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3杯目のカフェオレは最高だった

近所のミスドから帰ろうとした時だった。

いつものように自転車に乗って晴れている朝を楽しみながらミスドに立ち寄った。レジに辿り着く前に、仲良くなったお母さんの店員さんを見た瞬間、無意識に「おはよう」と手を振っていた。お母さんも微笑んでいて、お店の中は幸せな揚げたてのドーナツの香りが漂っていた。
いつもと違って何年振りにカフェオレだけを頼んで、小さな席でスマホをいじりながら、ぼんやりと外の風景を眺めていた。

朝の割に勉強したりおしゃべり会のような集まりがあったりしていて、窓から入っていた日光と明るさはなぜかほっこりした。

当時の僕はそこから起こることをまだ知らなかった。
1杯目のカフェオレを飲み終えたところで店員さんがお代わりを入れにきてくれた。熱々のカフェオレを淹れてくれて、店員さんがテーブルから離れてすぐ飲んだ。久しぶりだったからなのかわからないけど、ミスドのカフェオレは本当に美味しいと再発見した。

2杯も飲み終えた。そろそろ帰らないと、その時にやられた。
店員さんが近づいてきて「お代わりはいかがですか」と聞かれた。3杯目は飲めなくて帰る準備は終わっていたから、断ろうと思いきや

「お願いします」と言ってしまった。
マスクで笑顔を見れなかったからこそ、その短い会話から店員さんの素敵な笑顔が伝わってきた。言葉を通して胸に刺された。

「日本語はお上手ですね」と言われて、マスクに隠れている笑顔は顔に広がって目が日光より輝いていた。ただ明るいだけの笑顔ではなく、どこか温かくて、包み込むような優しい笑顔だった。注ぎながら交わした短い会話も、どこか心地よく、心がほっとするような感覚に包まれた。

たった数分の出来事だった。その3杯目のカフェオレは先まで飲んでいたものと比べ物にならないほど、何か違った。

一口目のカフェオレは、いつもより格別に美味しく感じた。コーヒーの豊かな香りとミルクのまろやかさが口の中に広がり、幸せな気分にさせてくれた。

ふと我に返ると、いつの間にか持っていたカップをじっと見つめていた。思わず先の店員さんに僕の心の「ありがとう」の気持ちを投げた。

店員さんの笑顔と会話は、まるで疲れた心を癒してくれる魔法の言葉のようだった。その日、僕はカフェを後にしながら、自分でも驚くほど穏やかな気持ちですぐ家に帰らずに街を歩いていた。

あの日の出来事は、僕の心に小さな光を灯してくれた。誰かの笑顔や言葉が、こんなにも人の心を動かすことができるのかと、改めて気づかされた。

あの日以来、僕はちょくちょくミスドのカフェオレを頼むようになった。目的は、もちろんカフェオレを飲むことだけではない。あの店員さんの笑顔を思い出すため。

カフェオレを飲みながら、僕は色々なことを考える。仕事のこと、人間関係のこと、そして、自分自身のこと。悩みや不安が頭をよぎることもあるけれど、ミスドのカフェオレを思い出すと、不思議と心が軽くなる。

カフェオレは、僕にとってただの飲み物ではなくなった。それは、忙しい日々の中で、立ち止まって自分を見つめ直すための大切な時間、そして、誰かの温かさを実感できる心の拠り所なのだ。


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マッシ|エッセイスト・ライター
みなさんからいただいたサポートを、次の出版に向けてより役に立つエッセイを書くために活かしたいと思います。読んでいただくだけで大きな力になるので、いつも感謝しています。