見出し画像

「自分をもっと知りたい」あなたへ。「ビジョナリーキャンバス」が描く、複雑な心の地図

「自分をもっと知りたい」「組織の未来をじっくり描きたい」――そんな想い、ありませんか?

でも、いまの社会はあまりにも複雑で、一筋縄じゃいかないことばかり。だからといって無理やりシンプルにまとめようとすると、大事な何かがこぼれ落ちてしまう……。今回の白米FMでは、まさにこの「複雑さ」と「シンプルさ」の狭間をどう扱うかをテーマに、ゲストとしてくらたつさんをお迎えし、たっぷり語り合いました。

くらたつさんは“ビジョナリーキャンバス”という独特の対話セッションを手掛けている方。そこで扱われるのは、人の頭や心の奥にある入り組んだ感情や体験を、ひとつひとつ「地図化」するアプローチです。

だけど、このサービスを広く知ってもらうには分かりやすく説明が必要……。しかし、あまりにもシンプルにしすぎると、せっかくの“複雑な美しさ”が損なわれるジレンマがある。これは、僕たち自身も何かを作ったり発信したりするとき、常に直面している課題じゃないでしょうか?

ここでは、その対話から見えてきた「複雑さ vs. シンプルさ」のポイントを整理しつつ、「どうすれば両立させられるのか?」を考えてみます。仕事や自己理解、コミュニケーションでのヒントがきっとあるはずです。


※この記事は、日米のIT業界で働く友人同士で対話したポッドキャストの内容を元に文章化しています。実際の音声へのリンクは最後に掲載しておきます。


くらたつさんってどんな人? —— “ビジョナリーキャンバス”の生みの親

県庁職員から独立へ

くらたつさんは、もともと県庁職員。しかし「もっと新しい領域へ挑戦したい」と思い、退職。農業やNPOなどいろんな現場を経て、起業コミュニティで学んだロジカル思考や対話の技術を活かし、「ビジョナリーキャンバス」というサービスを立ち上げました。

いまではこのサービス一本で勝負。公務員で培ったスキルを深めるのではなく、問題解決やロジックツリーの応用を“人の内面”に向ける――そこに可能性を感じたんですね。

ビジョナリーキャンバスって何をするの?

キーワードは“徹底的に紐解き、キャンバス(地図)としてまとめる”

  • 約6時間にもおよぶ対話セッションで、過去の体験・身体感覚・幼児的欲求などを丹念に掘り下げる

  • それらをマッピングし、未来へ向けたヒントを一緒に探す

いわば“自分の無意識にあるシンボルや思い込み”を外に出して、“美しい地図”に仕立てる。キャンバスに書き出して構造化することで、頭と心のモヤモヤを整理し、“自分”を改めて再発見できるというわけです。


「複雑」と「シンプル」の間で揺れ動く悩み

複雑さを複雑なまま扱いたい!

ビジョナリーキャンバスが扱うのは、人間の内面という非常に複雑な領域。無数の感情や思い出、体の感覚、幼少期からのクセ……。

  • これを「複雑なまま」丁寧に可視化するからこそ、深い納得感が得られる

  • でも、それを説明するときに分かりやすい“パッケージ”に落とすと、肝心の深みが失われそう

小説のように“読まなきゃ分からない”?

ここで出てきたのが「小説のメタファー」。

  • 小説って、あらすじだけ読んでも本当の魅力は分からない。実際に全部読んでこそ「うわ、すごい!」と感動できる

  • ビジョナリーキャンバスも同じで、体験しないと真価が伝わりにくい

もし「分かりやすさ」を求めて極端に要約すると、小説の肝が抜け落ちるのと同じように、ビジョナリーキャンバスの良さも伝わらない――これは広報やマーケティング上の大きなジレンマだと言えます。


