今年のレガシー神挑戦者決定戦/EWE/その他諸々が25倍面白くなる!2024年のレガシーのメタゲーム解説!
今年も10/5に東京にてレガシー挑戦者決定戦が、そして続く10/12にエターナルウィークエンド(EWE)レガシー部門が静岡にて開催予定である。
今年の8月にも大型レガシーイベントであるBig Magic Openが行われたこともあり、多くのレガシープレイヤーがここからの大型イベントに向けて気を高めていっているところではあるだろう。レガシープレイヤー諸兄はぜひともおうちから一歩外へ出て、この大型イベントを楽しんでいってもらいたい。
…さて、ここからはどちらかというと、「レガシーというフォーマットをガンガン遊んだことが無い人」向けの話である。この中にはレガシーを全く遊んだことのない方から、最近レガシーにご無沙汰していた元レガシープレイヤーまで含まれる。
筆者は昨年のこの時期も、レガシーのメタゲーム分析記事をNoteにて投稿させていただいたのだが、実は、去年と今年でレガシーの様相は大きく激変している。
カードプールの広さから、あまりメタゲームに変化が乏しいとされるレガシーだが、禁止改定、そして新エキスパンションや特殊セットのリリースに当たり、また去年とは違った様相を呈し始めているのである。
こんな面白い環境を「基本的にリアニ」「右手エルドラージが板」と切って捨てるのは非常にもったいない。というわけで、今回はレガシー大型イベント前の特別編。筆者が知りうる限りのレガシーの現在の姿や使われているデッキをまとめてみようと思う。
1.レガシーのメタゲーム概略
さて、2024年10月現在におけるレガシーのメタゲームだが、一言でまとめるとこうなる。
去年は確か「コンボやコントロールに新たな要素が追加され、環境が中低速になった」と書いた記憶があるが、この流れを良くも悪くも吹き飛ばした要素がモダンホライゾン3である。
リリース前はモダンホライゾン1および2と比較され、あまり影響力がないんじゃないか?と言われた本エキスパンションだが、そのカードパワーは本物。しっかりとレガシーに影響を与えている。
特に恩恵を受けたのが「青黒を基調とするデッキ」および「エルドラージ」である。前者はこのエキスパンション最強のクリーチャーと名高い《知りたがりの学徒、タミヨウ》《超能力蛙》を無理なく採用することが出来、後者はエキスパンション全体で部族をサポートするカードが増えた結果、とんでもない爆発力を引き起こすに至る。
今までのメタゲームの中心に「ディミーアリアニメイト」がいたことも合わさり、結果的に今のレガシーで結果を出そうとする場合「「ディミーアリアニメイト」及び「エルドラージ」の相手をした時に、きちんと応対することが出来るかどうか?」という事がまず前提条件となる。そういう意味だと、ここ数年で一番分かりやすい環境と言えるかもしれない。
2.環境に居座るメタデッキ解説
さて、ものすごくざっくりとしたメタゲーム全体の解説を済ませたところで、現在メタゲームに居座るデッキがどういう特徴を持つのか、解説していこうと思う。
前回まではアーキタイプごとに分けていたが、今回は「メタゲームの中心を構成するデッキ」「モダンホライゾン3で新たな要素を獲得したデッキ」の分類で分けていこうと思う。
2-1.メタゲームの中心を構成するデッキ
■ディミーアリアニメイト
まずは今までメタゲームの中心に位置していたディミーアリアニメイトの紹介からしていこう。このデッキの特徴は「一撃必殺の技を持つテンポデッキ」と言えばいいだろうか。
基本的に《超能力蛙》や《知りたがりの学徒、タミヨウ》といった優秀な小粒のクリーチャーで立ち回り、隙を見て《納墓》から各種大型クリーチャーを墓地へ放り込む。後は放り込んだクリーチャーをお馴染み《再活性》《動く死体》で釣り上げれば大きな圧力をかけられるというわけだ。
