第100回おうちでレガシーレポート ~一つの節目 そして101回へ~
筆者が「レガシーのイベントがやりてえ」と思い立ち、2年半前に始めたイベント「おうちでレガシー」。紆余曲折を経ながらも、この度無事100回を迎えることが出来た。本当にありがたい限りである。
アニバーサリーイベントという事もあり、非常に大規模なイベントとなったので、今回はイベント全体の総括をしていこうと思う。普段のカバレージ記事とは少し趣が異なるが、お付き合いいただけられれば幸いだ。
1.参加人数
総勢41名。本当にありがとうございます。まさかこんな規模になるとは思っていなかったです。
ちなみに、筆者がレガシープレイヤーとしてショップのイベントに参加していた際、イベントの人数は多くて16人近く。20人は上回ったところを見たことがない。草の根のイベントでこれだけの人数が集まる事自体、かなり稀なのではないだろうか。
これだけのプレイヤーに参加していただき光栄であるという気持ちもありつつ、一方で41人という人数は、ワンオペでさばくのは不可能であるという事も痛感する。母数が増えた分対応するトラブルも多く、不便に感じられたプレイヤーも一定数いたのではないだろうか。
人数が一定数以上になることが見込まれる際は、事前にスタッフを依頼する必要があるという事を改めて思い知った。まあ夜中だから気軽に人に声を賭けれず、結局ワンオペでやらざるを得ないという側面もあるのだが。
2.デッキ分布
それでは、この41名のプレイヤーが何を用いたのか。それを紐解いていこう。
すごく…なんかこう…すごい真面目なレガシーです!という感想が思わず口をついて出そうなほど、その内容はカチカチ。先に行われたレガシー神挑戦者決定戦でもその存在感を放つディミーアリアニメイトを筆頭に、ミッドレンジやコンボが追従する形となった。
「何故ディミーアリアニメイトが多いのか?」という問いについては様々な切り口が考えられるが、こと本イベントについては、クロックパーミッションをプレイしていたプレイヤーがコチラに移行したという印象が強い。
大型生物によるイージーウィンを可能にするリアニメイトプランや、《悲嘆》によるプロアクティブな干渉は、現状勝利までに十分な手数を稼げないデルバープレイヤーにとっては魅力的に映るものだったのかもしれない。
一方で、じゃあメタデッキしかいなかったのかというと、そんなことはない。
スリヴァーやホガーク、親和といった根強いファンがいるデッキから、エルドラージの皮をかぶったトンデモデッキやヨーリオンを搭載した黒単といった非常にユニークなデッキたち、果てはカウンターを100個乗せて勝利するデッキ、メインボードとサイドボード併せて100枚のデッキと、本イベントに向けて作られたデッキ等、その顔触れは多彩なものであった。
3.上位デッキ
それでは、このディミーアリアニメイトが「勝ち組」だったのかというと…そうでもないところがイベントの面白い所である。
なんと勝ち越しラインに残ったディミーアリアニメイトは0名。全勝はエスパー石鍛冶とバント豆の木という、非常に面白い結果となった。
何故これらのデッキがディミーアリアニメイトを抑えて勝ち越すことが出来たのか。当たり運や練度の差など様々なことが考えられるが、あえて挙げるなら以下の通りだろう。
①アドバンテージの概念がおかしい
基本的にディミーアリアニメイトは、リアニプランを取らない場合、1体1交換に基づいてゲームを進めていく。いわば「ディミーアテンポ」的な立ち回りをすることが多い。
この立ち回りを完膚なきまでに粉砕するのが、《豆の木をのぼれ》などに支えられ成立している「バント豆の木」「スゥルタイ豆の木」と言える。なんせ《豆の木をのぼれ》が着地したが最後、《残忍な切断》《力線の束縛》といった除去や《濁浪の執政》《聖カトリーヌの凱旋》といったフィニッシャー手段が全てアドバンテージ源と化すのである。
この立ち回りを咎めるべく、ディミーアリアニメイトには《オークの弓使い》が採用されていることがしばしばだが、そこは上記デッキも織り込み済み。《致命的な一押し》《ウィザーブルームの命令》《剣を鍬に》《呪文嵌め》などで徹底して対応してくる。
