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今日もまたあの頃に戻りたいと思う きっと「あの頃」も同じ気持ちだっただろう 誰にも見えない自分の心の中なのに どうして他人の勝手な言葉の方を信じたのか 途切れない後悔が影を伝って足に絡む 振り返ってばかりだから真っすぐ歩けない 靴の中に入った失敗という小石が痛い そればかりが気になって思い切り走れない 変わらないものなど何もない その事だけが変わらない世界で 何事にも決してこだわらない その事だけにこだわって生きたい
辛く悲しい過去を棄てたり 目を背けたりするのではなく 人々がいま一度心を耕して 実りある豊かな土地にする時代へ 「平」気で嘘をつき回復が「成」功したと 巧みな言葉と「令」色を使い続けて広がる違「和」 誰もが幸せになる日々のために 本当に「改」まるべき「元」凶は誰なのか 明日からは私達が本当に輝く社会を 自らの手で取り戻す戦いの始まり
人々の手に湧く 液体と結晶で煌めく ナルキッソスの泉 水で繋がる向こう側に 今日も偽りを流し続ける 服の柄も文字も 逆に映る鏡面の自分 美しさを求め そして求められ 水の真実を歪めはじめた 自ら強い光を放つ 水面だけを見ていれば 体の後ろに長く伸びる 汚れた影を見なくて済む ひと時でも心が満たされるから 名前も顔も知らない 誰かの過ちは手軽な快楽 水際にいつも張り付き 必死に探しては石を落とし 遠くの泉を波立たせては嘲る 空に心を配れない人は いつの間にか忘れてしまう
今夜も暗い箱の底で音圧に 骨が砕けるまで踏みにじられたい 夢を棄てた人が入れる不思議な場所 無力を思い知らされる明日を 少しでも遅らせるための 享楽という逆回しの竜頭に指をかける 光線に乗り襲ってくる刃のメロディ ゆきずりの人たちとあおるショット 煙草の煙は身をよじる色情のダンサー 形なく流れていくものに埋め尽くされる 誰も過去を尋ねないし未来も語らない 虚像を貫くために真実を失くす事もない 自分の存在が消えていく今だけが 生きていると感じられる極夜がここにある 夢を
冬の硝子 息がかかるたびに 滑らかな琺瑯に 変わるのを見たら 自分が生きているのを 静かに感じられた 凍みるこの世界に 喘鳴を響かせ 身を震わせて走る 歯の根が合わない 老人のような列車が 誰も知らない場所へ 私を運んでいく 昨日聴いて青ざめた 遠い国の戦争の知らせ だのに今日はもう 何処の話だったか まるで思い出せない 伝えたキャスターの 服の色は覚えているのに 水が染みてきた 古い靴のような 捩れる気持ち悪さを 味わいながら ただ部屋で 息をするだけの 暮らしをして
孤独に捩れ鬱血した心を引きずり 湿度の高い洞窟を歩き続ける私に 垂れる鍾乳は無数の舌を出し笑う 薄暗闇に響く足音と救いの叫びは 帰れない焦燥を募らせるばかりだ あと何年歩けば光が見えるだろう ひび割れた精神に絶望が忍び込む 不安で心が擦れても時は変わらず 無表情に秒針を振り世界を動かす 私の前には血を吐き呻く男がいる 後ろには足が縺れそうな女がいる 誰もが見えない出口を探している もしも楽に命の火を消せるのなら 落ちる鍾乳に身を貫かれ死にたい 予期せぬ事で世界を終わら