戦争
「人を死に追い込む。例えば、爆弾を落とす」
すなわち、空襲。それを望む人って、ほとんどいない。間違っている。誤ち。大罪。
「じゃあ、復讐のために人をあの世へ送ったら?」
それは賛否両論かもしれない。殺人はいけないと言う人と、正当な行為だと言う人。
「先に攻めた国がA、攻められた国がB。じゃあ、BがAに空襲するのは、正義?」
多分、それでAの国民の誰かしらの命が消える。老婆か、軍人か、子供か、誰か。
「八十年くらい前にアメリカが日本にしたことは、正義?」
日本人なら、大体は「まさか、それはない」と言うべきか。しかし、太平洋戦争を仕掛けたのは日本だったか。だが、すべて日本が悪いのか? 僕にはわからない。
「まあ、昔のことだけどさ。でも、今の世の中って結構荒れているじゃん。実際、別の国では戦争が起きているわけで。どっちが正しいとか、正義だとか、そんなこと関係なしに、誰かは死んでいる」
動けるはずの心臓が止まる。一撃で、生命は終わりを迎える。呆気なく、余韻もなく、終幕する。
「常々、ラブアンドピースの精神は大事だと思うよ。まあ、それを願うのは平凡な民衆くらいだろうけど」
残念ながら、戦争で金儲けする人間もいるだろう。戦争特需。戦争ビジネス。からの復興ビジネス。
「いっそ巨大な隕石でも降ってきて人間が消滅したら、ラブアンドピースになるかもね」
ただ人間がいない限り、彼の言う「ラブアンドピース」の概念そのものが失われる。戦争と平和の境すらなくなる。それが正義かと問われると、人間である僕は首を縦に振ることができない。
「とりあえず無関心でいることは止めた方がいいよな。俺はそれも罪だって思うよ」
その通り。無知は罪。知ろうとしない心は、より深い罪。
「生きている俺たちは、知るべきことを知る。そして動く。残念ながら暴力でしか解決できない問題もある世の中だけどな」
決して、暴力を正当化してはならない。ただ、守るべきものがあるとして、僕はどうやって守るだろうか。
「まあ、日本酒飲みながら寿司でも食っていられる世の中だったらいいよなあ。ずっとね」
永遠なんてないだろうけど、永遠を求める。後世にまで期待する。だからせめて、僕はやるべきことをやる。
「僕はこの世における正解も、正義も知らない。ただ、僕にはやるべきことがあるんだ。たとえ死んでも、構わない」
戦争を食い止めることは正義だろうか。戦争を仕掛けようとする人間に武器を向けることは、正義だろうか?
「多分、お前のやるべきことは正義じゃないし、正解ではないね。ただ、俺には止めようがない。好きにすればいい。なんせこの世は自由に満ちている。いや、自由であるべきだって俺は思うから」
おそらく僕らの正義は、正解は、自由であること。だとしたら、それを拒むものを見逃すことはできない。
「しかし、ペンで戦おうとするお前の精神、面白いよな」
何で戦うのか、それすらも自由。
「ペンは剣よりも強いらしいからね」
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