私のニワトリに青色の羽根はなかった
子供の頃学校で、写生をした記憶がある人は多いと思う。
屋外に出て、思い思いの場所にレジャーシートを敷き周りの風景を描き写していく。
校庭の風景を描くこともあったし、遠足がてら遠くまで出かけて行くこともあった。
絵を描くのは特に大好きというわけではなかったが、それなりに楽しかった。
屋外に出るというだけで特別行事感があったし、やり始めると割と何でも集中する性格なので、飽きて友達とおしゃべりして時間を潰すということもなかった。
そんな写生の一番初めの記憶は小学1年生のとき。
校庭で飼われていたニワトリの絵を描いた。
かなり至近距離まで近づいて描いた覚えがあるので、
この日の為に小屋のニワトリたちを広い場所に放していたに違いない。
動き回るニワトリたちの中から私の選んだのは雌鶏。
ずんぐりむっくりの丸っこい体で、羽の色は濃い茶色だった。
クレヨンでその雌鶏が餌をついばむ姿を描いた。
ほどなくして絵は完成し、先生のところに持って行くと
「上手に描けたね。でもこの辺青っぽい色があったでしょう?
青い色入れてみたら?」
と言われた。
はい、と一応素直に言って元の場所に戻ってもう一度雌鶏を見てみたが
どこにも青色なんて見つからない。
青色が見つからないので、見えるまま茶色でさらに上塗りして
また先生のところに持って行った。
そしたらやっぱり
「青い羽根があったんじゃない?」
と言われた。
でもどう見ても私が描いている雌鶏には青い羽根は生えてない。
先生は雄鶏と間違えているのではないか。
でも既に2度も先生のところへ行き、
2度とも同じ指摘をされてしまった。
どうしたものか。
考えた小学1年生の私は譲歩することにした。
先生が青色入れてほしいんだったら入れとくか。
しっぽの近くにちょっとだけ、青色と緑も入れておいた。
自分の目には映らなかった色だ。
しっぽだけ雄鶏と雌鶏が合体したみたいな絵になった。
それで先生のところに持って行ったら
今度は何も言わずに受け取ってもらえた。
後日、その絵が校内の展覧会で入賞した。
ちょっと複雑だった。
これは私の目で見たニワトリではなく、先生の望みが入ったニワトリなんだけどな。
ー まあいいか。
♢ ♢ ♢
自分を主張せずに、相手の言うことを聞いてその場を収めようとしてしまう癖。
三つ子の魂百までとは良く言ったもので、今でもなかなか変えられないでいる。
でもそろそろ卒業した方が良いような気がしている。
人と衝突するほど我を通す必要はないけれど、譲歩することで本当に主張したかったことが消化不良のまま心の中に残ってしまうこともあるからだ。
自分が折れるのではなく、相手を折れさせるでもなく、もうちょっと上手くやっていけたらなと思う。
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