猛暑のココ・ファーム・ワイナリー訪問記。
栃木県のココ・ファームワイナリーに行ってきました。そうです、ちょっとおひさしぶりのワ旅です🍷
前日の仕事終わりに宇都宮へ向かい、そこで1泊したますたや家。鈍行列車を乗り継いで、足利市へと向かいます。
ちなみに前日は、元・近所のワイン屋でお世話になったソムリエ(ワイン・アドバイザー)のひとりと再会して来ました。
わたしがワインを好きになり、醸造現場に飛び込むまでに育ったきっかけのお店。自社の醸造ワインをお土産に、あらためてあの頃はお世話になりました~なんてへらへら話してたら、ふいに「店を閉めるとき、”あの店舗はますたやさんというひとりの人の人生を変えたんですよ!?”って社長に力説したスタッフがいたんですよ」なんて聞いてしまってうっかり涙。
いやあ、このワ旅、幸先がいいことこの上なしですね。宇都宮なのに餃子食べれなかったけど。
さて、翌日。
足利駅でますたや妹(酒豪)と合流したわれわれは、ご機嫌なタクシーのおじちゃんの案内でココ・ファーム・ワイナリーへと向かいました。前日は37度近くまでのぼったという足利市。今日もピーカンの晴天、というか、猛暑、いや、酷暑です。
「今日は、昨日よりましですけどねぇ。暑いから、だーれも歩いてない。でもここは、いつ来たって、人は歩いちゃないんですよ」
タクシーの運転手はご機嫌に語ります。
「東京から来たひとがね、言うわけですよ。”この町ってのは、なんだい。ひとが出歩いちゃいけねぇ決まりでもあんのかい!”、ってね」
わはは、と和やかな笑いを乗せて、太陽が痛いほど照り付ける町中を走り抜けていきます。
ココ・ファームが近づいてくると、道は急な上り坂に。その途中、ワイナリーのすこし手前には、ココ・ファームで作業をされている「こころみ学園」の宿舎を通りがかります。
「昔はねぇ、ここの学園生さんたちが脱走しちゃって、写真をもった先生方がよーく駅で聞き込みされとったですよ。こういう子見なかったかい、って。最近じゃあ、見かけなくなりましたけどねぇ」
なんて言葉に、地域に「こころみ学園」が根付いていることを感じながら、いよいよワイナリーに到着です。
まずはなにはともあれ、乾杯からはじめましょう!
ただいまココ・ファームでは『夏を楽しむスパークリング・フェスタ』が開催中。ショップやカフェにて、グラス1杯から気軽に泡をいただくことができます。
そりゃもう、こんな暑い日には泡一択でしょう!というわけで、駆けつけ一杯めの、かんぱーい!
わたしは「きたののぼ ロゼ(ボトル ¥6,000)」をチョイス。ロゼ泡、好きなんですよね~。リストにあるとつい選んじゃいます。
こちらは野生酵母由来っぽい野趣味あふれる香りと、最初に感じるきゅっとした酸、そして後に残るやや複雑なくちあたりが印象的。ワイン単体だとちょっとキャラが濃いめだけど、スパイスのきいたカレーに、よく合いました。
え、ワインに、カレー…?
