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さいたま市南区内の投票所に関する物理的環境条件の共同調査

石野榮一先生と取り組んだ共同調査結果のエッセンスを掲げておきます。

さいたま市南区内の投票所に関する
物理的環境条件の共同調査
Joint survey on physical environmental conditions on polling
stations in Saitama-shi Minami-ku

要旨:さいたま市南区には 33 の投票所があるが、いずれの選挙でも投票率が高 傾向を示す投票所グループと低い傾向のグループが存在する。投票所にかかわ る物理的な環境条件などを調査し、背景を分析した。同区の投票率を向上させる ための課題についても言及した。調査は、さいたま市南区選挙管理委員会と十文 字学園女子大学メディアコミュニケーション学科石野ゼミが共同して取り組ん だ。
共同研究者:
十文字学園女子大学メディアコミュニケーション学科石野ゼミ
さいたま市南区選挙管理委員会
執筆責任者:石野 榮一

1.はじめに 本稿の目的
1年後に統一地方選(さいたま市では県議会議員選挙、市議会議員選挙)や 参院議員選挙、知事選挙を控えた 2018 年の年明け、さいたま市南区選挙管 理委員会(小宮義夫委員長、以下南区選管)から、同区内の投票率を向上させ る方策について相談を受けた。筆者は本学に在籍する以前に勤務していた埼玉 新聞社時代、埼玉県政、さいたま市政にかかわる取材経験があり、各種選挙に 関しても多くの取材経験があった。その縁もあり、さいたま市明るい選挙推進 協議会委員就任、南区選管から数回、選挙に関するテーマで講演する機会をい ただいた。その経緯などから今回の共同調査の打診があった。
他方、筆者が在籍する本学メディアコミュニケーション学科では4月から3 年生の演習(ゼミナール)が始まることもあり、ゼミで取り組むテーマに南区 選管の打診内容を取り上げることを考えた。20 代、30 代の低投票率が全国 的な課題となっており、学生に政治や選挙に関心を持ってもらう格好の機会と なるのではないか、さらにゼミは地域メディアをテーマとしており地域に触れ る上で格好の教材になると考えたからである。
2018 年4月以降、ゼミ前期で南区内の投票率の推移、投票所ごとの投票率の分析を中心に取り組んだ。8 月には夏休み期間を利用して南区内2か所の投 票所エリアで学生とともに現地で聞き取り調査を実施した。ゼミ後期は、地域 メディアが選挙広報としてどのような役割を果たしているかを学ぶとともに、 本学学生を対象にした選挙.投票に関する意識をアンケート形式でまとめること に取り組んだ。
南区選管から提供された各種選挙データなど基礎資料を活用しながら、ゼミ での取り組みをまとめた。南区選管との意見交換を踏まえ、同区の投票率向上 に向けた方策を検討するのが本稿の目的である。

1-2 調査研究方法、提言内容
さいたま市南区内の 33 投票所ごとの投票率(さいたま市発足以来)の推移を概観すると、国政選挙、地方選挙を問わず、常に上位グループ、下位グルー プに位置する投票所があることが分かる。なぜこのような傾向を示すのかを上 位、下位の投票所の物理的環境条件を中心に分析することで、投票所ごとの投 票率を向上させ、ひいては南区全体、さいたま市全体の投票率の向上策が見え てくるのではないかと考えた。
具体的には、33 投票所の過去の投票率順位を得点化し、トップの投票所エ リアと最下位の投票所エリアを抽出し、両投票所エリアの物理的諸条件などを 比較検討しながらその背景の分析を試みた。
また、投票所エリアにおける有権者からの聞き取り、および十文字学園女子 大学の学生を対象にした意識アンケート調査も実施した。
上記の調査および分析を通して南区内の投票率を上げる方策の1つとして、投票所の物理的環境を改善していくこと、特に期日前投票制度の認知度が上がっており、かつ親近感も高い傾向がうかがえたことを踏まえ、期日前投票所の増設、近隣他区あるいは他の自治体との共同投票所の設置の在り方にも言及する。
さらに、南区全体の投票率を上げるため、選挙広報の在り方についても付言する。

2.さいたま市南区における投票率 まず、さいたま市南区の投票率が他の自治体と違う特徴ないし傾向があるかを調べるため、直近の4ないし6回の各種選挙における南区内の投票率と全国 平均、埼玉県平均、さいたま市平均とを比較した。
国政選挙における南区内の投票率は、衆院選、参院選とも全国平均を下回る傾向にある。埼玉県、さいたま市全体と比較するとほぼ同水準の投票率となっている。
国政選挙に比べ地方選挙の投票率は、埼玉県、さいたま市全体で国政選挙の投票率と比べ大幅に低下する傾向にあり、南区も同様である。投票率に影響を与える要因としては、選挙の争点、候補者の顔ぶれ、当日の天候など、さまざまな事情が考えられる。特に国民全体の関心が高く、メディアが取り上げる頻度が高い国政選挙に比べると、地方選挙は相対的に低くなることが指摘されている。
中でも大都市圏における地方選挙はさらに低い傾向を示す。その要因として 指摘できるのが、1「地元への関心度」いわゆる郷土愛、2地域メディア(地方 紙、ローカルテレビ)の影響力、3地方政治への関心度-の3点が大都市圏以外 の地域と比較して相対的に低いことが投票率の低さに関連しているのではない かという点である。首都圏を例に挙げれば、新聞では全国紙の読者が多く、テ レビでもキー局の視聴者が圧倒的に多い埼玉県や千葉県の県知事選投票率が 47 都道府県知事選の中で最下位争いをしていることは典型的な事例と言える だろう。
以上から、さいたま市南区の投票率が他の自治体の特徴ないし傾向と特に異なった点はないと思われる。

