんですが、ルミリュウの塩瀬さんにアドバイスをいただきながらついに今年、初ヴィンテージをこの世に生み出しました。おめでとうございます!
そしてこのシャルドネ、まじで美味しいんですよ。華やかな柑橘の香りと、透明感のある口当たり。かすかな残糖を感じるリラックス感がまた心地いい。
すごいよバリちゃん……!!
「醸造家1年生として、留年しないように頑張りたいです!」と所信表明をおこなっていたバリちゃんですが、留年どころか飛び級級の美味しいワインが生まれています。いやあ多古ワインさん、今後が楽しみすぎます…!(ちょっと様子はおかしいけど…!)
COQ WINERY
最後は千葉県の大都会、船橋市のど真ん中でワイン造りを行うコックワイナリーさんです。
こちらの醸造家小久保さんは、もともと船橋で飲食店を経営されているソムリエ。そしてなによりみなさんもよくご存知の、ワイン1年生の著者でもあります!
コックワイナリーさんは、駅からも徒歩で行ける距離感も魅力。わたしもできたてほやほやの頃に、ワイナリーにお邪魔してきました。
なんせわたしのワインの知識は『ワイン1年生』で身につけたようなもの。そんなわたしにとってまさに聖地巡礼ともいえるワイナリー訪問だったのでした。
そしてコックワイナリーさんのもうひとつの特徴。それは、ワインのエチケットのキャッチーさ…!
「NAGOMIキャンベル」「キャトられスチューベン」「君に晩腐」なんて、ワインのお名前までキューティでキャッチー。
ところで「君に晩腐」ってどういう意味なんです?って小久保さんに聞いたら、「この年、晩腐病でほとんどのブドウがダメになってしまって、残ったほんのわずかのブドウで造ったワインなんです」ということでした。まさかの泣けるストーリーだった…!
コックさんのワインは、「日々の食事に合わせてもらいたい」という言葉どおり、あとに残る出汁感がウマいです。無濾過ゆえのじわじわした旨味が、和食にしっくり来る…!
ところで小久保さん、Podcast「ワインのガッコウ」の配信もされていました。こちらの番組が終わって久しいですが、次の番組なんていかがですか…!?
「そうですね…ちょっと考えてます」なんと。
ぜひ、ワ活ラヂオとのコラボも、よろしくお願いしまーす!(宣伝)
というわけで、2時間があっという間に過ぎ去った、美味しく楽しい時間だったのでした。
千葉県内では現在も、ワイナリーやワイン用ブドウ畑の設立が続いています。この日も、新しくできたばかりのワイナリーの方がいらっしゃっていました。盛り上がってますね〜!!
海と山、砂地に火山灰土壌。バラエティ豊かな地形が生み出す千葉の自然は、きっとワインのバラエティーにも繋がるはず。
ちばの、テロワールって、なんだろうーー
これからもちばワインの発展を楽しみに、キャラの濃い醸造家たちともども、推していきたいと思います!
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■ ますたやとは:
関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワイン好きが高じて、2023年3月から都内のワイナリーで働きはじめました。
2021年J.S.A.認定ワインエキスパート取得/2022年コムラードオブチーズ認定。夫もワインエキスパートを取得し、現在はWSETLevel3を英語で挑戦中。
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