
「戦略」は結果論ってマジ? 計画倒れを防ぎ、納得感を得るための戦略的思考
「どうやって進めるかはそのときの流れで――」
そう言って行き当たりばったりに動いても、大きな目的や結果にはなかなか繋がりにくい。一方、「しっかりプランを立てよう!」と意気込んでも、不測の事態で計画が崩れることも――これが、いわゆる“戦略”の難しいところ。
今回の対話では、この「戦略とは何か?」を軍事・ビジネス、そして僕たち自身のポッドキャスト活動に当てはめて、ざっくばらんに語り合いました。結論から言えば、戦略はオーダーメイドであり、結果次第で良し悪しが変わる“アート”とも言えます。ここでは、その要点を整理してお伝えします。
※この記事は、日米のIT業界で働く友人同士で対話したポッドキャストの内容を元に文章化しています。実際の音声へのリンクは最後に掲載しておきます。
戦略は「目的地への最短経路を描くアート」?
戦略の核心:どこへ行きたいか? どう進むか?
対話の冒頭で出たのは、「行きたいゴール(目的地)を定め、そのための効率的な道筋を考える」 という戦略の基本形です。たとえば登山に例えると:
行き先を決める
高尾山の展望台か、富士山の8合目か、エベレストの頂上か
これが「どの山に登るのか=何をどこまで達成するのか」の目的設定
ルートと資源を考える
どの道を通るか? いつ登るか? 誰と行くか? 装備は?
これが「どうやって進む?」を組み立てる計画(=戦略)
そして実際に山を登る最中でのトラブル対処や細かな作戦が「戦術」というイメージ。
戦略: 机上で立てる“効率的な道筋”
戦術: 現場で起こる問題を突破する具体的行動
戦略=アート?
戦略というと、最短経路を見つける理詰めの作業に感じますが、実際は環境の変化や競合状況など変数が多く、「これが正解!」 とは限りません。ある時はうまくいって“良い戦略”と称賛されても、別の時代や環境ではまったく機能しないことも。
だからこそ「戦略はアート(芸術作品)のようなもの」と思うわけです。過去のうまくいった前例をまるごとコピーしても必ずしも再現できず、結果論でしか評価できない面が大きい。そのときの状況や偶然、組織の感情などを総合して“最善の道”を描く――そこに創造的な要素があるわけです。
戦略と戦術の境界は相対的
「上位レイヤーの戦略」が下位レイヤーでは戦術になる
軍事の例でよく語られるように、本部が考える大きな計画(戦略)と現場の隊が行う戦い方(戦術)があるけれど、実は現場の隊にとってもさらに下の小隊の“戦術”は、自分たちにとっての“戦略”にあたったりします。
視点や階層が変わると、戦略と戦術が入れ替わる
一つ上の層では「全体計画」でも、下の層にとっては「細かい戦い方」
ここが混乱しやすいポイントですね。
戦略をうまく立てる3要素
対話のなかでは、戦略づくりで大事なポイントとして、以下の3つが挙がりました。
何が重要で何がそうでないかを見極める
あれもこれもやろうとして“優先度”が曖昧になると破綻しやすい
リソース(人・モノ・資金)を集中し、不要なことを切り捨てる
やみくもに手を広げず、勝算あるところに力を注ぐ
仮説を立てたら、現場で検証と修正を回す
机上の計画だけで終わらせず、実装しながら学ぶ
戦略が失敗するときは、大抵「全部やりたい」「現状や環境を過小評価して理想論ばかり」などが原因とのこと。
良い戦略かどうかは「結果論」? それとも「納得感」?
結果論かもしれない
歴史を紐解けば、かつて絶賛された計画が長期的には失敗したり、当時は批判されたアイデアが大成功した例も山ほど。戦略の成功・失敗は、最終的に結果でしか判断できないという面が強い。
要するに「完璧な戦略」は神様でもない限り作れず、良かった悪かったは後になってみないとわからない。つまり結果論。
今立てる戦略の評価基準は「納得感」
じゃあ、「事前に戦略の良し悪しをどう判断するの?」というと、やはり「当事者が納得して集中できるか」が大切だと。具体的には:
ゴール設定への共感(なぜそこに向かうのか?)