2-2さいたま市 10 区との比較
次に、さいたま市 10 区の中で南区と他の9区とに違う特徴、傾向があるかを検討する。
さいたま市が政令指定都市に移行し、区制を敷いたのは 2003 年(平成 15年)4月であり、その後、旧岩槻市が合併し、2005 年(平成 17 年)4 月か ら現行の 10 区体制となった。
10 区の投票率の順位で見ると南区は、衆院選(比例代表)が6位(H 26)、6 位(H29)、参院選(埼玉県選出)が 4 位(H25)、4 位(H28) である。地方選挙では、県知事選 7 位(H23)、6 位(H27)、市長選 9 位 (H25)、6 位(H29)である。南区は 10 区中、中位から下位に位置して いることが分かる。
南区の投票率の動向に他の9区と異なる特徴、傾向は見られない。

3. 南区内 33 投票所の投票率比較 前章では南区内の投票率を全国平均、埼玉県平均、さいたま市平均と比較した。この章では、南区内に設置される 33 の投票所ごとに投票率の傾向を見て いくことにする。(注・南区内 33 投票所の詳細は別表参照)
南区選管から提供されたデータを基に投票所ごとの投票率の分析を試みた。
分析方法としては、第 1 に、さいたま市が政令指定都市に移行した 2003 年(平成 15 年)以降の国政選挙、地方選挙ごとに 33 投票所の投票率を基 に、投票率が最も高い投票所、最も低い投票所を抽出してみた。国政選挙において最も高い投票率を記録した投票所は5カ所あり、浦和別所 小学校は 12 回中5回と最も多く、1位でなかった場合でも 2 位であった。他 方、12 回すべてにおいて西浦和小の投票所エリアが最も低くなっている。地方選挙においては、15 回中8回で浦和別所小学校エリアが最も高い投票 率を記録している。他方、最も低い投票率を記録した投票所は8カ所あるが、 西浦和小学校エリアは常に下位グループに入っている。
以上により、南区内の投票所ごとの投票率を見ると、国政選挙、地方選挙問わず浦和別所小学校エリアが上位の常連にあり、下位の常連に西浦和小学校エリアが位置していることが分かる。
第 2 に、直近の各選挙における投票率の上位5カ所、下位5カ所の投票所を まとめてみた。

どの選挙においても上位に位置する投票所はほぼ同様であり、前 述したように下位グループには西浦和小学校が常に入っている。
本章ではさいたま市が 2003 年(平成 15 年)に政令指定都市に移行して から実施された各種選挙の南区内における投票所ごとの投票率を見てきた。そ の結果、国政選挙、地方選挙を問わず、どの選挙でも投票率が常に上位を記録 する投票所がある一方で、常に下位を記録する投票所があることが分かった。
このことは、偶然の結果ではなく、何らかの要因があると考えることが妥当 であろう。南区内全体の投票率を少しでも向上させるためには、常に下位グル ープに位置する投票所エリアの物理的環境条件を精査し、投票率をアップさせ る方策を検討することが必要ではないかと考えられる。
そこで、以下の章では、常に上位グループに位置する投票所と下位に位置す る投票所を1つずつ選び、具体的な物理的環境条件を比較しながら、投票率向 上に結び付く方策を考えていくことにする。
4.南区内における投票率が最も高い投票所と最も低い投票所の比較
南区内 33 投票所から常に上位グループに位置する投票所と下位に位置する 投票所を1つずつ選ぶため、さいたま市が政令指定都市に移行した以降の各種 選挙ごとに、投票率の上位5カ所と下位5カ所の投票所を得点化してみた(上 位、下位とも 1 位 5 点、2位4点、3位3点、4位2点、5位1点とした)。
その結果、投票率最上位は「浦和別所小学校」、最下位は「西浦和小学校」が 最高得点となった。
この2つの投票所エリアについて、主に物理的環境条件で共通した項目で比較することと、両エリアの住民の意識を現地調査することにより、なぜ投票率に差が出るのかを2つの投票所エリアに関する項目を比較しながら分析した。

4-1 有権者の年代別構成 2017(H15).10.21 現在 浦和別所小学校エリア(別所2丁目、別所3丁目)

