ベース・レジストリとは?国家規模のデータクレンジング
「ベース・レジストリ」という言葉をご存知でしょうか?
今回はこれまでいくつもの記事で紹介してきたマスタの整備の重要性を「ベース・レジストリが行政業務に与える影響」という広い視点で紹介したいと思います。
行政業務を例にマスタ整備の重要性について何か示唆が提供できると幸いです。
ベース・レジストリとは?
「ベース・レジストリ」とは「国が管理する標準となるデータ」です。
あらゆるサービスから引用される重要な情報で、システム的な言い方にするとマスタと呼ばれるものです。
管理されるデータの代表例としては人、法人、住所、建物等に関する情報が該当します。
これらのデータが最もよく使われる場面は行政業務における手続きで、届出された情報の確からしさや記載の正確性を確認するための照合作業に用いられます。
また、一部のデータはオープンデータとして流通することになり、あらゆるビジネスに活用されていくことが期待されており、例えば以下の記事で紹介した「物流・商流データ基盤」では”統一された住所データ”が重要になってくると思われます。
ベース・レジストリの経済効果
ベース・レジストリの推進によって行政手続きにかかるコストの削減が期待されています。
マイナンバー導入によるコスト削減の試算だと、平成30年の調査では「国民・事業者」においては年間2,629億円程度、「行政機関等」においては年間1,798億円程度の効果があると書かれています。
※調査時に推計できた行政業務の範囲内での試算であることから少なめに見積もられている可能性が高く、年間1兆円程度の効果があるのではないかという記事も見受けられます。
マイナンバーによる行政手続きの効率化については私自身も実感することがありました。
先日、ワクチン接種証明書の発行をする機会があったのですが、ワクチン接種証明書アプリにマイナンバーを入力したところ即座に証明書が発行されました。
もしマイナンバーが無ければ、役所の職員の方は①個人情報を照会②個人情報に紐づく接種記録を検索③検索した情報を統合して証明書(紙)を行うことになり、これらの業務を不要にできるマイナンバーの経済効果の試算にも納得がいきます。
その他にも以下のような情報の修正や確認コストが発生しており、これらのデータが整備されることも行政手続きの更なる効率化につながると考えられています。
このようにマイナンバーをはじめとする基本情報を整備したベース・レジストリは、行政にかかる手続きを効率化するという意味だけでも非常に大きな存在意義があるのです。
ベース・レジストリの今後について
ベース・レジストリは現在、デジタル庁を中心としてデータ戦略推進ワーキンググループで検討が進んでいます。
今後のスケジュールについては以下の通りで、まずは法人(事業所)、土地(住所)など経済効果の大きい情報からデータモデルを設計していく方針です。
データモデルが設計出来ると実際にデータを地道に整備していく作業を行うことになります。
より詳しく知りたいという方はこちらの記事が非常に勉強になるのでおすすめです。
まとめ
今回は国単位でのデータ整備が行われようとしているということを「ベース・レジストリ」を紹介させていただきました。
規模は壮大ですが、皆さんの業務の中でも実はマスタの整備ができていない、データの登録ルールがバラバラなどの理由で不必要な照合作業のようなことが発生したり、情報を探すことに時間がかかったりしていることはないでしょうか?
私の場合、過去の商談情報を探す際に自分が付けた提案書の命名ルールがバラバラで探しづらいことがあります。私個人でもそのような状況なので、ベース・レジストリを実現することは非常に大変だと思いますが、今後の動きに期待して状況のウォッチを続けたいと思います。