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通訳日記

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日伊通訳・現場の話
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#言葉

僕が通訳者になるまでの道のり

こんにちは、日伊通訳マッシ(@massi3112) 「日本語上手ですね」「ペラペラですね」「さすが通訳者ですね」など、よく言われている。この言葉には、マッシ=日本語を当たり前に話せる、の意味が少なからず込められているように思う。そう言う人たちは僕の現在の結果しか見ていない。 大学生になり、ようやく大人として学べる!と意気込んだ矢先に、まるで小学生に戻ったかのようにわからない事だらけ。社会人になって日本に来て、苦労しながら、泣きながら、毎日コツコツと勉強しつつ働いてきた結果

僕が自分をプロの通訳者と言えない理由

通訳者は言葉を訳す仕事ではないというのは、現実。 日伊逐次通訳者として15年間以上この業界で生きてきた中で、僕は自分のことを「プロの通訳者だ」と思ったことが一度もない。通訳者の僕は、いつからプロとして活動が始まったか、現在も答えられないかもしれない。 日本で活動している外国人の僕は、日本語を少し話しただけで「日本語がお上手ですね」という決まり文句を言われることが少なくはない。この通訳業界に関係ない人は「外国語を話せる=現場で喋るだけの楽で簡単な作業」というイメージが、残念

チョコの通訳現場で訳せなかった「アレグリア」の解説

通訳現場で滑ってから1年経った。その悔しさが、未だに残っている。 2023年2月12日、ヴェンキのレシピ開発責任者GBさんとチョコレートジャーナリスト市川さんのトークイベントで、ヴェンキのアイデンティティとチョコレートについて日伊通訳を担当させていただいてから訳せなかった言葉がずっと頭に残っていた。この1年間、Allegria (アレグリア)について深く考えた。 チョコレートの話だけではなく、カカオの歴史、ピエモンテの話、チョコレートの中から生まれる感動とアモーレ。1時間

チョコ業界の通訳で僕を困らせた言葉

こんにちは、日伊通訳 マッシ(@massi3112) 2月12日はヴェンキOtemachi One店でヴェンキのレシピ開発責任者GBさんとチョコレートジャーナリスト市川さんのトークイベントがあった。そこで日伊通訳を担当させていただいた。 ツイッターとnoteではフードや食文化の話が多いけど、実は僕の本業は日伊逐次通訳。コロナ禍で休業になっていた本業は少しずつ戻っている中で、故郷の大好きなヴェンキの通訳をする日が来るなんて、通訳者として夢の一つが叶った。しかも、日本唯一のチ

プロの通訳者からnoteで素人の書き手へ

こんにちは、日伊通訳マッシ(@massi3112) 通訳者として、言葉というのは命に近い存在だ。 イタリア人として考えても、「話すこと」より「コミュニケーションを取ること」の方が大切なように感じる。 マッシという人物は、ただ感じていることを出すよりも、みなさんと一つの空間になって会話する方が好きだ。アウトプットとインプットのバランスが大事だと思っている。 コロナで日常生活の感覚と距離がおかしくなる前、自分らしさを守るため、僕を助けるため、新しいことにチャレンジし始めた。そ

通訳者から見た良い言葉の遣い方

こんにちは、日伊通訳マッシ(@massi3112) 通訳者にとって、一番重要な道具は何だと思う?ノートではない。電子辞書でもない。正解は「言葉」だ! 仕事の道具というのは、勉強してきた言葉、経験から学んだ言葉、観察から聞いた言葉、様々だ。 たくさん学んだ言葉の中から、パズルのように文章を作ってアレンジして口から出す。頭の中の本棚にある言葉と、周りで飛び交う言葉。記憶力と吸収力が大切だ。 さらに通訳者にとっては、コミュニケーション力も重要な道具になる。言葉をさらに伝わりやす