浦和別所小学校エリアは、どの町内でも女性が男性を上回っていることに 対し、西浦和小学校エリアは逆にどの町内でも男性有権者が多くなってい る。ただし、その差はわずかであり、男女比が両投票所エリアの投票率に
影響しているとは考えづらい。
2 年代別構成比を比較すると、全国的に投票率が低いとされる若年層(18
歳、19 歳、20~29 歳)の構成比は浦和別所小学校エリア 14.2%、西浦 和小学校エリア 15.6%と大きな違いは見られない。また、それ以外の年代 層においても2つのエリアで大きな差はない。
上記より、2つのエリアにおける投票率の差は有権者数構成とは直接関係は
ないと考えられる。
4-2 投票所までの直線距離、投票所の位置 公益財団法人明るい選挙推進協会の調査結果(第 47 回衆議院議員総選挙全
国意識調査 調査結果の概要 平成 27 年 8 月)によると、「投票所までの距 離と投票、棄権」の関係は、投票所までの時間が 5 分未満の人の投票参加率 は 77.5%、5~10 分未満の人は 71.6%であるのに対し、10 分以上になる

と、10~20 分未満の人が 58.4%、20 分以上の人は 58.6%と一気に低下す る。第 46 回衆院選調査、(平成 25 年 7 月)、第 23 回参院選調査(平成 26 年 5 月)でも、投票所までの時間が投票参加率に影響することが明らかになっ ている。
100% 50% 0%
投票所までの距離と投票・棄権
埼玉大学社会調査研究センターがさいたま市内で実施した「2017 年 政治意識調査」によると、同年 5 月に実施されたさいたま市長選で投票所への 時間と投票行動をクロス集計したところ、「5分未満」61%、「10 分未満」 49%、「20 分未満」37%、「20 分以上」16%が投票したと回答。投票所へ の時間がかかるほど投票行動が鈍る傾向にあることが指摘されている。
 浦和別所小学校、西浦和小学校の2つの投票所エリアにおいて、投票所まで最も遠い地点からの直線距離を比較した。また、投票所はエリア内のどのよう

な場所に位置しているか地図を使い比較した。
2つの投票所の位置は、浦和別所小学校がエリア南東部の外れ、西浦和小学
校がエリア北西部の外れにあり、投票所とエリア内の最も遠い地点との直線距 離は、浦和別所小学校エリア約 0.8 キロ、西浦和小学校エリア約 1.2 キロである。 西浦和小学校エリアは浦和別所小学校と比べ 1.5 倍離れている。
前述した全国調査ならびにさいたま市での調査を踏まえると、この距離の差
が2つの投票所の投票率の差に影響を与えている可能性があるのではないかと
思われる。
4-3 公共交通機関、公共施設、商業施設 次に、公共交通機関、公共施設、商業施設に関する視点で比較すると、まず
鉄道については、浦和別所小エリアは最寄り駅がJR武蔵野線・埼京線武蔵浦 和駅、JR埼京線中浦和駅、そして所要時間は多少かかるがJR京浜東北線浦 和駅があり、いずれも徒歩圏内である。他方、西浦和小学校エリアは、JR武 蔵野線西浦和駅が最も近いが、徒歩圏内ぎりぎりであり、通勤、通学の足は駅 までのバスが中心である。
道路では、浦和別所小学校エリアに沿って国道 17 号が走る。このエリア内 は区画整理が進んでいるが、道幅は狭く、住宅密集地であり見通しも良くはな い。ただ国道 17 号は通行量が多いが、日常生活でも頻繁に使われる面も有し ている。
これに対し西浦和小学校エリアは、国道 17 号新大宮バイパスと隣接してい るが、新大宮バイパスは日常生活で頻繁に使う側面は薄い。エリア内は区画整 理未整備の地域も含め道幅は狭いが、交通量は多くはない。両エリアとも住民 の移動手段は、徒歩、自転車が中心だが、西浦和小学校エリアでは公共バスの 需要が相対的に高く、高齢者や障がい者等の交通弱者にとっても公共バスが外 出の貴重な足となっている。
公共施設は、浦和別所小学校エリアでは、徒歩圏内に南区役所があるが、西
浦和小学校エリアには大きな公共施設はない。
商業施設でみると、浦和別所小学校エリアは徒歩圏内に武蔵浦和駅近隣の大 型商業施設や商店街があり、しかも投票所に近い場所に位置するため、投票所 へ行くという心理的負担は軽くなると考えられる。他方、西浦和小学校エリア は大宮バイパス沿いに大型量販店などが点在するが、日々の生活に密着した施 設ではなく、投票所の方角とも異なるため、「買い物ついでに投票所へ」とい ったような意識は持ちにくいと考えられる。
4-4 現行の期日前投票所との位置関係

