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「下北沢について」 吉本ばなな

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「下北沢について」吉本ばなな

B&Bで分冊で出ていたものを書籍化。

ばななさんと下北沢、街と人を超えた関係をていねいに書き綴った一冊。街があって人がいる。人がいて街が出来上がっていく。街が人の感情に寄り添いエネルギーを与える。与えられたエネルギーはまたそのまま街に還ってくる。下北沢は、街と人の健全な発展の仕方を(現状はかろうじてだけど)続けられている稀有な存在ではないかと思う。

老若男女、国籍を超えて開かれた可能性のある街。それでいて、パワーがあるだけでなく人の気持ちにも寄り添えるゆとりも持ち合わせている街。

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私が下北沢を知り、憧れを持ったのは小学生の時に読んだマンガからだった。

ひうらさとる「レピッシュ」で描かれてたキラキラで奔放な街。下町に住んでいた私から見たら下町のそれとは違う、夢やパワーに満ちた桃源郷のような街に思っていた。

そしてそれは本当だった。

中学生になり、縁あって下北沢の学校のバレーボール・クラブチームに入ることになった。その練習のためほぼ毎日下北沢に通うことになったのだ。

忘れもしない、初めて下北沢の駅で降りたときの事。西口(西口なんてメインではなかったのに)から外に出た瞬間、街から・歩いている人から放たれたキラキラ輝いた根拠のないパワーにやられてしまった。魅了されてしまったのだ。

私も街の一部となり、街も私の一部となった。憧れの街が日常になった瞬間だった。


その日からずぅっと私の一部となり日常となっている。


私もばななさんのように、この街のいろんなところに思い出が転がっている。良いことも、悪いことも、楽しいことも、悔しいことも。

今はもうないけど、悪童処にバレーボールの練習帰りに先生に見つからないようにこっそり夜チームメイトと寄り道したり(バレないように回り道して帰ったらなぜか梅ヶ丘まで歩いてた)、サンデーブランチではその昔友人がアルバイトしていてしょっちゅう入り浸っていたり、シェルターで大好きなバンドの出待ちしてみたり、私がアルバイトしていた沖縄料理店に毎晩のように先輩が冷やかし半分心配半分で見にきてくれたり、ライブで思い切りダメ出しされたり、当時先輩が店長だった駅前のスタジオで毎週バンド練習や個人練習していたり、道端でメンバーとケンカしたり、友人たちとばかさわぎしたり、せっちゃんで朝を迎えたり…書き出したらキリがない。

これからもこの街のここそこに思い出が刻まれていくのだろうな。

良いことも、悪いことも、楽しいことも、悔しいことも。

曲がり角に、道端に、お店の軒先に。


ちなみに下北沢といえば映画「ざわざわ下北沢」もおさえておきたい作品です。市川準監督、佐藤信介脚本。出演は下北沢に縁の深い俳優さんがチョイ役でどんどん出てくる群像劇。残念ながらDVDではなくVHSのみ。



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