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苦しい時こそ アスリートの「#コトバのチカラ」が背中を押してくれる

新型コロナウイルスは病気による死者や、経済的な打撃をもたらしただけではありません。スポーツを楽しむ機会も奪っています。

そんな中で、私たちは「コトバのチカラ」というサイトを公開しました。アスリートの言葉を紹介するサイトです。

全国の新聞、テレビ、ネットなど24メディアが協力し、Googleニュースイニシアティブ(後段で説明します)が支援する、非常に珍しい「コラボレーションサイト」でもあります。

その開発経緯や狙いについて、事務局を引き受けている株式会社メディアコラボ代表としての立場から解説します。

アスリートの「コトバ」は、人を勇気づける

スポーツは、人生に例えられます。苦しい準備を経て、厳しい状況に何度も追い込まれ、諦めずに戦って、時に勝利する。負け続けることもある。

そういう経験を積んできたアスリートの言葉は、多くの人を勇気づける力があるはず。

全国のメディアが取材し、記事にしてきたアスリートたちの言葉から珠玉の一言を集め、シンプルなデザインで表現し、ユーザーにシェアしてもらう。「コトバのチカラ」はそういうサイトです。

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始まりはGoogleとONAの共催イベント

きっかけは、2019年8月にGoogleニュースイニシアティブとOnline News Association Japan(ONA Japan)が共催したイベントでした。

Googleニュースイニシアティブは、Googleが世界で展開している活動で「報道の現場における技術活用の支援と、デジタル時代のジャーナリズムを切り拓く」ことを目指しています。

ONA Japanは世界最大のデジタルジャーナリズム振興組織で、個人単位で世界中のジャーナリストやニュースメディア関係者が参加しているOnline News Associationの日本支部です。

「Reporting 2020 & BEYOND」と題したそのイベントには、全国40社が参加。記者、編集者、デザイナーら63人が、スポーツ報道をテクノロジーとコラボレーションでどうイノベートするかをテーマに議論しました。

私はONA Japanのオーガナイザーとして、このイベントでも事務局に入りました。面白かったのは、議論に止まらず、実際に新しいスポーツ報道のアイデアを生み出す場だったことです。

「そもそも見ない」「人気選手・競技だけ注目される」

初日、まずは事務局から参加者全員に街頭インタビューでスポーツ報道の課題をユーザーに聞き取って欲しいと依頼しました。六本木の会場周辺で街ゆく人に直接聞いてきた声は刺激的でした。

若者を中心に「そもそもスポーツを見ない」人が多く、「人気競技や選手にばかり注目が集まっている」と報道のあり方への批判もありました。

参加者からは「いろんな選手や競技を取り上げたいけれど、読者の需要も人気競技や選手に集中して悪循環になってる」という意見も出ました。

この課題を乗り越えるにはどうしたらいいのか。

役立つ情報であれば、興味を持つはず

興味がないから、スポーツを見ない。メディアもユーザーが興味がある選手にばかり注目する。であれば、興味を持ってもらうためにどうするか。

「役に立つ情報であれば、興味を持つはず」

そういう切り口から生まれたのが、悩んでいたり、苦しんでいたりする人を後押しする言葉を紹介するというアイデアでした。

スポーツを超えて届くメッセージ

実際に「コトバのチカラ」には、スポーツに止まらないメッセージ性があります。

むしろ、厳しい努力を続けて、勝負の世界で生きてきたアスリートの言葉は、人生に役立つものばかりです。

コトバは今も増え続けていますが、これまでに公開されたものの中から、いくつか紹介します。

「これから大きな勝負に挑む人」には...

坂本花織さん(フィギュアスケート)
"跳ぶから見てろよ"

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「苦しくて何かを投げ出したいと思っている人」には

羽根田卓也さん(カヌー)
"大変だったことと、得たことやよかったことは表裏一体"

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「好きなことをしているのに、やる気が出ない人」には

野口啓代さん(スポーツクライミング)
"モチベーションって頑張って上げるものではないから。頑張らなくても勝手にやりたくならない?”

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「本番に臨む前に準備で心折れそうな人」には

歌津清文さん(柔道)
"稽古が好きなんです。特に苦しいのが"

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「何のために頑張ってるかわからなくなった人」には

登坂絵莉さん(レスリング)
"「誰かのために」の方が 私は頑張れる"

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「自分はもう人生下り坂なんじゃないかと思う人」には

三浦知良さん(サッカー)
"カズのまま死ぬ"

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「自分は何者なのか思い悩んでいる人」には

アレックス・シブタニさん(フィギュアスケート)
"どこで生まれ、どんな民族で、どこで育とうと、誰もが自分は誰かという問いの答えを探して葛藤している。"

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そして、同じ悩みでもこのコトバの方がしっくり来る人もいるはず...