結果、デッキとしての底力で叶わないというケースが多いのではないだろうか。
②デッキの展開力が早い
相手に十分な時間を与えずに勝つというのも、一つの手段と言えるだろう。上位に残っている「赤単プリズン」「ゴブリン」「ボロスイニシアチブ」といったストンピィデッキや、「ジュエルストーム」がこれに該当する。
ストンピィデッキは《虚空の杯》X=1が通ればあっさりと相手の勝ち筋を潰すことが出来るし、ジュエルストームは《オークの弓使い》という天敵がいるものの、裏を返せばそれ以外の妨害は割とどうにでもなってまうタイプのデッキである。
特に、これらのデッキに墓地対策が併用されている場合が厄介極まりなく、例えば上の赤単プリズンを見ると、メインボードに《アガサの魂の大釜》を採用。相手の墓地を潰しつつ、コチラは《Phyrexian Devourer》による一撃必殺のコンボを搭載できるという二段構えである。
③そもそも何をしてくるか分からない
ディミーアリアニメイトに限らず、相手の行動が分からないと、効果的な立ち回りがとれないことが多々ある。この「行動が分からない」という点について、2通りの考え方があると筆者は考える。
一つは上で挙げた「Nic Fit」のように、《老練の探険家》+《陰謀団式療法》のスロット以外が何で埋められているかが分からないものだ。こういう場合、おおよその予想に基づいてプレイしていくことになるが、意識の外から予想外のカードが突っ込まれて負けるケースが多々ある。
そしてもう一つは、マジで何をやってくるか分からないタイプである。上の「黒単ストーム」がそれに該当するのだが、デッキから見て分かる通り、ストームの勝ち筋以外にも、リアニメイトプランや《永劫のこだま》+《オークの弓使い》という一撃必殺技も持っている。これを予想できるプレイヤーは極めて少数だろう。
4.気になったデッキピックアップ
最後に、総勢41名のリストの中から、筆者が気になったデッキを一部ピックアップしていこうと思う。
①親和
「軽量のアーティファクトを一気に並べ、《電結の荒廃者》や《頭蓋囲い》で一気に打点を上げて相手のライフを削り取る。」
フォーマットや時期によって差異はあれど、親和の特徴を挙げると上記のようになるだろう。最近は《ウルザの物語》を軸とし、《物読み》《思考の監視者》でドローを進め、展開を切らすことなく攻め続ける「8Cast」が主流だが、本リストはまさに「親和」と言ってもいいのではないだろうか。
相性のいい《ウルザの物語》は当然採用されていながら、《羽ばたき飛行機械》と《頭蓋囲い》のコンビネーションも健在。更に除去されにくいクロックとして《継ぎ接ぎ自動機械》も採用されており、見た目以上にタフな立ち回りが可能となる。
また、新セット「カルロフ邸殺人事件」から採用されている《謎めいた外套》もナイスカード。護法2を付与しつつ、アンブロッカブルクリーチャーを生み出すこのカードは、ライフを効率的に詰め切ることが可能な新星である。
また、《オパールのモックス》や《産業の塔》を採用しており、色拘束に悩まされることなく様々な対策カードを積むことが出来るのも偉い。メインボードに採用されている《オークの弓使い》や《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》は、相手の行動を阻害しつつ、頃合いを見て攻めに転じることも出来る。
②エルドラージタックス
エルドラージ。2マナランドや《ウギンの目》、《エルドラージの寺院》といった2マナランドから高速で《難題の予見者》や《現実を砕くもの》を投下。相手の行動を阻害しつつ、一気にライフを削り切るデッキである。
…なのだが、このデッキを見ると何か様子がおかしい。エルドラージ以外にも《歴戦の紅蓮術士》《鏡割りの寓話》《第三の道のロラン》《封じ込める僧侶》といったカードが採用されている。
一見すると意味不明なラインナップ。しかし、このデッキの中にあるとあるエルドラージがこれらを意味あるものとしている。そのカードは《変位エルドラージ》。3マナ払うことでクリーチャーの一時追放を可能とするエルドラージである。