南区内に設置される期日前投票所(※1)は、南区役所1階(JR武蔵浦和 駅至近)のほか、臨時期日前投票所(※2)として、南浦和駅市民の窓口2階 (JR南浦和駅至近)、増設臨時期日前投票所(※3)として、浦和コミュニ ティセンターコムナーレ 10 階(JR浦和駅至近)の3カ所がある。
※1 期日前投票所
期日前投票を行う場所として各市町村の選挙管理委員会(さいたま市の場合
は区選挙管理委員会)が指定し、選挙の期日の公示又は告示の日の翌日から選
挙期日の前日までの間に最低1カ所設けているもの。
※2 臨時期日前投票所
選挙人の利便性等を考慮し、期日前投票所とは別に臨時的に開設している期
日前投票所のこと。原則として、公共施設に設置することとしており、地域の
事情により開始終了時刻が異なる。
※3 増設臨時期日前投票所
更なる投票環境向上のため、臨時期日前投票所とは別に、日常的に人が集ま
りやすい公共施設及び商業施設へ追加的に開設している期日前投票所のこと。
浦和別所小学校、西浦和小学校の 2 つの投票所エリアとの距離を見ると、浦 和別所小学校エリアから南区役所は近距離にあり、武蔵浦和駅や周辺商店街と も近接していることから、期日前投票所が利用しやすい環境にある。他方、西 浦和小学校エリアからはいずれの期日前投票所も距離はかなりある。

国政選挙においては、浦和別所小学校が西浦和小学校を常に上回っている。 2012 年(平成 24 年)以降はポイント差が選挙を重ねるたびに拡大している ことが分かる。特に 2017 年(平成 29 年)衆院選では 5.7 ポイントまで差 が拡大した。
地方選挙でも浦和別所小学校のポイントが上回っているが、国政選挙ほどの
ポイント差はない。ただし、直近2回の選挙においてはポイント差が拡大する
傾向が見て取れる。
5.2投票所エリアにおける現地調査のまとめ これまで主に選挙ごとの投票率の推移を見ながら、投票率が最も高い浦和別
所小学校エリアと最も低い西浦和小学校エリアを分析してきた。
これに加え、エリアの諸条件を実際に見てみることと、エリア内の有権者の
意識を分析するため、ゼミ生による現地調査を実施した。実施日は、西浦和小
学校エリアが2018年(平成30年)8月3日(金)、浦和別所小学校エリ アが8月4日(土)で、調査時間はおおむね午前10時から午後4時ごろま で。参加者はゼミ生6名と筆者。8月3日は、さいたま市南区選管の職員2名 が加わった。

5-1 調査結果 現地調査は、2人1組となってアンケートを実施。基本的に道路を歩いてい
る人に声を掛け、質問に答えてもらった。調査項目と結果は次のとおりであ
る。
◆西浦和小学校エリア 2018(H30).8.3 実施 回答者数:35 人 男性.13 人 女性.22 人 主な質問項目と回答状況
1 投票所が「西浦和小学校」ということを知っているか
知っている=26 知らない=7 無回答=2 2 期日前投票制度は知っているか
知っている=35
3 南区内の期日前投票所は知っているか
知っている=17 知らない=18
4 昨年 10 月の衆院選は投票に行ったか
行った=29 行かなかった=5 無回答=1
5 選挙管理委員会が選挙の際に配布する選挙啓発物(チラシ、ティッシュ、広報など)は記憶に残るか
残る=7 残らない=13 どちらともえいない=15
◆浦和別所小学校エリア 2018(H30).8.4 実施 回答者数:42 人 男性.23 人 女性.19 人 主な質問項目と回答状況
1 投票所が「浦和別所小学校」ということを知っているか
知っている=33 知らない=7 無回答=2 2 期日前投票制度は知っているか
知っている=39 知らない=3
3 南区内の期日前投票所は知っているか
知っている=28 知らない=13 無回答=1 4 昨年 10 月の衆院選は投票に行ったか
行った=34 行かなかった=7 無回答=1
5 選挙管理委員会が選挙の際に配布する選挙啓発物(チラシ、ティッシュ、広報など)は記憶に残るか
残る=11 残らない=19 どちらともえいない=12
5-2 現地調査結果の分析
2 つの投票所エリアにおいて、大きな違いが出る項目はなかった。投票所の

場所を知っているかについては、西浦和小学校 74.3%、浦和別所小学校 78.6%と 4 分の 3 は知っていると回答。期日前投票制度を知っているかにつ いては、西浦和小学校 100%、浦和別所小学校は 93%と認知度は高い。ただ し、期日前投票所の場所を知っているかについては、西浦和小学校 49%に対 し浦和別所小学校 67%。西浦和小学校エリアにおいては制度の認知度は 100%だが投票所の場所は半分の人が知らないと回答しており、期日前投票所 の設置場所の周知方法が課題となるのではないかと考えられる。
6.十文字学園女子大学の学生を対象にした意識調査 本調査のテーマをより掘り下げるために、若い世代の投票意識を調べること
にした。併せてゼミ活動の一環として意識調査に取り組むことで、ゼミ生の問 題意識を深める狙いもある。調査方法として、本学の学生を対象に学内メール によるアンケートを実施した。
アンケート期間は、2018 年(平成30年)10 月 22 日~10 月 31 日。学 生に学内メールでアンケートを送付し、メールで回答してもらった。回答数は 計169。
6-1 アンケート結果は次の通り。 1 学科(人数)
幼児教育 33人 児童教育 14人 発達心理 42人 人間福祉 19人健康栄養 14人 食物栄養 13人 文芸文化 13 人 生活情報 11 人 メディアコミュニケーション 10 人
2 学年(人数)
1年 52人 2年 46人 3年 40人 4年 31人
3 昨年 10 月の衆議院選挙は投票に行きましたか
行った=98 行っていない=71
4 3で『行った』と回答した人へ。期日前投票か、当日投票所で投票したか
投票所で投票=77 期日前投票で投票=20 無回答=1 5 3で投票に行かなかった理由
.用事 23.9%(17 人)
.投票日忘れ 12.7%(9 人)
.投票する政党、人が分からない .行くつもりなし 23.9%(17 人) .その他 26.8%(19 人)
6 期日前投票制度は知っているか .知っている 94.1%(159 人)
9.9%(7 人)