なんかもう、このときは無性にどうしてもカレーが食べたくて……暑かったんです。本当に。なんならワインは合わなくてもいい、とさえ思ったんですが、これが意外や意外、結構いい感じに合ってました。えー、想定外…嬉しい…
すべてのランチプレートについてくる「大根の酢漬け」が、結構どのワインに合ったのもおもしろかったです。ココファームさん、ワインに酸が出やすいので、そういう意味でこのサラダ、使い勝手がよさそうでした。
さてランチのあとは、ワイナリーツアーに参加します。ここで「ココ・ファーム・ワイナリー」の歴史がつまびらかになっていきます。せっかくなので、ちょっと、お付き合いください。
ココ・ファームの創設者である 川田 昇 氏(川田先生)は、もともと知的障害を持つこどもたちの(当時でいうところの)特殊学級の担任でした。
戦後間もない混乱期にあった日本では、知的障害や神経発達症を持つこどもたちへのサポートなんて、ないにも等しいのが当たり前。「とにかく椅子に座らせ、やみくもに勉強を教える」ような教育が、全国各地で日常的におこなわれていた時代でした。
しかし、そのような教育に疑問を感じた川田先生。「この子たちには、もっと大事な教育があるのではないか」と考えます。最終的に「農作業が適している」と考え、畑を探したんだそうです。
「でも、ただの教師が、借りられる畑なんてなかったんですね。こんな急斜面に畑ができたのは、ここがよかった、というわけではなく、ここしか借りられなかったので仕方なく、というところが始まりだったのです」と、スタッフの方からお話が。
ちなみに最初に植えたのは、食用のブドウだったんですって。
「知的障害を持つこどもたちにも、雑草と見分けやすく作業がしやすい果樹であること」かつ、「なるべく面倒くさく、年中手がかかり、こどもたちに仕事を与え続けてくれる農作物」と考えた結果、「ブドウ」が選ばれたんだそうです。
面倒くさい果樹の代表がブドウって、もう、ねえ…!(かわいい)
ここで印象的だったのは、「無農薬栽培」はあくまで「こどもたち(現・学園生)の仕事のため」という説明でした。
ココ・ファームさんといえば、「無農薬栽培」「野生酵母使用」「無濾過」といった、いわゆる自然派のワイン造りをされているイメージがあります。
自然派のワイン造りって、少なくとも現代では「あえてそれを選ぶ」ことが多いと思うんですね。つまり「あえて、なぜ」の部分に、造り手としての矜持が示されることが往々にしてあると感じているんです。
ココ・ファームさんのワインって、「障害を持つ方とともに造るワイン」であり、「自然派な造りのワイン」であり、「質の高さを認められたワイン」でもある。そう考えると、福祉としての社会貢献の意図が大きいのか、それとも「ナチュラルワイン」にこだわりがあるのか、はたまた首脳会談や飛行機のファーストクラスにも選ばれたハイクォリティを今後もひたすら目指していくのか――といったあたりの情報が、どうもわたしのなかで渋滞してたんです。
それが今回のツアーに参加してみて、自然派の栽培や醸造のベースにはあくまで「学園生の教育」があったことが、このワイナリーのストーリーとして大事にされていることがわかってきました。
こどもたちのちからを、十分に育てるためのブドウ栽培。そして、障害を持ちながらも継続的に働いていくためのワイン造り。
そこに、「障害を言い訳にしない」「かわいそうという気持ちで買ってもらうような品質のものは造らない」という、川田先生の厳しさが加わったことによって結果的に質の高いワインが生まれている――
そんな素朴なストーリーに、わたしとしてはなんだか、納得感があったのでした。
さて、ココ・ファームさんのフィロソフィに触れるワイナリーツアーが終了すると、いよいよお待ちかねのテイスティングです。ワイナリーに来たんだから、そりゃあワイン、飲まなきゃねえ…!
テイスティングは、1杯ずつ、3種、5種のセットから選べます。
5種は¥1500でしたが、グラスを返すと¥500のお土産チケットがもらえる楽しいシステム。ちなみにわたしはこのお土産チケットを、帰りにチーズクッキーと交換してほくほくでした。これぞウィンーウィン。
このほか、夫と妹のテイスティングのおこぼれももらって、けっこういろんな種類を楽しめました。
特に白ワインはわりと素直に「美味しい」のが多かったな~。ブレンド白、よかったです。ココさん、夏にいいのかも。酸味あるし。
というわけで、帰り道の特急でうとうとと眠りに落ちながら、ひさしぶりのワ旅は終わりゆくのでした。ココさんありがとう、また来ます!
やっぱり現地に出向くのはいいな。青々とした畑とのんびりした空気に、なんだか全身が溶けていくようでした。暑さだけではなくて。
ワインを飲んで、ワインを造り、ワインを売って、またワインを飲む。いや〜アタシの人生、ジャストナウ・ワインに振り切っております。ワインのことしか考えてないな。いいのかな。まあいいか。楽しいから。
というわけで、ますたのワ旅、これにて一件落着。夫も妹も、またお付き合いしてね。
さあ、次の新たなワインと出会うためにも、明日もしっかりワインと遊びますよ!(仕事)
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■ ますたやとは:
関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワイン好きが高じて、2023年3月から都内のワイナリーで働きはじめました。
2021年J.S.A.認定ワインエキスパート取得/2022年コムラードオブチーズ認定。夫もワインエキスパートを取得し、現在はWSETLevel3を英語で挑戦中。
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