大坂なおみさん(テニス)
"私は自分のアイデンティティとか深く考えていません。私は私なだけなので。"

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アスリートも、コトバも、それぞれに多様性に満ちています。

ミーガン・ラピノー(サッカー)
"このチームには、ピンクの髪もいれば、タトゥーを入れた人もいる。白人の女の子も、黒人の女の子も、ストレートの女の子も、ゲイガールも。"

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年齢も、性別も、著名度も関係なく、アスリートのコトバにはチカラがあります。「記事を読む」のリンクをクリックしてもらうと、各メディアがそのアスリートを取り上げた記事で、コトバの背景も知ることができます。

(ちなみに圧倒的に反響が大きかったのは、やはりこの人でした)

羽生結弦さん(フィギュアスケート)
"もう少しだけ、この子たちの力を借りてもいいかな"

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新型コロナウイルスに苦しむいまこそ

元々は2020年にオリンピックやパラリンピックでスポーツへの関心が高まることを見越して準備を進めてきましたが、延期が決まった後、事務局と参加メディアで議論し、予定通りにサイトを公開することにしました。

コロナ対策による外出自粛やイベントの中止で気分が落ち込み、生まれて初めてスポーツのない時間を過ごしている私たちを勇気づけてくれる言葉が、ここにあると考えたからです。

喜友名諒さん(空手)
"1週間後でも8月でも来年でも優勝する準備はできている"

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テーブス海さん(バスケットボール)
"ウイルスが終息したときに誰がちゃんと努力していたか、それは自分だと言えるように。言い訳せず、今こそ頑張ってほしい。"

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三宅宏実さん(ウエイトリフティング)
"プラス1年を ボーナス1年に"

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三宅さんの記事を読むと、20年にわたる競技生活によって全身を痛めている34歳のベテランにとって、オリンピック延期がどれだけ大変か伝わります。

それでも、その1年を「ボーナスに」と語るコトバに、背中を押されます。

パラアスリートの魅力も伝えたい

コトバのチカラには「PARAPHOTO」にも参加してもらっています。知らない人が多いでしょう。パラアスリートを取材する専門メディアです。

普段、あまり報じられないパラアスリートですが、そのコトバにもチカラと魅力が詰まっています。

河合純一さん(競泳)
"パラリンピックは人間の可能性の祭典"

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土田和歌子さん(トライアスロン)
"逆境に耐えて咲く花こそ美しい"

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鹿沼由理恵さん(トライアスロン)
"重度の人にも競技する権利はあるし、パラリンピックは全てではありません。運動したい、動きたい、という気持ち。そして、多くの楽しさをわかちあえるかが重要。"

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勇気づけられた感謝をアスリートに伝えたい

「コトバのチカラ」にはシェアボタンと共に、FacebookやTwitterなどの「いいね」と同様のリアクション機能をつけました。

コトバを読んだ人に、どういう風に感じたかを自分で選んでもらいたい、とリアクションは4つ準備しています。

「いいね」「元気でた」「深い」「感動した」

これらの反応を伝えることで、その発言したアスリートへの応援の気持ちを届けられたら、という思いも込めています。

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また、検索ページでは選手名や競技名、参加メディア名での検索だけでなく、それぞれの反応が多かったコメントも一覧で見られるデザインにしています。

より多くのアスリートのコトバを見てもらうため、自分の気分に合わせたコトバに出会ってもらうためです。

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デザインも「コラボ」

ユーザーの多くはスマートフォンを使っています。画面をスクロールさせながら、たくさんのコトバを見て、気に入ったところで立ち止まってもらうことを意識したデザインになっています。

これは事務局が参加メディアとオンラインでミーティングを繰り返して意見を集約し、デジタルデザインスタジオ「BIRDMAN」の制作で実現したものです。

視覚障害があるユーザーを想定し、ブラウザなどに依存せずに読み上げ機能が利用できるようにもしています。

世界で広がるコラボ報道

コラボ報道の事例は海外でいち早く広がっており、ジャーナリズム業界の最高の栄誉であるピュリッツァー賞の公益報道部門を2020年に受賞したのも、アラスカの地方紙「アンカレジ・デイリー・ニュース」と非営利の報道機関「プロパブリカ」のコラボプロジェクトでした。

日本でも、西日本新聞を中心に地方紙が連携する「オンデマンド調査報道」、報道NPO「ワセダクロニクル」・シンクタンク「構想日本」・日本大学・Visualizing.jpによる行政事業DB「JUDGIT!」、毎日新聞と調査報道グループ「フロントラインプレス」による共同取材などの事例が生まれています。

取材ネットワークやコンテンツDBなどのリソースを持つ新聞社やテレビ、テクノロジーや表現手法に長けた新興メディアや組織などが協力して、新たな報道を生む流れはさらに広がっていくでしょう。

#いまスポーツにできること

スポーツ界では「#いまスポーツにできること」のように、アスリートたちが自主的に動画でメッセージを発信するような動きがあります。

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コロナによる緊急事態宣言の真っ只中に「コトバのチカラ」を開設することについて、為末大さんに相談したときに、こう言われました。

「どんなときでも、『こんなときにスポーツか』ではなくて、『こんなときこそスポーツを』という声は出てくる」

今は集まってスポーツを実際に楽しんだり、応援したりすることはできなくても、スポーツの魅力や素晴らしさが減るわけではありません。

アスリートのコトバに支えられ、応援の気持ちをシェアし、そのプレーに再び歓声を上げる日が来るのを楽しみにしています!

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