.知らない 5.3%(9 人)
.無回答 0.6%(1 人)
7 期日前投票を利用したいか
.利用したい 84.0%(142 人) .利用するつもりはない 15.4%(26 人) .無回答 0.6%(1 人)
8 期日前投票が近くにあれば投票しますか .する 82.8%(140 人)
.しない 16.6%(28 人)
.無回答 0.6%(1 人)
6-2 学生による考察 上記のアンケート結果を基にしたゼミ生の考察を紹介する。 質問1、2について。一番多くアンケートに答えてくれたのは発達心理学科
の1年生。2015 年(平成 27 年)に公職選挙法が改正され、投票できる年齢 が「20 歳以上」から「18 歳以上」に引き下げられたため、1 年生の選挙に 関する関心が強いのではないかと考えられる。
続いて、質問 3 は昨年 10 月の衆議院選挙の投票行動を聞いたが、半数以上 の 58.0%が投票に行った。58.0%のうち 78.0%は投票所で、20.4%は期日 前投票所で投票していたことが分かった。期日前投票が約2割、期日前投票を 利用したいか(質問7)、「近くにあれば利用したいか」(質問8)がいずれも 8割を超えている点を考えると、学生に期日前投票を呼び掛けることで投票に 行く学生は増えるのではないかと考えられる。
逆に質問 3 で投票に行かなかった学生の理由としては、23.9%は「用事が あった」、12.7%は投票期日忘れ、9.9%は「投票する政党がわからない」 23.9%は「行くつもりがない」、26.8%「その他」という結果になった。 23.9%の学生が「行くつもりがない」と回答していることで、選挙に対する 関心が薄いという印象を受けた。集計結果を見ても、学年が上がるにつれて質 問に回答する学生が減少し、選挙への無関心層が増える傾向がある印象を受け た。
6-3 期日前投票制度に関する学生の意識 アンケート調査では期日前投票制度についても質問した。これは、5-2 で
触れたように期日前投票所の設置場所や周知方法の再検討が、投票率を上げる
方策の1つと考えられることから、学生がこの制度についてどのような意識を
持っているかを探るためである。

質問6~8の結果から、学生(若い世代の有権者と同義とする)にも期日前 投票制度の認知度が高く、しかも好意的に受け止められていることが分かっ た。この点からも、世代を問わず期日前投票制度を活用していくことが、投票 率向上策として有効と言えるのではないか。
7.調査結果の総括と分析、投票率向上のための提案 これまでの調査を踏まえ、執筆責任者として向上策を提案する。なお、提案
に当たっては南区内の投票率の動向、現地調査および学生意識調査、南区の地
域特性などを資料にするとともに、南区選管委員および選管職員と筆者で行っ
た意見交換も参考にしながらまとめる。
7-1 南区の地域特性 南区内の投票率を向上させる方策を検討する上で、南区の地域特性を考慮す
ることは欠かせない。そこでまず、同区の特徴的な地域特性をまとめておく。 以下、さいたま市が公表しているデータ(さいたま市の人口・世帯 平成 30 年)や平
成 27 年国勢調査などを参考にした。 1 人口動態
平成 30 年 12 月現在、人口は 10 区中最多となる 188,779 人(市全体は 1,301,915 人)。人口密度は 10 区中、浦和区に次いで2位(13,659.8人/ km²)である。また平均年齢は、市全体が 44.04 歳であるのに対し、南区は 42.31 歳、そして高齢化率は 19.04%(市全体 22.83%)と10区で最も低い。
転入・転出人口は、いずれも 10 区内で最多であり、昼夜間人口比率は、埼玉 県全体で 88.9%、さいたま市全体は 93.0%であり、南区は 10 区で一番低い 75.3%である。
首都圏に位置し、都心からほぼ30分圏内にある南区は、人口が微増ではある がまだ増加傾向にあり、かつ、子育て世代の転入・転出も顕著である比較的若い 自治体である。しかも主に都内への通勤通学者が多く、昼夜間人口比率の低さは 南区の大きな特徴といえる。
2 地理的条件 南区は、東西に長く、武蔵浦和駅周辺の大型マンションをはじめとした新しい
街並み、南浦和駅周辺の古くからの街並み、平坦で低層マンションと住宅地や工 業地帯が広がる西部から南部にかけた地域、住宅地が広がり緑も多く起伏があ り区画整理地区が目立つ東部地域とそれぞれ特徴がある。
また、都心と接続する鉄道交通はJR京浜東北線南浦和駅とJR埼京線武蔵 浦和駅が結節点となっている。ただ、京浜東北線を境に東側の住民は武蔵浦和方

