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夜行。


 あなたは夜に何をする?

 私は出かける。私の知らない場所まで。

 遠くで波の音が聞こえる。何を掻っ攫うつもり? 冬の沁みる風が吹き荒れて、私は乱れた髪を直す。

 濡れた砂浜。小さな貝殻。割れたガラス。

 とあるドライバーが言っていた。

「大体のことは時間が解決してくれる」と。

 ならば、私は未来に期待してもいいですか?

 作曲家だってしみじみと言うんだ。

「お前は良いやつだ」と。

 こんなに屈折した男が、良いと。

 ポケモンで遊ぶ少年は、こんな男を忌み嫌うかもしれない。しかしお前はやがて私みたいになる運命である。孤独になりたくないくせに、社会に交わろうとしない偏屈者に。

 星の降るような夜。私はきめ細やかな砂の上を散歩する。誰もいない地上を歩く気分は、うら寂しい。私はどこかで誰かを求めている。だが、それはいつだって決まった人で、それ以外は払いのける。いちげんさんお断り。

 おまけに、私が好まない人間とは相手が気づかないうちに距離を離しておく。いざというときのために非常用出口を用意しておく、全くもってひどい人間である。しかしそうするしか生きる方法がない弱虫を、神は、仏は、ご先祖様は認めてくれるでしょうか。

 帰りにコロッケを買って食べる。たった130円ほどで食べられるこのホクホクした揚げ物に対して、私は畏敬の念を抱くほとだ。そして思うことがある。

 今度は親しい誰かと来よう。

 価値観がぶつかり合い、分断が進むこの世。そこに立つ私もまた、自分の価値観に合う人間としか交わらない。ただ、それは決して悪いことではないと最近は思う。もはや価値観の異なる人間と交わる元気など残っていない。今を生きることに精一杯なのだから、せめて自分に救いを与えてくれる存在を大事にする。それでいいじゃないか。迷うな。迷わず愛せる仲間を守れ。

 夜行。私は独り夜の街に飛び出ることで自分を整える。そしてまた明日、私という存在を追い続ける。

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