アスリートのセカンドキャリア問題について考えてみた
Bリーグのシーズンが開幕して1ヶ月。
ブレックスは9勝1敗と好調なスタートを切り、ひと安心したところでバイウィークに。東地区は予想通りの大激戦。これはマジで得失点差でCS決まるんじゃないか、とか思いながらホームページを見ていたら、お知らせの中でこんな記事を見つけた。
アスリートのセカンドキャリアを支援する新会社、株式会社ブレックス・アスリートキャリア・マネジメント設立のお知らせ
2020年2月のニュースなのだけど、ブレックスが、アスリートのセカンドキャリアを支援する新会社「株式会社ブレックス・アスリートキャリア・マネジメント」を立ち上げる、とのこと。
「これ、めっちゃ大事やん。」と思ったので、今日はアスリートのキャリア(特にセカンドキャリア)について書いてみようと思う。
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私は学生のキャリア支援の仕事をしていた経験もあるせいか、どんな人であれ、その人の働き方や仕事、キャリアデザインにはついつい興味を持ってしまう。
その中でも定期的に自分の中で問題意識が上がってくるのが「アスリートのセカンドキャリア問題」。
最初に知ったのは、戦力外通告を受けた元プロ野球選手達のその後を追ったテレビ番組だったと思う。
地元でどれだけ野球がうまくても、甲子園で活躍できたとしても、それでも、その先のプロの道は細く険しい。今年ドラフトで指名を受けた選手のうち、引退試合・引退セレモニーをしてもらえるほどの活躍を続け、また長く現役でいられる選手はいったいどのくらいいるのだろう。
また、仮に長く現役でいられたとしても、(鉄人超人の山本昌選手は例外として)せいぜい40歳程度。サッカーであればもっと若く、バスケットボールも30代のうちに現役を終える選手がほとんどではないだろうか。
少し前に、Jリーガーのセカンドキャリアについて取り上げた本を読んだ。第一線でスポットライトを浴び華々しい活躍ができる選手はほんの一握りで、J3も含めれば現役ですらサッカーだけでは食べていけない選手もいる現実。引退したら、一体どうやって食べていけばいいのか。
アスリートのその後としてイメージしやすいのは指導者と解説だけど、その椅子の数なんて限られているから、やっぱりそこに座れるのは一握りの人達だ。
子どもの頃からプロを目指して一生懸命スポーツに打ち込んできたアスリート達。勉強だけではなく、友達付き合いや恋愛や趣味など、同年代が普通に過ごしてきたような「青春」を犠牲にしてきた人達。
そんな人達が一生懸命追いかけた夢を実現した後、アスリートとしてのステージから降りた後の道がないなんて悲しすぎる。その後の人生の方がずっとずっと長いのに。
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ずっとスポーツをやってきた人が、いきなりサラリーマンをやるのは難しいかもしれない。営業をやった経験もなければ、Excelを触ったこともないかもしれない。
でも、人並みはずれた体力や精神力、目標達成に向けた執着心、仲間との絆やチームワークを大事にする姿勢など、実はビジネスにも活かせる能力ってたくさんあるんじゃないかと思う。
あと、スポーツなど何か一つのことに長く打ち込んできた人に共通するのは「メタ認知」できる力。前職でよく学生と面談していたので気付いたのだけど、高校まで部活もしくは何かしらの競技等に(真剣に)取り組んでいた学生の多くは「自分のことをよく理解している」「自分の考えていることをきちんと言語化できる」といった特長を持っていた。
どんな競技であれ、全国大会で優勝する、もしくは100mをXX秒で走る、のような目標があって、それに向けて毎日練習して、何が足りないのかを振り返って、また次の日練習して、そして試合があって、その結果を受けてまた次…と、要はこれってPDCAを回しているのと同じこと。これをやったことがあるのとないのって、ビジネスの現場に出るうえでものすごく大きな違いを生むと思う。
※だから、企業が体育会系人材を欲しがる理由も一定理解できる。単に上下関係に慣れているとか、上の言うことに基本的に従うから、という企業側中心の都合であることもあるので何とも言えないけど…。
先のブレックスのニュースにも、このように書かれていた。
株式会社栃木ブレックスは「宇都宮ブレックス」の経営を通じて、アスリートが持つ能力の高さを日々実感しており、その高い能力がビジネスの世界でも通用すると確信しております。
アスリートが現役競技生活を終えた後、それまで培ってきた「目標を掲げてそれに向けて自ら行動する力」、「失敗してもそれを乗り越えるために努力する力」、「チームメイトと結果を出すために協力する力」等を活かしてビジネスの世界で活躍してもらいたいという想いで、今回の新会社設立となりました。
ビジネスマナーや基本的な知識は足りていないことが多いかもしれないから、新卒と同じような研修、トレーニングは必要だと思う。そして、就活のしかたも分からないだろうから、それぞれの特性に合った仕事、企業を紹介するようなマッチングの仕組みも必要。
でも、トレーニングとマッチングを行う仕組みさえ整えれば、第二の人生も輝かしいものにできるんじゃないだろうか。企業はいま基本的に人材不足で困っているわけだし。
ステージの真ん中でスポットライトを浴びていた人達が、そこから降りた後の人生ってなかなか注目されづらいけど、セカンドキャリアが充実してこそ、子どもたちも夢のある職業としてプロアスリートを目指せるんじゃないかな。
株式会社ブレックス・アスリートキャリア・マネジメントの動きに、今後も注目していきたいと思う。
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この記事を書くにあたって、アスリートのセカンドキャリアについて調べていたらいくつかの活動を見つけた。同じように問題意識を感じ、動いている人達は他にもいるようだ。