小枝と雛鳥 其の四
あった。ありましたよ! 県自然環境保護センター。
すぐさま指定の番号に電話をかける。
対応してくださったのは、女性の声。
質問されたとおりに、自宅のある地域と、逸れ雛鳥の様子を伝える。
「怪我をしている様子は、ありますか。羽や脚が折れているとか、どこか、出血しているとか」
「私の見る限りでは、無いと思います」
「木の枝に留まって、じっとしている…」
「はい。体を膨らませて、目を閉じていることもあります。さっき、親鳥らしい鳥が来たときは、伸びあがって啼きましたけれど」
「あっ、近くに親鳥がいるんですね」
俄かに弾む、女性の声。
「はいっ。餌を与えていたようです」
つられて、私も軽快に返答。
「良かった。であれば、食餌も保温も、確保できていますね。
そのまま、様子を見てください。また何か、状況が変わったり、雛の様子に変化があれば、お手数ですが、再度ご連絡頂けますか」
「わかりました。ただ…」
「ただ、何か?」
「天気予報だと、夕方から大雨とか… 風も強くなっていますし」
うろたえる私を、彼女は、毅然として諭す。
「雨が降ったとしても、そのままで」
その途端、ふっ、と、肩の力が抜けた。
自然と向き合うとは、つまり、そういうことなのだ。
せせこましい私のエゴなど、入り込む余地は無い。
私は、対応してくださった女性に、自分の名前と連絡先を伝えると、
丁重に礼を述べ、電話を切った。
つづく