面に来ない、西側住民は南浦和から以東に行かない等、区としての一体感が薄い (他地域への関心度が低い)ことが指摘されている。
7-2 投票率向上策 これまでまとめた各種データや調査結果、および南区の地域特性を踏まえな
がら、以下、投票率向上に結び付く提案をまとめる。
1 投票所の配置 各自治体が適切な場所に投票所を設置することは、有権者の投票機会を確保
するために必要不可欠な取り組みである。しかし、投票所の設置には人的、金銭 的コストがかかるため、近年では投票所の設置数を減らしたり、再編成する動き が全国的に起きている。幸い、さいたま市においては投票所を減らす動きは今の ところない。ただし、これまでに見てきたように、同じ自治体(さいたま市の場 合は区)内の投票所ごとの投票率に差が出る現状がある。中でも注視する点は、 どの選挙においても投票率が常に上位に位置する投票所がある一方で常に下位 に位置する投票所があることである。
これまでの調査で南区内でも投票率の高低と投票所の位置関係(区域内の地 理的バランス、利便性など)に相関関係があること分かった。区全体、さらには 市全体の投票率を上げるには、有権者がより身近と思える投票所の再配置の検 討も必要になるのではないか。
また、投票所の位置を検討する際は、地理的条件、公共交通、町名ごとの有権 者数などの諸条件と、過去の投票所ごとの投票率の推移を踏まえた上で、特に下 位グループに位置する投票所については、そのことに配意しつつ検討をするこ とが必要と考える。
ただし、現状の投票所の場所については、それぞれの地域の歴史や地縁等、複 雑な要素が絡み合っている。このため公民館、自治会館、学校など主に公共的な 施設を前提に投票所を設置する従来の考え方だけでなく、有権者の投票機会を 確保するため、より効果的と判断される場合は民間商業施設のスペースなどを 積極的に活用することも検討していくべきと考える。
2 期日前投票所の拡充 i)全国では期日前投票の認知度も上がり、利用する人は増加傾向にある。南
区においても同様の傾向がある。また、学生の意識調査でもその認知度は上がっ ている。従って、期日前投票制度の周知をより進めること、制度を柔軟に運用し て期日前投票所を1つでも多く設置できるかを検討することが必要と思われる。

現在、南区では前述のとおり南区役所1階(JR 武蔵浦和駅至近)、南浦和駅 市民の窓口2階(JR 南浦和駅至近)、浦和コミュニティセンターコムナーレ 10 階(JR 浦和駅至近)の3カ所に期日前投票所を開設している。(ただし、開設 期間.時間は同じでない)
投票率向上に有効な制度といえる期日前投票について、まず既存3カ所の投 票所の開設期間、時間を拡充する取り組みを進めることが必要である。例えば南 浦和駅市民の窓口で投票期間を延長すること、交通の結節点である武蔵浦和駅、 南浦和駅でJRの協力を得て有権者が目にしやすいように表示や案内板を設置 する他、帰宅する人への呼びかけを強化するなどである。
ii)浦和コミュニティセンターの期日前投票所は区外(浦和区に設置)である ことから増設臨時期日前投票所として開設されている。注目すべきは、複数の区 が共同して期日前投票所を開設する動きである。さいたま市内ではこれ以外に も設置するケースがある。これを参考に、投票率が低い西浦和小学校エリアに近 いJR西浦和駅付近に桜区と共同して期日前投票所の開設を検討してはどうか。 西浦和駅は南区西部、桜区東部の住民が利用する駅であり、通勤通学者には利便 性が高まると思われる。
iii)駅のほか、大型ショッピングセンターなどに臨時期日前投票所を開設する 動きもみられる。戸田市北戸田にあるイオンは多くの南区民が利用する商業施 設である。南浦和駅や武蔵浦和駅からも路線バスやシャトルバスが運行されて おり、高齢者やファミリー層の利用も多い。戸田市と共同してイオンに増設臨時 期日前投票所を開設することを検討してはどうか。戸田市、蕨市と南区は衆院選 小選挙区での区割り(埼玉第 15 区)が同じであり、国政選挙ないし知事選で協 力を模索する余地はあるのではないだろうか。
iv)都内に通勤・通学する方々が多いという南区の特徴を考えると、南区の主 要な駅である南浦和駅を通る京浜東北線と、近年利用者の増加が顕著な武蔵浦 和駅を通る埼京線の結節点である JR 赤羽駅構内に増設期日前投票所を設置す るというダイナミックな案も現実味を帯びてくるのではないか。
v)全国では車輌を使った「移動期日前投票所」を導入する動きも報告されて いる。主に過疎地や高齢化が進む地域での取り組みではあるが、各市町村区選管 の判断で導入できる。南区のように都市化が進んだ地域であっても常に低投票 率を記録するエリアを中心に運用を検討してはどうだろうか。
3 市選管、県選管との協働 以上のような取り組みを進める上で、人員や費用の確保、ネット環境の整備、複数の自治体による連携がスムーズに行くかなど多くの課題がある。

