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和牛テイスティングのすすめ

ワインにテイスティングがあるように、和牛でやってもおもしろいかもしれない。これが和牛テイスティング会を開催したきっかけです。

これまで2回開催し、大好評でした。
何をテイスティングするのかについては、大きく2つ考え方があります。
生産者による違いか、部位による違いかです。
これらの食べ比べにより、自分好みのお肉というのが分かってくるようになります。

生産者による違い

異なる生産者の和牛の同じ部位(例えばヒレ)を食べ比べて違いを確かめます。
当然ですが、生産者によって、肥育環境やエサ、肥育期間が異なるので、そこで差が出てきます。実際、食べ比べれば違いは不思議と分かるものです。
いい水とこだわりの発酵飼料、稲わらの質やカット方法などによって、肉質が変わってきます。いいものを使えば使うほどコストが上がります。
また、肥育期間が長いほどうまみが増すと言われています(たとえば28か月よりも32か月など)。その分、エサ代もかかります。
どこまでこだわりを通すかというのが生産者が一番悩むところです。

部位による違い


同じ生産者の同一和牛の部位ごとの違いを食べ比べます。
部位によって、サシ(脂)の入り方や赤身のうまみが違ってきます。
サシの細さ、多さというのも食べた時の柔らかさや脂どけに大きな影響を与えます。
A5のサシの多いものは、脂比率が50%近いものもあります。
これを焼くと、次から次へと脂が出てきて、鉄板が脂の海になり揚げ物状態になりますので、頻繁に脂を取り除いていく必要があります。
いい赤身は、赤身の中にきれいにサシが入っており、それが食べた時に溶けて赤身のうまみととともに、適度な柔らかさを与えます。
うまみは、赤身だけの時よりも適度な脂があった方が、赤身のうまみが脂に移り、それが和牛香として甘い香りが口中に広がり、よりおいしくなります。
下の写真は、左からリブロース、内もも、ヒレ、奥にある茶色いのは内モモをローストビーフにしたものです。

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これを次のように焼いていきます。
両面や横など表面をカリッと焼いて、しばらく温度の低いところで休ませます。
休ませるというのは、2つの意味があります。
表面の熱が内部に浸透するまで待つことと、内部の水分が表面まで伝わるまで待つことです。
それによって、余計なドリップが出ず、うまみが閉じ込められた状態になります。
休ませる時間は、肉の厚みなど状況次第という面もあり、諸説あります。肉に膨らみが出て来たころが熱と水分が回った証のため、ちょうどいいという意見もあります。

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味付け

肉本来の味を確かめたいのであれば、味付けは塩のみです。
塩分濃度は、1%ほどです。100gのお肉だと、1gくらいです。
人間の血中塩分濃度は0.8%と言われています。
それと同じくらいだと、ギリギリ塩加減を感じられるくらいになります。
ちなみに、海水の塩分濃度は大体3%です。

和牛の場合、胡椒は使わなくても十分おいしいですし、臭みもないです。
冷蔵庫がない大航海時代のヨーロッパで、臭みのある肉をおいしく食べるために胡椒が普及しました。
いまは、冷凍・冷蔵技術が進化していますので、ちょうどいい食べごろのものが食べられます。なので塩だけで十分おいしいですし、その方が味の違いが分かります。
ただし、塩にはミネラルなどいろいろな成分が含まれているので、塩にこだわるシェフは多いです。
とはいえ、同じ味でたくさん食べていると飽きてくることもあるので、その場合は、気分を変えるために、醤油やわさび、タレなど、いろいろなものを付けるのもありです。
実際、ホテルでは、わさび、粒胡椒、タレ、ポン酢、昆布だしの醤油など、いろいろなものを用意しています。

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味わい方(テイスティング)

これもまた、こだわりだすといろいろあります。
これは、とある鉄板焼料理長のおすすめのやり方というか、ご本人がお肉をテイスティングするときに気にかけているポイントになります。
調理前の肉の状態(サシ、弾力等)から始まり、調理中の状態(香り等)、食べる前の香り、口に入れた時の食感や香り、一口目の質感や甘み、噛んでいくことによる脂と赤身のマリアージュ、のど越し、後味など、分解すると30項目以上になります。
調理というプロセスが入るので、ワイン以上に楽しみ方があるかもしれません。



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