BL短歌20首連作『ノーカウント』※コメント欄をご覧いただけると幸いです。
殴り合いみたいなキスをしたこともカウントせずに始発で海へ
遠くから大声すぎる鼻歌が近づいてきて絶対おまえ
つなげない手と手の磁場がふるえては上腕筋を太らせていく
新宿で割りばし挿した赤肉のメロン食っても絵になりやがる
くちびるがかたいことには慣れないと言いかけたときまたふさがれる
ずるいよと泣かれることを手がかりにずるいとこだけさわっていこう
才能が自分でこわくなるくらい初めてなのに楽々できた
性欲のちからで俺をゆるしたら日が沈むまで眠り続けろ
大切なおまえをだめにするために力のかぎりのぼる階段
「近づくな」近づいていく「もう帰れ」もう帰らない「笑うな」笑う
捨て猫を右手左手計二匹持ってくるなよ傘もささずに
でこぼこが合わない夜も重なって転がりながら雨音の下
指先で愛し始めたはずなのに全体重をかけてしまった
メロディにならないような起伏でも痛みでわかる輪郭がある
殺したい気持ちでついに引き裂いて奥まであてている月明かり
夢をみたこどものように真夜中にさけんで起きる三白眼よ
ふみにじり用の心を見せられて乾かす前にまた着せていく
「卑怯者!」それが最後に濾過されてリフレインしている「卑怯者!」
「この続き? 金くれるならな」背をまるめドア蹴りあけていってそれきり
「卑怯者!」ふたたびいつか言われたい「卑怯者!」ただひとりのやつに
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