〜謎の皮膚病、あるいはお医者さんという人たち〜② 医者は現代でも人格者か?

 そもそもの始まりは6年前の11月に首元の中央部に直径3センチほどの赤みが出たことだった。特に苦痛でもないので乾燥肌の薬やニベアみたいなのを薬局で相談して処方されたままテキトーにしておいたら、これが2月に入って背中じゅうに出て、私は悶絶した。速攻時々お世話になる皮膚科に駆け付けたが、そこには私が信頼する医師は既にいなかった。詳しいことはわからない。どうやら医院ごと新しい医師に売ってしまって引退したようだ。
 その新しい医師はあらゆる処方を試みた。通常のステロイド軟膏が効果を発揮しないと見るや、カビを撃退する軟膏、硫黄泉の上澄み液、謎の漢方薬のようなものまで出してきた。しかし、病状は一向に改善しないどころか、むしろ次第に悪化していった。
 一般に医師は治らない場合のセカンドオピニョンを毛嫌いする。だがもうそんなことに配慮している暇はないから、別の皮膚科を訪ねたら、治療法は間違っていないからと言われて、全く同じ薬を出された。
 いよいよ私は友人から紹介された大病院の皮膚科を申し込んだ。その先生は私の背中を見るや、こう言った。
「これは本当に辛かったでしょう。でももう安心ですよ。二週間分のお薬を出しますからこれで治ります。もっとも2週間と経たず治癒していますからまたここに来ることはないはずです」
 その時、私は涙を流していた。その寸前であった。なんという慈愛と確信に満ちた言葉なのか!医者はこうであるべきだ。医師は経験と根拠に根差してまず患者を安心立命の境地に誘うことが使命だ。
 んで、2週間後もっと悪化したんだよね。担当医師は私の発疹をえぐって恐らくは電子顕微鏡で改めて調べてみたが、特別な微生物が潜んでいる可能性はないと言うに留めた。そしてこう言った。
「当院の重鎮を紹介します。彼の経験なら正体が判明するはずです」
 おい!そこまで皮膚というのは訳わかんねーのかよ!重鎮ってその人、俺に何か変なことしないのか。

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