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その⑮ 〜下を向いて歩こう〜 京都の食堂・居酒屋「風景」のマスターを助けたい! マスターの隠れ家計画
おはようございます。
今まで自分が苦手だったことが、案外できるかも?と最近思い始めた西岡です。
本日は昨日の予告通り、マスターの作品をこちらで掲載させていただきます。※今回は有料です。
この作品の簡単な説明は前回のその⑭をご覧ください。
初めての方はその①から読んでいただけるとありがたいです。
「読んでる時間がない!」という方のために簡単に説明を。
京都の錦商店街近くで飲食店「風景」を営む松田正弘さん、通称マスターが、新型コロナウイルスの影響で窮地に立たされている。
そんなマスターを助けるために、「マスターの隠れ家計画」と題して、マスターを救うために、このプロジェクトを立ち上げました。
ただお金を支援してもらうだけでは忍びないとのマスターの意向をくみ、形に残るものを作成するために、マスターの趣味であり特技である文章を書く力をお金に変えるべく試行錯誤しております。
このnoteを使ったweb媒体での販売と、マスターの夢でもある、本を出版するという紙媒体での販売に向けて、慣れない作業に奮闘中です。
今回の作品は、皆さんもご存じの有名な競馬雑誌『優駿』の
「2009年の優駿エッセイ賞」で大賞を取った作品です。
作家の吉永みち子先生も絶賛してくださいました。
冒頭部分のみ無料公開、続きは有料とさせていただきます。
※こちらのnoteの売り上げは、全てマスターへお渡しさせていただきます。
ぜひ!マスターを応援してあげてください!
下を向いて歩こう
2009年「優駿エッセイ賞」
グランプリ受賞作
忘れられないレースがいくつかある。
僕に限らず、競馬ファンなら誰しもがそうだろう。それは、大きな配当を的中させたり、大好きな競走馬やジョッキーが優勝したりであるのかも知れない。また、そのレースを見た時や聞いた時の情景が脳裏に焼き付き、忘れられないものになったのかも知れない。
僕にとっては、例えばダイユウサクが勝った有馬記念。友人タツヤの結婚披露宴会場で。
2分30秒ほどの間だけ僕のテーブル6人は、イヤホンでラジオを盗み聴くノブをじっと見つめていた。ノブが、「熊沢……」と呟いた時に全員がポカンとした顔で。
例えばスペシャルウィークのダービー。河内騎手の熱狂的ファンであった今は亡き親友ウエちゃんと、京都競馬場のスタンド席で。
敢然とユタカ=河内の馬連一点勝負に出たウエちゃん。ボールドエンペラーが2着入線した瞬間、2人で抱き合い狂喜乱舞した。まだ元気だったウエちゃんはクシャクシャの笑顔で。
例えばキーストンの阪神大賞典。小学4年生だった僕たち仲良し4人組は、僕の家の白黒テレビの前で。
左前肢を折り、ひょこ、ひょことターフに倒れた山本騎手に歩み寄るキーストンを見ていた僕たちは、みんな泣きそうな顔で。
これから僕が綴るのもそういった、情景とレースがセットになって僕の脳裏に蘇る物語だ。ただし前述したものたちのようにイイ話じゃない。けれど、もしかすると、僕の中では最も鮮明にゴールインの映像が残っているレースかも知れない。
「網膜剥離ですね。完全に破れています」
特に深刻な口調でもなく、もうすっかり夏の日射しですね、って感じで先生は言った。
一昨日の夜、突然左目の視界が遮られた。
「かなり破れが大きいんで、このまますぐに京大病院へ行きましょうか。紹介状書いて、電話も入れときますから」
「え!……、こ、このままですか!?」
「そう。喜多先生っていう助教授に診てもらうことになると思うから。あ、タクシーでね。バイクは駄目ですよ、振動がね」
「先生……、あの、手術とかになったりもするんですか?」
「もちろんっ!」
気のせいだろうか、先生がニコッと微笑んだように見えた。
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