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CO2センサーで実家の親を見守っている話
明日から技書博11が始まります。私は参加できませんが、さまざまな同人誌に出会えるイベントですので、ぜひ参加してみてください。
その直前ということで、前回の技書博10で私が配布したフリーペーパーの内容を公開します。
最近は「IoT」という言葉が一般の人にも知られるようになり、安価なIoT機器も増えています。家庭でも手軽に導入できて便利な世の中になりましたが、実家の親を見守るためにCO2センサーを導入したときに検討したことなどを紹介します。
避けられない介護
若いITエンジニアにとっては、高齢者の介護についてあまり意識することがないかもしれません。しかし、日本は高齢化社会から高齢社会になり、高齢者の割合が急増しています。
そして、長寿国でもあり、100歳といった長生きの人も珍しくなくなってきました。加えて、少子化や核家族化が進み、周囲の人のサポートを受けることも難しくなることが想定されています。
当然、自分の親の介護の問題などは避けられません。私もその1人で、高齢の親が1人暮らしをしています。私は東京に住んでいて、実家は関西という状況です。頻繁に実家に帰省することが難しい中、どうやって親の状況を把握するのか、という問題があります。
そんな中ですぐに駆けつけることは不可能でも、孤独死のような状況の発生を防ぐことを考えます。たとえば、次のような事態が起きたとき、どのようにすれば気づけるでしょうか。
・自宅がわからなくなり、帰れなくなっていたら?
・自宅で倒れていたら?
・外出先で倒れていたら?
案1)LINEでやり取りする
すぐに思いつくのは、LINEやメールを使ったメッセージのやり取りです。普段からやり取りしておけば、体調などを聞き出すこともできるでしょう。前ページで書いたような事態が起きたとしても、LINEであれば相手がメッセージ開いた時点で既読のマークがつくため、最低限の把握はできます。
一方で、毎日のようにメッセージを送信するのは双方にとって負担があると言えます。メッセージが大変ならスタンプだけを送る方法もありますが、送信するだけでは意味がなく、相手が開いたかどうかを待つ必要があります。
案2)Webカメラで監視する
より確実な方法として、Webカメラの導入があります。最近は安価なWebカメラが登場しており、自宅にいるペットの状況を外出先から見るために導入している人もいます。インターネットの回線速度も高速化しており、Webカメラでも解像度の高い映像を見られるようになりました。
この映像を確認すれば、家の中にいるのかどうかは明らかにわかりますし、家の中で倒れていたとしてもそれを映像で確認できます。しかし、いくら仲の良い家族であっても、24時間の行動をカメラで他人に見られるのは抵抗があります。
案3)電球の点灯で把握する
他の方法として、何らかのセンサーを使って収集し、異常があったときに通知することを考えます。たとえば、電球が付いたかどうかを調べる具体的な商品として、「HelloLight」があります。これは、電球内にSIMが搭載されており、点灯しっぱなしの状態が続いたり、数日間点灯しなかったりした場合に、あらかじめ登録された連絡先に発信する仕組みです。
たとえばトイレに設置しておくと、点灯しっぱなしではトイレの中で倒れている可能性がありますし、数日間点灯しないことは考えられません。また、玄関などに設置しておくと、外出の有無を確認できます。
これはLPWA(Low Power Wide Area)という技術で、安価なSIMで実現されています。安価とはいえSIMによる通信が発生するため、月額の費用がかかります。
案4)高齢者見守りサービスを使う
最近では、多くの会社が高齢者を見守るサービスを提供しています。たとえば、警備会社が実施しているサービスのほか、食事を配達しながら安否確認を行うサービス、上述の「HelloLight」を使ったクロネコヤマトのサービスもあります。
これらは何かあったら警備員などの「人」が駆けつけてくれる、というメリットはありますが、人が関わるためどうしても費用が高くなってしまいます。
最近では、使わなくなったタブレット端末などを設置して、外出時や帰宅時にボタンを押すことでメールを送信するようなシステムや、自動音声によって定期的に電話をかけるなどの方法を使って、安価に利用できる見守りサービスも登場していますが、それなりに費用がかかりますし、親の操作が必要なのもネックです。
案5)CO2センサーを使う
上記の案を検討して導入したのが「CO2センサー」です。CO2センサーはコロナ禍において換気状態を確認するために注目され、多くの飲食店などで導入されました。空気中の二酸化炭素(CO2)の濃度を測定するセンサーで、数値として表示するものが一般的です。
大気中におけるCO2の濃度は約0.04%であり、これを400ppmと表現します。屋外のCO2濃度は一般に400ppm程度ですが、部屋の窓を閉め切っていると、人間の呼吸によってCO2濃度が少しずつ高まっていき、一般的には、1000ppmを超えると換気をしたほうがよいとされています。このCO2センサーを実家に設置すれば、親が問題なく生活していることを判断できます。
たとえば、次の図はある1日における実家のCO2濃度の変化です。これを見ると、朝の11時頃に数値が下がっていることがわかります。買い物などで短時間の外出をしたのでしょうか。
![](https://assets.st-note.com/img/1737723532-kiUWBnltzLMEAXNbhfm0wYeR.jpg)
リビングに設置しているので、一人暮らしの親であれば、トイレなどで倒れていると数時間でCO2濃度は低下します。また、外出先で倒れていたり、自宅がわからなくなったりすると、CO2濃度がずっと400ppmの近くで落ち着くため、自宅に戻っていないことがわかります。
費用負担や人の負担だけでなくプライバシーを考える
月額の負担をできるだけ減らしつつ通信するために、SIMではなく自宅で使っているインターネット回線を使うといった費用面に加え、人の手を借りることなく、親の情報を取得することを考えました。さらに、親が何も操作しなくてよく、私もアプリを開くだけでよいこともポイントです。
加えて、プライバシーを考慮し、Webカメラなどを導入するのではなく、数値だけで状況をある程度把握できるようにしました。もちろん、親が自宅で倒れていたとしても、すぐに対応できるわけではありません。旅行している可能性もあるので、夜になってもCO2濃度が上がらないときにはLINEで連絡するといった対応しかできません。それでも、孤独死を防ぐという意味で、最低でも翌日には異変に気づけるようになったと感じています。
親の意向を取り入れつつ、それぞれの家庭にあった対応が求められています。今後も便利な技術がさまざま登場すると思いますが、どのような方法が使えるのか、ITエンジニアとしての知識などを生かしたアイデアを、ぜひ教えてください。