くらたつさん流「複雑さへの向き合い方」——幼児性・身体感覚がヒント

2つの“鍵”で深く潜る

  1. 幼児性

    • 社会適応のために抑え込んできた「子どもの頃の欲求」や「隠れた本音」を炙り出す

    • そこにこそ本当の望みや“原初のエネルギー”が隠れている

  2. 身体感覚

    • 言葉や理屈はいくらでも嘘がつけるが、身体の反応はわりと正直

    • 過去の出来事で「どんな身体感覚があった?」と聞くと、自分の本当の気持ちが浮かび上がる

「デジタルツイン的に“自己の地図”を作る」

対話中、僕が例に出したのがデジタルツイン

  • 現実世界の都市や工場を仮想空間にそっくり再現して、さまざまなシミュレーションを可能にする

  • 同じように、ビジョナリーキャンバスで自分の内面をもう一つの空間として組み立てれば、自分の思考や感情を客観的にシミュレートできる

「自力では気づけなかった物事の差分や象徴的ワードに、外部の視点で光を当ててもらう」。それがビジョナリーキャンバスの魅力なんですね。


複雑さを楽しめる人たち——「自分に興味がある」層をターゲットに

“自分が好き” or “自分を深く知りたい”人こそ刺さる

複雑なサービスやワークショップを受けるのは、「何か分かりやすく教えてほしい」という層ではなく、「自分をもっと深く知りたい」と思っている人なのでしょう。

  • インプットを得るより、自分の中を深掘ることに喜びを感じられる人

  • 既存の自己分析ツールやコーチングじゃ物足りない人

起業家・クリエイターへの広がり

自分を掘るだけでなく、組織やチーム単位でビジョナリーキャンバス的なアプローチを導入すれば、チーム内の“真の想い”を可視化してシナジーを生むかもしれません。“複雑を許す風土”がクリエイティブな組織には欠かせない。


複雑さをどう扱う? “小説”を読むように味わうスタンス

あえて複雑なまま残す

ビジネスの常識では「パッと説明できないと売れない」ですが、そのシンプル化が物事の本当の魅力を削ぐ可能性がある。

  • 小説だって最初に全部ネタバレしたら面白くない

  • もしかしたら「わかりにくい=入り込んだらものすごく深い」価値があるからこそ、人を惹きつけるのかもしれない

認知の壁を“外部の力”で超える

自分1人で深い内面を掘っても、なかなか限界がある。他人に見てもらう、他人に質問してもらうだけで、思わぬ発見ができる。そういう“他者との対話モデル”を使うことで、複雑さの迷路をうまく楽しめる。

最低限の“フック”は用意してもいい

とはいえ、あまりにも「わかんない!」状態だと必要な人に届かない。

  • せめて表紙やあらすじ的な入り口を用意する

  • それで興味を持った人がじっくり読み進める……
    という小説的アプローチが一案。最初からすべて要約しないまでも、入り口の敷居は多少下げる。


おわりに

「複雑さは捨てるべき? それとも活かすべき?」――ビジネスの世界ではシンプル・ミニマルが称賛されがちですが、実は人間の本質や組織の深層はカンタンに切り分けられないもの。そこにこそ奥行きや味わいが宿っているのかもしれません。

ビジョナリーキャンバスというユニークなサービスは、その複雑さをそのまま活かしつつ、構造化して見える化する手法。自分自身やチームの“内なる地図”を描き出して、単純化できない部分も丁寧に残す――すると、自分も思わぬ発見をするし、他者もその人の奥底に触れるような体験ができる。

一方、外に伝えるにはシンプルな言葉も必要。でもシンプルにしすぎると大事なものが消えてしまう……。このジレンマこそ、僕たちが複雑性と付き合ううえでの永遠の課題なのかもしれません。

複雑さに潜む“美”を大事にしたい、でもそれを誰かに共有するにはある程度の整理がいる――。そんな揺れ動きの中で生まれる創造性を、小説を読むように楽しむのが賢い生き方なのではないでしょうか。「全部わかりやすくまとめなきゃ」というプレッシャーを少し緩めて、“複雑だけど、だからこそ面白い”領域に飛び込んでみる。そこにはきっと、あなたがまだ見ぬ可能性が広がっているはずです。


こちらの記事の、元となった対話音声はこちら↓

くらたつさんの公開コーチングセッションを受けた時の音声はこちら↓


白米FMとは?

日米のIT業界で働く小学校からの友人2人が、最新トレンドから古の哲学思想まで気ままに語り合う人文知系雑談ラジオ。

コテンラジオ、超相対性理論、a scope等に影響を受け、一緒に考えたくなるような「問い」と、台本のない即興性の中で着地点の読めない展開が推しポイントです。

移り変わりの速い時代だからこそ、あえて立ち止まり疑ってみたい人。
他者の視点や経験を通して、物事に新しい意味づけや解釈を与えてみたい人。
自分の認知や行動を書き換えて、より良く生きる方法を一緒に探求しましょう。

※ポッドキャストの文字起こし版へのリンクはこちら(LISTEN)

いいなと思ったら応援しよう!