しかし、有権者が投票しやすい物理的環境を整えるために、「選挙の公正な執 行」という大原則を堅持しつつも、各投票区における投票所の数や、期日前投票 所の開設時間と配置人員数などに係る柔軟な対応、さらには、それらに要する執 行経費の算定など、その基準緩和を進めることについて、さいたま市から国へ働 きかけることが必要であろう。
平成28年4月11日に交付された「国会議員の選挙等の執行経費の基準に 関する法律及び公職選挙法の一部を改正する法律」においては、投票しやすい環 境を整えるために、当該市町村区域内のいずれの投票区に属する選挙人も投票 できる共通投票所を設けることができるとされたことから、ICTを活用した 選挙人全体の共通データベースを設け、複数の共通投票所をネットワークで結 ぶことに加え、投票の重複を防止する措置の検討に着手する必要がある。
また、埼玉県選挙管理委員会は「投票率向上に関する報告書」で投票しやすい 環境整備を挙げており、さいたま市も同様の姿勢である(平成 30 年度さいたま 市選挙管理委員会重点施策)。
本稿冒頭で述べたように投票率が低下傾向にあることへの危機感は、国地方 問わず共通している。法改正や予算措置が必要な課題ではあるが、自治体の姿勢 として知恵と工夫を総動員し、どうしたら投票率向上に結び付く方策があるか を考えることが必要となっている。南区選管がこうした姿勢で課題に挑戦し、さ いたま市、埼玉県さらには全国で参考とされるような取り組みを進めることが 肝腎である。
8.さいたま市南区選管の選挙啓発活動 前述した南区内での現地調査に際して、南区選管が行う各種啓発活動(選挙
広報)についても聞いた。投票率の差が生まれるのは選挙広報の効果に課題が
あるのではないかという問題意識とともに、南区全体の投票率をアップさせる
方策としても広報の取り組み方を再検討する必要があると考えたからである。
以下、執筆責任者から選挙啓発活動について提案をしたい。
8-1 南区選管による選挙啓発活動(選挙広報活動)の概要 まず、南区における選挙啓発活動を概観しておく。
2017 年(平成 29 年)10 月実施の衆院選で同選管が南区内向けに取り組
んだ啓発活動は以下のような項目である。なお、公示日は 10 月 10 日、投票 日は 10 月 22 日、期日前投票日は 10 月 11 日~21 日であった。
1 啓発ポスター
期日前投票所開設の告知を内容としたポスターを、駅、図書館、公民館な ど計 15 か所に掲出した。

2 南区ホームページでの啓発 検索の流れは、さいたま市公式HP>南区>区政情報>区政について>選 挙。内容は投票日のお知らせ、投票の呼びかけ、期日前投票所の告知であ る。
3 電光掲示板による啓発 南区役所内の1階案内ブース横、3階案内窓口上、8階コミュニティセン ター受付の3カ所に設置された電光掲示板を使い、投票日のお知らせ、投 票の呼びかけ、期日前投票所の案内などを掲出した。
4 区役所館内放送 1日午前と午後の2回、投票日のお知らせ、投票の呼びかけ、期日前投票 所の案内を盛り込んだ館内放送を実施した。
5 街頭啓発 10月15日午後4時集合で、総勢38名により武蔵浦和駅頭で街頭啓発 を実施した。市選管作成のウエットティッシュ、ポケットティッシュを配 布したが、南区選管独自で区内の期日前投票所を告知する名刺大のチラシ を作製してティッシュに入れて配布するなど独自の取り組みも行われた。
8-2 検討および提案 さいたま市10区内における選挙啓発活動(広報活動)は、市選管の方針を
基本としながら、区選管で取り組んでいる。上記5の街頭啓発のように、南区
内の期日前投票所を知らせるチラシを作成しティッシュに織り込みながら配布
するといった区独自の活動事例もある。
ただ、西浦和小エリア、浦和別所小エリアの現地調査から分かるように、現
在の選挙広報の印象は、記憶に「残る」よりは「残らない」と回答した人が多
く、広報の在り方の再検討は必要ではないかと思われる。費用対効果を念頭に
置きつつ、区の特徴を踏まえた独自の選挙広報の取り組みを再考していくこと
も課題である。
以下、何点か提案も含め課題を整理する。 1 投票所ごとの投票率の公開
南区(さいたま市)の投票率を向上させる広報活動として、区全体の投票率 だけでなく、投票所ごとの投票率を住民に知ってもらうことも必要ではないか と考える。具体的には、選挙を広報していく際に、投票所エリア(町名、丁単 位)の投票率を公表し、有権者に自ら住む地域の実情を知ってもらうのであ る。選挙において競争原理の考えを前提にすることはタブーの領域であった。 しかし、自分が住む投票所エリアの投票率を他の投票所エリアと比較すること で、選挙さらには投票行動への関心を高めることにつながるのではないかと考