リソース・制約への合意(何が使えて、何が使えないのか?)
チーム全体で「これならやる価値があるよね」と思えるか
結果は不確定でも、「これでいこう!」と合意して行動を起こす納得感があれば、成功確率はぐんと上がるし、失敗しても原因や学びを共有しやすいはず。
軍事から学ぶ「大胆な作戦」とは
ロンメル元帥の「大胆な案」
第二次世界大戦期のドイツの軍人ロンメル元帥が言ったとされる「いかなる場合も大胆な案を採用せよ」。しかし、それは無謀な突撃ではなく、
ちゃんと“最悪の事態”に備えた代替案や予備戦力を持ったうえで
攻めの決断をするのが“大胆”
という意味。ビジネスでも、リスクヘッジやプランBを用意せずに「背水の陣!」と叫んでも、それは本当の大胆さではないのかもしれません。
人間を動かすのも戦略
軍隊といえば上意下達のイメージがあるけど、実際は部下がモチベーションを持てるような“共感と意志”を作ることが大事。
目的や背景を伝える
現場に判断権をある程度与える
するとメンバーが自発的に動き出し、結果として強い組織になる。これも一種の戦略ですね。「どう指示すれば、人は動くのか」を考えるのも戦略の領域だと言えるでしょう。
白米FMの「戦略」 —— 学びを最大化?
目的が曖昧でもいい? “オーダーメイド戦略”の例
最後は自分たちのポッドキャストの話。「白米FMって、数値目標や収益化の計画がない…これ戦略ないのでは?」と一見思えるけど、実は「学びを最大化し、深く掘る対話を楽しむ」という目標はある。
だからこそ、事前に台本は作らず「その場で自由に深堀りする」スタイルを採用
数字を追わなくていい分、純粋に学びが主目的で、その結果リスナーがついてきてくれればOK、という割り切り
外から見ると“ノープラン”に映るかもしれませんが、「自分たちの学びを最優先する」という臨機応変な戦略が、今の形を支えているわけです。
他人の学びはコントロールできない
よく「リスナーが学びを得られるように分かりやすく!」と言われがちだけど、相手が何を学ぶかはコントロール不能。
むしろ自分たちが楽しい・面白いと思える議論をとことんやる
それによって自然に“濃いリスナー”がつく
これも一つの戦略。「万人受けを狙わず、刺さる人には刺さる番組」を選んだわけですね。
おわりに
戦略とは「最短でゴールに到達する計画」と言われる一方で、不確実性が多すぎて絶対の正解は見えない――ある意味、“アート”のように直感やタイミングが大きく左右する。その一方で、戦略づくりに共通する基本も確かにある:
ゴールを定める(何を達成したいのか?)
現状を見極める(リソース・制約・環境など)
優先順位を決め、使う資源を集中(やらないことを決める)
実施しながら検証&修正(仮説検証を回す)
軍事でもビジネスでも、そして僕たちの趣味やプロジェクトでも――このプロセスを通して、いまの自分たちに合った“オーダーメイド戦略”を作っていく。上手くいけば“良い戦略”と称えられ、失敗すれば“悪い戦略”と後から言われがちだけど、それも運とタイミングに左右される部分が大きい。
だからこそ、大事なのは「この方針で行こう」と納得して集中できること。結果が出る前から完璧に“正解”を見極めるのは難しいし、戦略がアートである以上、自分たちがいま心から納得して取り組めるプランがベストかもしれません。
一度立てた計画に固執せず、必要に応じて戦術を変え、もし壁に当たったらまた戦略を見直せばいい――“アート”だからこそ柔軟に楽しめるのも戦略の醍醐味です。ビジネスや人生の大きな道筋を考えるとき、ぜひこの考え方を役立ててみてくださいね。
こちらの記事の、元となった対話音声はこちら↓
(戦略の話は、31-2から始まります)
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