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還暦前にプレイボーイ、デビュー?──ビットコインETFが承認された意味合いは?

1月29日発売の「週刊プレイボーイ」(2024年2月02日号)にビットコインをテーマにした記事があり、取材に答えました。記事はこれです。

いくつかの質問にメールで答えましたが、紙面に掲載されたのは、もちろん一部。せっかくなので(もったいないのでw)、1つめの質問、アメリカでのビットコインETF承認の意味合いは? に対する回答を4年ぶりのnoteに掲載してみます。

最も大きな意味合いは、ビットコインが「米規制当局(SEC)によって認められた金融商品」になったことだと思います。すでにカナダやヨーロッパでは、ビットコインETFが存在していましたが、ビットコインETFによって、世界最大の金融市場であるアメリカで、ビットコインに投資するための「規制を受けた金融商品」が登場しました。

これまで、ビットコインに投資する場合には、暗号資産取引所、例えばアメリカではコインベース(Coinbase)などに口座を開設し、銀行口座からお金(ドル)を入金し、ビットコインを購入するという手間がかかりました。口座開設の際には、本人確認のプロセスも必要でした。アメリカでは、スマホの株取引アプリ「ロビンフッド」などでもビットコイン投資ができますが、スマホユーザーはどうしても若年層に偏ります。

一方で、ビットコインETFなら、証券会社を経由して売買できます。よく言われるように日本では個人や家計の資産は現預金が大きな割合を占めていますが、アメリカでは株式や投資信託が大きな部分を占めています。ビットコインETFは、ビットコインに投資するETFです。アメリカ人にとっては、馴染みの深い投資信託の新しい商品のひとつとして、ビットコインETFが登場したということになります。

ちなみに、ETFとは「取引所に上場している投資信託」、投資信託とは、投資信託協会の定義によると「投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品」です。
さらに日興アセットマネジメントの解説ページを見ると、「投資信託は、1日1回算出される基準価額で、1日1回しか取引できませんが、ETFは、投資家の判断で、金融商品取引所の取引時間内に、株式と同様に相場の動きを見ながら売り買いができる」とあります。

簡単に言えば、ビットコイン投資に規制当局がお墨付きを与え、より投資しやすくしたものがビットコインETFです。

ただし、お墨付きといっても、当局はビットコイン投資を推奨しているわけではありません。金融商品として認めただけで、SECのゲンスラー委員長の承認声明(CoinDesk JAPANに全文訳を掲載しています)を読むと「本当は認めたくないけど、裁判に負けたから仕方ない」というようなニュアンスを感じます(こちらの受け取り方かもしれませんが)。

還暦前にプレイボーイ、デビューw

上記は、主に一般投資家を意識したビットコインETFの意味合いでしたが、企業・組織にとっては、投資側、提供側で2つの意味合いがあります。

まず、投資側からの目線ですが、顧客の資金を預かり運用している生命保険や年金基金などのいわゆる「機関投資家」の多くは、これまでビットコインに投資したくても、安全性などの観点から投資できない現実がありました。
それがビットコインETFが登場したことによって、従来取引のある資産運用会社や証券会社を通じて、ビットコインETFを購入できるようになりました。生命保険会社や年金基金は、株式や投資信託などに投資して、利回りを獲得していましたが、ビットコインETFを使って、ビットコインに投資することが可能になったわけです。

株式や投資信託、あるいは債券に投資できればそれで十分なのではないか、との疑問も浮かびますが、多額の資金を扱うファンド・マネージャーにとっては、リスクを分散しつつ、利回りを得るためには、株式とも債券とも違うビットコインは魅力的な存在です。それにビットコインは長期的に見ると、右肩上がりで成長しています。巨額の運用資産の一部をビットコインETFに投資しておくことは、意味のあることなのです。

もちろん、大手資産運用会社の中には、ビットコインETFを顧客に提供しない方針を打ち出しているところもあります。ブラックロックに次いで運用残高が世界第2位の資産運用会社バンガードは、ビットコインETFは「バランスの取れた長期投資ポートフォリオを構築できる」ことを重視する同社の方針と合致しないとしています。

とはいえ、大勢としては、世界最大の資産運用会社であるブラックロックやフィデリティなどの金融大手がビットコインETFを手がけています。ビットコインETFへの投資は、徐々に一般的なものになっていくでしょう。

現在、世界の株式市場の時価総額は100兆ドルを超えています。一方、暗号資産市場の時価総額は約1.6兆ドルに過ぎません。つまり、株式市場に投下されている投資マネーのわずか1.6%が暗号資産市場に向かうだけで、暗号資産市場の時価総額は2倍になってしまいます。多額の投資マネーが投下されれば、つまり市場は活況になり、ビットコインをはじめとする暗号資産の価格は上昇すると期待されています。

少し話が逸れましたが、提供側である金融機関にとっては、文字通り、顧客に提供できる有力な投資商品が増えることを意味します。株式や債券は、伝統的資産と呼ばれますが、それ以外への投資は「オルタナティブ投資」と言われます。不動産や金(ゴールド)などがオルタナティブ投資の代表例ですが、オルタナティブ投資は、より専門的で、これまで特に一般投資家にとっては手が出せない分野でした。

それが不動産であればREIT、金であれば金ETFが登場して、よりアクセスしやすい投資商品になってきた歴史があります。ビットコインもオルタナティブ投資のひとつであり、ビットコインETFが登場したことで、よりアクセスしやすくなったと言えます。

ちなみに日本では、暗号資産と同じブロックチェーン技術を活用したセキュリティ・トークン(デジタル証券)、特に不動産を対象としたセキュリティ・トークンが人気を集めています。

投資家にとっては、新しい投資商品の登場であり、金融機関にとっては、株式、債券に続く「第3の投資」と言われるオルタナティブ投資の推進につながっています。

「紙」の仕事は、15年、下手すると20年ぶりくらい。赤入れで校正をやり取りするのは、久々で刺激的でした。週刊誌の仕事は大変だなぁw


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