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創作大賞2024の中間選考に残った日、日本語を学び始めた頃を思い出した

トリノ大学の日本語専攻に進学したのは2001年の秋だ。

「ありがとう」「こんにちは」「さようなら」しか言えなかった僕。最初の日本語の授業で出された宿題は、「1週間でひらがなを覚えなさい」だった。この思い出は一生、忘れられない。地獄のようで、でも日本語に近づく大事な一歩目だった。

次の週は1週間でカタカナを覚えなさい。その次にやっと、教科書を持って日本語の勉強が始まった。ひらがなとカタカナ、そして「」や「」などのシンプルな漢字など、少しずつ学ぶ言葉が増えているうちに、文法と日本人の感覚にぶつかるという日課が始まる。今現在の僕にとって、「川」と「山」の漢字はシンプルで使いやすくて大したことない。だけど、当時は読むのも書くのもハードルが高くて、頑張って覚えた。

友達や両親に「山」を書いて見せるのが大興奮だった。まるで博士のような気持ちになっていた。イタリア語にない文法と感覚を理解して、漢字は毎日「漢字ノート」へいたずらに書いた。そして、日本人の先生と一生懸命会話していた。

本当に上手くなるんだろうか。日本に行けばちゃんと話せるだろうか。失礼な発言をせずに、日本人と楽しい時間を過ごせたら最高に嬉しい。いつそうなれるんだろうか。このような疑問はずっとあった。恥ずかしくても絶対に無理だと思っていても、日本人と、日本人のように、日本人の感覚を楽しみながら話したい!という目標が強かった。というか、今だに続いている気がする。

現在の当たり前は、昔の不安と弱み。でも、日本への楽しさはずっと変わらない。
大学卒業して日本語の色んな資格を取って通訳者として日本で活動することになった後に、物書きの世界に新しい展開が広がった。

母国語ではない日本語と付き合って、20年以上経った。現在も勉強すればするほど、わからないことが山ほど出てくる。山ほどあるからこそ、コンフォートゾーンにならないし、新しい学びの「ワクワク感」がずっと心に刺さり続けている。この気持ちで2019年にこのnoteアカウントを作って、「書く」にもっと力を入れようと思った。

今年は勇気を持ってnoteの創作大賞2024に応募することにした。ダメ元で練習として、みなさんの作品を読みながらいい勉強になると思った。

書いた作品はこちら。

自分のために、読者と楽しい時間を過ごすために、書いた。1人でも喜んでもらえたらそれだけだ。中間発表のことを忘れていた頃、noteの運営事務局からメールが来た。

創作大賞2024

声が出た。数分間、ボーッとしながらこの通知を見ていて、なぜか大学1年生の頃の「ひらがな練習」を思い出した。ひらがなを一生懸命勉強して書いていたイタリア人の僕は、二十数年後、日本で創作大賞2024の中間選考を通過した。通過しちゃった。

52,750作品の応募から選ばれた305作品の中に僕の作品も入っている。
エッセイ部門の応募数26,158作品の応募から選ばれた47作品の中に僕の作品も入っている。

この結果を見て、もし今後、最終結果に落ちたとしても、ひらがなを勉強していた僕を思い出すと、いい結果。いい勉強。これからの勉強にかなりの力を与えた。

そして、日本語がもっと好きになった。僕にとって特別な存在で、日本語を使った日常生活がないと生きれられないと改めて感じた。二十数年前に勉強していた「川」と「山」は、努力して、川を渡って山を登ってきた気持ちになっている。非常に困難な川と山を、負けずにクリアできた。

次の山に準備して日本語と一緒に、向かいたい。

山から見られる川のマッシより

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マッシ|エッセイスト・ライター
みなさんからいただいたサポートを、次の出版に向けてより役に立つエッセイを書くために活かしたいと思います。読んでいただくだけで大きな力になるので、いつも感謝しています。