このカードを使うことで、《第三の道のロラン》を連打して相手のアーティファクトやエンチャントを根絶やしにするもよし。《鏡割りの寓話》の裏面の《キキジキの鏡像》を追放し、表面として再利用するもよしと、極めて器用な立ち回りをすることが可能となる。
中でも強烈なのが《封じ込める僧侶》。これと《変位エルドラージ》が組み合わされば最後、3マナ払えば好きなクリーチャーを追放領域へ吹き飛ばすことが可能となる。「Death and Taxes」のルーツとなった《コロンドールのマンガラ》よろしく、あらゆる脅威を吹き飛ばすこのデッキは、「エルドラージタックス」と呼んでもいいのかもしれない。
③エンチャントレス
《繁茂》《楽園の拡散》でマナの出力を上げ、《女魔術師の存在》や《アルゴスの女魔術師》でドローを加速し、相手の脅威は《薄氷の上》や《独房監禁》でシャットアウト。徹底したロックデッキであるエンチャントレスだが、その勝ち筋は多様である。
今回このデッキで勝ち手段に選ばれたエンチャントは《らせんの円錐》。能力は至ってシンプル。100マナ注ぎ込んでこの上に当カウンターを100個乗せ、自身のアップキープを迎えれば勝利するというカードである。
そんな100マナもたまらないだろ!という声が聞こえるかもしれないが、そこはレガシー、いくらでもマナを貯める方法は存在する。ここで用いられているマナ加速手段は《即時換装》と《献身のドルイド》のコンボである。細かい説明を省くと、《献身のドルイド》に《即時換装》をエンチャントすることで、無限にマナを得ることが出来るようになるのだ。
これを組んだプレイヤー曰く、「100回記念という事でこのカードを勝ち手段にした。」とのこと。それもただ100個カウンターを積み上げるだけでなく、「100個カウンターを積んだ上で、アップキープを迎えることで勝利する。」つまり、「100回を迎えることが終わりではない。」という激アツなメッセージを込めての採用とのことである。
5.終わりに
いかがだっただろうか。駆け足での紹介となったが、以上がおうちでレガシー第100回のまとめとなる。大きな節目を迎えたという事で、お世話になった皆様に感謝の意を伝えたい。
まず、ここまでこのイベントが続けられたのは、継続的に参加してくださっているプレイヤーの皆様のおかげであることは間違いない。この場を借りて御礼申し上げたい。皆様抜きではこのコミュニティはここまで育つことはなかったと思います。ここまでこのイベントを盛り上げてくれて本当にありがとう。
実況に来てくださった岩SHOWさんにも感謝を。岩SHOWさんと一緒にレガシーのイベントを実況する事が出来たのは、自分にとってもモチベーションが上がったことはもちろん、何より贅沢な時間でした。また、イベント運営に対する心構えは、あなたから学びました。
イベント運営に際し、ジャッジ資格を取ることを勧めてくれた堀川さん。あなたのおかげでイベント運営に対する視野が大きく広がったと思います。「このイベントは絶対続けた方が良い」と背中を押してくれたことも、昨日のように覚えています。
映写研の杉村さんには、配信周りのことでお世話になりました。特にOVALDI(旧LivestreamOverlayManager)周りの設定や運用方法は、杉村さん抜きでは使いこなせなかったと思います。
その他、本イベントに関わってくださった皆様。本当にありがとうございました。
さて、これで正真正銘、第100回のまとめとなったわけだが、当然おうちでレガシーはこれで終わらない。先にもあったが、100回はあくまで通過点。また今週も新しく、第101回のおうちでレガシーを開催予定である。
今週からは新セットである「Fallout」が使用可能とのこと。果たしてこれを使ったデッキはレガシーに現れるのか。はたまた、最近はやりの諜報ギミックを活かしたデッキが台頭してくるのか。ワクワクしながらイベントの主催に臨もうと思う。興味を持ったプレイヤーの皆さまのご参加を、心からお待ちしている。
それでは皆様、今後ともおうちでレガシーをよしなに。