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ショパンが借金してまで行ったマジョルカ島は悪魔崇拝フェニキア人の島?平野啓一郎の『葬送』を読む。
★平野啓一郎の『葬送』を読む
平野啓一郎の『葬送』という小説を読む。
音楽家・ショパンを描いた物語。
内容は、ショパンとジョルジュ・サンド、その友人の画家ドラクロワを中心に、1846年の2月革命前夜のヨーロッパ社会を描いてます。
上下巻で1200ページに及ぶ、2005年に発刊された長編小説です。
平野啓一郎氏の文章は、難しいというイメージで敬遠していましたが、僕が間違っていました。描写がとても細かいが、一度慣れてしまえば、当時の空気感がビシビシと感じられ、タイムスリップしたかのような気にさせてくれる。
平野氏はこの小説のために、膨大な資料とともに現地フランスでも取材したのだそうです。
古典となるべき素晴らしい小説だと僕は思っています。
ただ読んでいて困ったのは、ショパンゆかりの場所や音楽がたくさん出てくるので、ついつい調べてしまい、読み進めたいのに進まないのがもどかしい。
なかでも気になったのは、序盤に、ショパンが借金をしてまで行った島「マジョルカ島」です。
第1部の冒頭で、ショパンが、楽譜の権利を売ったり高利貸からお金を借りたりして、静養のため、サンド夫人とマジョルカ島に行くというエピソードが綴られています。
★ショパンが借金までして行った「マジョルカ島」ってどんな島?
パリから馬車で4日間かけて、南フランスのペルピニャンに行き、サンド夫人と合流して、スペイン・バルセロナから船で渡ったマジョルカ島。
ショパンにとって、これだけの労力をかけてまで行きたい場所だったらしい、マジョルカ島。
さぞかし素晴らしい所なんだろうなと妄想が膨らみます。
島ですから、とうぜん海に囲まれている美しいビーチを思い浮かびます。
コートに身を包み、いつも寒そうにしているイメージのショパンも、ビーチで日光浴したり、泳いだりしたのかな?
日焼けたショパンが、碧い海の中で平泳ぎしてところを妄想してしまいました。
当時ショパンは結核を患っていて、その時期は悪化していたということから、マジョルカ島への静養は医者のすすめだったようです。
僕は、読み進めたい欲求を抑えてマジョルカ島を調べてみた。
さっそくグーグルマップで探してみます。
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次にウィキペディアを調べてみました。
日本語表記では、マヨルカ、マリョルカ、マジョルカなど表記される。一般的には、マヨルカ島というらしい。
スペインのバレアレス諸島州で、マジョルカ島のパルマが州都ということです。
★悪魔崇拝フェニキア人が住み着いた「マジョルカ島」
この「マジョルカ島」にはじめて住み着いたのがフェニキア人。紀元前8世紀ごろのことです。
この民族は、紀元前1500年ごろ、地中海東海岸を支配していた民族で、貿易で発展してきた通商国家だった。
なんと!アルファベットを伝えたのもフェニキア人だそうです。
このフェニキア人は、バアルの神を信仰していたというのが興味深い。
バアル神は、商業の神だが、これが悪い商業の神だと言われてます。この信仰では、繁栄を約束する代わりに、幼児の生贄や、神官との売春を要求する悪魔だったというのです。
旧約聖書の中にも、預言者エリアとバアルの神官達がカルメル山で戦う場面があります。預言者エリアが神に祈ると、天から火の玉が降ってきて、バアルの神官達は全滅する話があったとことを思い出しました。
そんなバアル信仰を持っていたフェニキア人が、マジョルカ島に住み着いたようです。
「フェニキア人ー古代海洋民族の謎」など、本もあるので、読んでみようかと思いました。
★「雨だれ」はこの「マジョルカ島」で作曲される
この島は、気候がとてもいいようです。
平地では、年間300日以上が好天日で、古くから「地中海の楽園」と呼ばれていました。
気候がショパンの体調に良い影響を与えたのか、このマジョルカ島で「雨だれ」を完成させたり、「バラード第2番」「2つのポロネーゼ」「スケルツォ第3番」の作曲をはじめたりしています。
この島は、創作環境としてはとても適していたのでしょうね。
「雨だれ」がマジョルカ島で作曲されたことを知って、ショパンを題材にした古い映画の一場面を思い出しました。
たしか外では雨が降っていて、サンド夫人が帰宅すると、室内から「雨だれ」のメロディが聴こえてくるシーンです。
「楽聖ショパン」1945年のモノクロ映画がだと思います。この映画では、マジョルカ島でのサンド夫人との生活が描かれていたと思います。
ショパンをテーマにした映画は、このほかにも「即興曲/愛欲の旋律」(1991)「ショパン愛と悲しみの旋律」(2002)などありますが、まだまだ名作と言われるものがありません。
ぜひ平野啓一郎さんの「葬送」を映画化して欲しいものです。
今回は「葬送」の読書開始40ページで、マジョルカ島が気になってしまいました。
そこで、小説をわ読むのは一旦中断しましたが、僕には新たな夢ができました。
マジョルカ島に行って、「雨だれ」をはじめ、ショパンがこの島で作った曲を聴いてみたい。
合わせて、サンド夫人がマジョルカ島での経験を小説にした「マヨルカの冬」もプールサイドで読んでみたい。
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さあ、再開です。
「葬送」を読み進めたところ、2ページ進んだところで、テノール歌手のアドルフ・ヌリの葬儀で、ショパンがシューベルトの「ディ・ゲスティルネ」を弾いたとあります。どんな曲なんだろう。気になって検索しても出てこない。
こんな読み方をしていたら、読み終えるのに何年もかかってしまいますね。
平野啓一郎著『葬送』おすすめです。
「雨だれ」Prelude Op.28 No.15