えるからである。
また、33 投票所の中で投票率が常に下位に位置するエリアがあることは前
述した。こうしたエリアで重点的に啓発活動を取り組む発想も必要だと思われ る。
2 駅前での集中的な啓発活動
南区の特徴でも触れたように、都内通勤通学者の投票意識を高める上で、駅 前での啓発活動を強化すべきである。特に転入.転出者が多く地元意識が軽薄に なりがちなため地方選挙の投票率が低い傾向が見て取れる。都内通勤通学者が 多く利用する駅での活動を重要な啓発活動の1つに位置付けるべきではない か。
3 若い世代による主体的な啓発活動
選挙権が 18 歳以上に引き下げられ、次代を担う若い世代が選挙に関心を持
ってもらうことを啓発活動の柱に位置付けるべきである。特に南区内に3つあ る高校(県立浦和商業高校、市立浦和南高校、浦和実業学園高校)と区選管と が協力して高校生が主体となった啓発活動に取り組みたい。同世代の呼び掛け は大きな効果を生むはずである。そのために、区選管が高校に赴き、選挙の仕 組みを解説したり、模擬投票に取り組むなどさらなる活動強化が求められる。 4 子育て世帯への啓発活動
南区は子育て世代が多く、新たに転入してくる世帯もこの世代である。この
ため小中学校の協力を得て、投票啓発のチラシなどを親に配布する取り組みも
有効と思われる。投票所に子ども同伴で入場できるよう法改正されたこともあ
り、親子同伴で投票にという呼びかけは、長い目で見て若い世代の投票率向上
に結び付くと思われる。
5 明るい選挙推進協議会による啓発活動 明るい選挙推進協議会の活動にかかわる世代は比較的高齢の方が多い。当該
協議会のメンバーと啓発活動の内容を十分協議しながら、市民と一体となって 取り組むことも必要である。
6 インターネットメディアの活用
区のホームページにアップされた啓発内容を点検し、効果的な内容を検討す べきである。さらに、若い世代で使用頻度が高い Twitter、Instagram など SNS の活用方法を進めるべきである。この際に3で触れたように高校生らの 意見を取り入れる工夫も効果的と思われる。
8-3 まとめ 啓発活動(広報活動)には費用がかかる。潤沢な予算がつけられない状況に
おいては、これまでの活動を総括したうえで、よりコストパフォーマンスの高

い取り組みを考え出す必要があり、選管関係者の知恵の出しどころでもあろ
う。
例えば、前述した投票所ごとの投票率一覧を広報することも1案であるし、 街頭活動や掲示ポスター、チラシの配布、放送等音声による告知も「届いてい ない」地域や年齢階層はどこかを分析した上で、区(あるいは市)の人的物的 財産を有効活用する案も検討していく姿勢が何より大事である。
9.おわりに 今回の共同調査に当たっては、南区選管から各種資料を提供していただき、
具体的に南区で最も投票率が高い投票所と最も投票率が低い投票所を拾い上
げ、各々の投票所までの距離の遠近が二つの投票所の投票率の差に影響を与え
ている可能性について、両投票所の物理的環境条件を比較することで検証して
きた。さらに、その検証を踏まえて、投票率向上に結びつく方策を提言すると
ともに、南区選管が実施する選挙啓発活動の検討とそれに係る提言にまで踏み
込んだものとすることができた。
数回にわたる意見交換で課題を整理し、それぞれの認識を深めることができ
た。南区内で投票率を上げていくためにという姿勢が南区選管の委員の方々、
職員の方々から伝わり、学生にとっても選挙、政治を考える貴重な機会となっ
た。十分な調査とは言えないが、今後の南区内の投票率が1%でも向上するこ
とにつながれば幸いである。
最後に、調査にかかわった学生と、多くの示唆をいただいた南区選管関係者 の名前を記して、本稿を終わることにする。 十文字学園女子大学メディアコミュニケーション学科3年 川上奈恵、小山桃 子、小林夏実、三輪奈央、SHA.YI(サ.イ)、LI.PEIHENG(リ.ハ イコウ) (調査時点での学年)
南区選挙管理委員会 委員長 小宮義夫、委員長職務代理者 永堀博、委員 加 藤清孝、委員 前田敏
南区選挙管理委員会事務局 松井雅之、細井博明、竹越ヒロ子、中島亨、内田英 明、戸村隼人、小宮淳一、平本潔
参考文献.資料
.提言 各種選挙における投票率低下への対応策(2014年8月29日 日本学授受会議 政治委員会政治過程分科会)
.投票率向上に向けた取組事例(2017年3月 総務省) .なぜ自治体は投票所を減らすのか?-投票所統廃合に関する計量分析-(茨木瞬.河村和徳

横浜市立大学論叢社会科学系列2016:Vol67 No1.2) .投票環境の向上方策等に関する研究会報告(2016年9月) .投票参加とコスト(愛知学泉大学コミュニティ政策学部紀要第3号 三船毅) .国政選挙における投票率と投票所数との関係(千葉大学人文公共学研究論集第36号 光 延忠彦)
.埼玉新聞 2018 年3月 5 日付け朝刊 .さいたま市選挙管理委員会ホームページ https://www.city.saitama.jp/006/009/index.html .さいたま市南区ホームページ https://www.city.saitama.jp/minami/ .埼玉県選挙管理委員会ホームページ https://www.pref.saitama.lg.jp/soshiki/e1701/index.html .さいたま市統計書(平成 29 年)

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