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AIに仕事が奪われる?AIエージェントと比較することで見える「人間の役割」

「AIが勝手に仕事を全部やってくれる未来」――それ、どこまで本当なんでしょう?

ChatGPTが話題をさらい、自律的にタスクを処理する“AIエージェント”が注目される一方で、「実際は指示がないと動けないんじゃないの?」という冷静な見方もあります。そんな二面性を感じる今日この頃、僕たちはAIに何を期待し、何に不安を抱いているのか

今回の対話では、『その仕事、AIエージェントがやっておきました。』という本をきっかけに、AIエージェントの現在地や可能性、そして人間がこれからどう立ち位置を変えていくのかを探ってみました。


※この記事は、日米のIT業界で働く友人同士で対話したポッドキャストの内容を元に文章化しています。実際の音声へのリンクは最後に掲載しておきます。


AIエージェントの現在:便利ツール? それとも大いなる可能性?

指示された範囲で、タスクを分解してくれる?

ChatGPTやAutoGPTなどの“AIエージェント”は、一度ゴールを指定すると、タスクを細分化して実行し、結果を提示してくれると言われています。まるで「指示だけ出したら勝手に仕事が進む」ような夢のソフトウェア。

  • ただし現状は、「ユーザーが何を求めているのか」明確に指示しないと、うまく動かないことも多い

  • ゴール設定や目的が曖昧だとAIも混乱する

  • “自律的に抽象度を上がって「上司の上司の立場」で考える”といった抜本的アイデアはまだ怪しい、という声も

とはいえ、人間だって「具体的な目的や意図がないと行動しにくい」という面は同じですよね。そもそも「自律的に動く」とは何か?人間自身が定義しにくい。AIにその定義を求めるのは、さらに複雑な話かもしれません。

ポイント

  • 現在(2023年時点)のAIエージェントは、「指示された範囲」でタスクを分解・処理する段階がメイン

  • でも上手にプロンプトを設計すれば、上位の抽象度に踏み込んだ提案をしてくれる例も出始めている

  • “自律的”に動くとは何なのか、人間側もまだ手探り状態


AIは「人間の仕事を奪う」のか?

指示待ち仕事は、AIが先に代替しやすい

AIが急速に進化すると、「多くの仕事が奪われるのでは?」という懸念は根強いですよね。確かに、マニュアルやテンプレートどおりの処理・繰り返し作業はAIの得意分野。

  • 「大半の仕事が消滅する」という悲観論も

  • 逆に「人間はより創造的な仕事に移行する」と見る楽観論も

残る仕事、シフトできる人――そのギャップは?

AIにできない部分としてよく挙げられるのは、抽象度の高い企画や創造的思考。でも、じゃあ全員がそこに移れるのか?

  • 「中国の“寝そべり族”のように、“働いても報われない”と感じる人が増えるリスク」

  • 過去の産業革命でも、新技術の登場→人間が別の役割を獲得…は繰り返されてきたけれど、移行期には混乱も大きい

ポイント

  • 指示待ちで済む仕事はAIに奪われやすい

  • “創造的”な領域に人間が移行するシナリオはあるけど、適応できない層が取り残されるかも

  • 社会システムや個人の学び方が問われる重要な局面


「AIは賢いのか?」人間の賢さも相対的

“賢い”の基準も、時代や環境で変わる

「AIに意思があるの? 自由意志は? 意識が生まれる?」といった哲学的な問いは尽きません。一方で、「人間だって本当の自由意志があるのか怪しい」とも言われますよね。

賢さもまた相対的で、「今までできなかったことをAIがやったら『賢い!』と驚く」けど、そのうち慣れてくると「それが当たり前」になる――人間とAIの関係はそんなアップデートの繰り返しかもしれません。

ポイント

  • 賢いかどうかは「世の中の大多数ができないことをある人(やAI)ができる」ときにそう評価される

  • AIが進化して当たり前のようにこなすタスクが増えれば、また次の「人間にしかできない領域」にフォーカスが移る


因果推論とデータ、そしてメタ認知

「AIに因果推論は無理?」が揺らぎ始める

ジューディア・パールの『因果推論の科学』では、“因果のはしご”という概念が論じられており、因果関係を理解するには、少なくとも3つの異なるレベルの認知能力を身につける必要があると言われています。

  1. 相関関係を見る(静的な観測データの分析)

  2. 介入を考える(こう介入したら環境はどう変わる?)

