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生まれて初めてガチの野良猫を保護した話⑩

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病院に行くしかない

保護から、ちょうど2ヶ月。しっぽを病院へ連れて行こうと決めました。

相変わらずしっぽは、食べたり食べなかったり。最初は好き嫌いかとも思いましたが、食事する姿を見ていると、なんだか口の中を痛がるそぶり。

普段から口を、にゃむにゃむとガムを噛むように動かすし、舌で口の周りを頻繁に舐め回します。それになんといっても、きつい口臭。やっぱり炎症がひどいんだ、と思ったのです。

決断するまで、悩みました。猫は、動物病院が大嫌い。行くとなるとどうしても、嫌がるところを押し込み、運び…とんでもないストレスがかかります。せっかく大事に培ってきた関係性も、崩れてしまうかも知れません。

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この2ヶ月、少しでも仲良くなりたくて、いろんなことをしました。

小さなテーブルを買って、しっぽのケージの隣で仕事をしたり、寝袋で、一晩同じ部屋で寝てみたり。その結果やっと、こんな寝姿を見せてくれるようになったのです。なのに。

撫でることも抱くこともできないしっぽは、キャリーケースには入れられません。仕方がないので、段ボールハウスの中で寝ているところを、別のダンボールの板でふさぎました。万が一を考えて、それをさらに大きなネットに入れます。

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どちらかというと私の方に馴れているから、という理由で、こういう一連の作業は、夫が一人でやると言い出しました。二人とも嫌われるより、片方だけでも信頼関係を繋いでおけたらという作戦。暴れるかと思いきや、むしろしっぽは段ボールの中で、気絶してるんじゃと心配になるくらいに、静か。

かくして、2か月ぶりに、しっぽを先生に診てもらいました。

もうだいじょうぶだよ

一日入院して、結局、歯を8本抜きました。やっぱり口の中は相当ひどい状態だったそう。口内炎の完治は難しいかも、との診断でした。どうやらかなり痛みがあり、それであまり食べられなかった様子。

でも、そのことを除けば、体はいたって健康。体重は、2.7キロから3.2キロまで増えていました。白血球はやや多いけれど、それは口内が荒れているせいとのこと。痛み止めと、2週間効き目が続く抗生物質を打ってもらい、シャンプーとブロードラインもしてもらって、帰宅しました。

戻ったしっぽを見たときは、思わず息をのみました。口の端から、帯のように幅が広い、血の混じったなにかがだらんと垂れて、痛々しくぶら下がっているのです。正体はよだれなのですが、なにか別のものに見える粘度と赤さ。見てるだけで泣きたくなってしまいます。

「こちらの気持ちがしっぽにも伝わるから、大丈夫、もう平気だよって気持ちで接してあげて」

えつこさんのアドバイスを思い出しながら、自分に言い聞かせました。猫は、抜歯してもちゃんとごはんが食べられる。しっぽが元気になるための処置をしてもらっただけ。大丈夫。かわいそうじゃない、いいことなんだ。

「しっぽ、おかえり。もうだいじょうぶだよ。あとでごはんたべようね」

声をかけながら何度も思いました。ああこういうとき、体を撫でたり、だっこしたりできたらいいのに! 声をかけるしかできないって、なんてもどかしいんだろう。

顔が変わった

気が立ってるかなと思ったのですが、しっぽは帰ってきてホッとしたのか、怒っているようには見えませんでした。その日は好物のラシャトンを食べさせて、あとはそっとしておきました。

そして、翌朝。明るいところでよく見ると、あれ? なんだかしっぽ、とってもきれい。

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気のせいか、顔つきがちょっとだけ、優しくなった気がする。シャンプーをしたから? それとも、痛み止めが効いてるから? シャーッと威嚇はするけど、いつもより怖くありません。

もしかして、どうかな。無理かな、嫌がるかな、でも挑戦してみたい。できることなら、しっぽを触ってみたい…!

⑪へつづく

我が家の猫たちとのエピソードはこちらに。


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