  3. 反事実を考える(現実に起きなかったシナリオを想像してシミュレート)

これまでは「AIは相関どまり」と思われていましたが、最近のLLM(大規模言語モデル)は「もし~だったらどうなる?」という反事実的な回答も、擬似的にこなせるようになってきました。

  • 本当に因果を理解しているかは議論の余地あり

  • ただ、研究者も「意外とできる」と再評価し始めている面も

人間もベイズ的に確信を更新している?

一方、人間だって「経験や情報を得て、確信をアップデートする」という点では、ベイズ推定のプロセスと変わらないかもしれません。

これは前回の『〈私〉を取り戻す哲学』の回で出てきた、各人の主観的確信を持ち寄って、対話を通して共同的確信を生み出し、最終的に普遍的確信に至る流れ、と同じ。

AIと人間、思考の仕組みに共通点があるとすれば、僕たちが抱く「賢さの概念」自体が再考を迫られる時代が来ているのかも。

ポイント

  • “AIには因果推論ができない”という通説が揺らぎつつある

  • 人間も“対話”や“経験”で確信を更新している点はAIの学習と似ている面がある


まとめ:AIに何を期待し、何に不安を抱くのか

1. AIの自律性:どこまで指示なしで動ける?

  • 現状、「指示がないと動けない」と見る向きは強い

  • しかし、プロンプト次第では“抽象度の高い提案”も可能

  • “自律”とは何か?――人間でも定義しづらい部分を、AIに求めるのはチャレンジング

2. 仕事を奪う? 人間の役割は?

  • 単純・定型作業は真っ先にAIへ

  • 人間はよりクリエイティブな仕事へ移るが… 全員が移れるわけじゃない

  • うまく移行できない層や社会的混乱もあり得る

3. 賢さ・因果・メタ認知

  • AIが当たり前にこなせば、もうそれは「賢い」とは言われなくなる

  • 因果推論や“反事実”を考える力も、AIが一部で示し始めている

  • 人間との違いはさらに複雑化し、評価基準も揺れ動く

結局、「AIがこれくらいできる/できない」という議論は、そのときどきの状態や僕たちの基準によって大きく変わります。“まだまだ所詮こんな程度”と思う人もいれば、“このペースならすぐここまで行く!”と感じる人も。いずれにせよ、僕たち自身が何を期待し、何に不安を抱いているのかを見極めることが大事ではないでしょうか。

AIと共存する未来を思い描くなら、AIが何をどこまで自律化するのか、僕たち人間がどんな新しい価値を見出すのか――この両輪を考え続ける必要があります。人間らしさや自律性とは何か? 長年哲学が問い続けてきたテーマが、今やAIを通じて僕たちの日常に舞い戻ってきたわけですね。


最後に

もしAIが、あなたのメール返信や仕事の段取り、文章の作成をすべて代行してくれるとしたら、あなたには何が残るでしょう?

  • 「やった、ラクになった!」と心底ホッとするかも

  • あるいは「自分がやることないじゃん…」と喪失感を覚えるかもしれない

いずれにせよ、AIは「人間に自分自身を問い返す存在」になりつつある、と言えそうです。いまはまだ「できない部分」を見つける楽しみも大きいですが、それすら短期的に克服される可能性も否定できません。

仕事、社会、生活――AIに奪われるのか、それともパートナーとして能力を拡張してくれるのか? その答えは“人間が何を守りたいか”“どう共存したいか”にかかっているのかもしれません。

あなたはどう思いますか? 「今はまだ無理」としても、何年か後には思いもよらない形でAIエージェントが活躍しているかも。できる・できないの境界線を意識しつつ、自分にとって大切な価値や役割を見つめ直す。 そんな対話こそ、時代をうまく泳ぐカギになるのではないでしょうか。


こちらの記事の、元となった対話音声はこちら↓


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※ポッドキャストの文字起こし版へのリンクはこちら(LISTEN)

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