このデッキの中核をなす《超能力蛙》だが、手札に引き込んだリアニメイトクリーチャーを能動的に墓地へ落とすことが出来る他、墓地を追放することで《外科的摘出》から逃れることが出来るというテクニックがあるのも好印象である。
また、最新セット「ダスクモーン」の統率者にて《変化の狂信者》を獲得。奇跡コスト2マナで4/4絆魂という破格のスペックに、場に出た際に墓地のクリーチャーを絆魂カウンターを乗せた状態で釣り上げることが出来る。
これのお供に最適なのが《カザド=ドゥームのトロール》。基本的にブロックされない6/5に絆魂がつくともう手が付けられないだろう。
■ディミーアテンポ
最強と名高いディミーアリアニメイトだが、一方でリアニメイト要素を排しても十分に強いんじゃないか?という前提のもと、新たにメタゲームに食い込んでいるデッキがディミーアテンポである。
従来はクロックの打点を《秘密を掘り下げる者》《ドラゴンの怒りの媒介者》などに頼っていたテンポデッキだが、ここへきて《超能力蛙》や《知りたがりの学徒、タミヨウ》のほか、低コスト高打点クリーチャーである《ネザーゴイフ》を獲得。デルバーも赤も必要ない、完全次世代型テンポデッキとして成立している。
また、ディミーアリアニメイトと異なり、《墓掘りの檻》に代表されるような強烈な墓地対策を能動的に用いることが出来るのも評価点と言える。
■エルドラージ
先に挙げたディミーアリアニメイト、およびディミーアテンポが安定したデッキであるというならば、こちらは反対に上振れた際の勢いが誰にも止められないデッキと言えるだろう。
まず、レガシー特有の各種2マナランドの他、エルドラージ専用2マナランドと名高い《エルドラージの寺院》、「エルドラージのコストを2下げる」と書かれた《ウギンの目》のおかげで、一気にエルドラージを展開することが出来る。
そしてこの圧倒的なマナ加速から飛び出てくるエルドラージはモダンホライゾン3で大幅に強化された。エルドラージのロードである《終わりを告げるもの》、マナ加速をしながら相手のライフを詰めることが可能な《まばゆい肉掻き》、《不毛の大地》が使えるこの環境では「土地を2枚剥奪可能」と書かれた《まき散らす菌糸生物》などなど、強烈の一言である。
そしてこのデッキが大きな武器としてもう一つ獲得したのが《コジレックの命令》。クリーチャー除去、ドロー、墓地対策、落とし子トークンの生成とこのデッキの足りないところを全てこのカードが網羅してくれる。一見地味な落とし子トークン生成も、《まばゆい肉搔き》《終わりを告げるもの》と組み合わせれば立派なフィニッシャーである。
2-2.モダンホライゾン3で新たな要素を獲得したデッキ
■Death and Taxes
土地を縛り付け、相手の行動を封じつつ、こちらのクリーチャーを上手に展開して立ち回る…というのが従来のDeath and Taxesの勝ち筋だったのだが、モダンホライゾン3以降、その勝ち筋の見直しを迫られている。
具体的には、あまりに高効率な動きをしてくるデッキが多くなっていること、およびパーマネントの圧力が上がってきたことを受け、《リシャーダの港》《スレイベンの守護者、サリア》などはオミットされる傾向にある。代わりに《スカイクレイブの亡霊》など、相手のクリーチャーに触れることが可能なカードが増量されている印象だ。
モダンホライゾン3で大きくこのデッキを変えたと言っていいのが《溌剌の牧羊犬、フィリア》である。相手のサイズアップしてしまった《超能力蛙》《濁浪の執政》のリセットに使える他、こちらのEtB生物の使いまわしも可能となる。Death and Taxesの強みをより活かせるこのクリーチャーは、定番となってくること間違いなしだろう。
また、《白蘭の幻影》もナイスカードである。相手の多色土地基盤にメスを入れてもいいし、自分が《トロウケアの敷石》を採用し、そこからマナ加速につなげることも可能となる。
■エルフ
かつてメタの中心に位置していたエルフデッキ。しかし、昨年《オークの弓使い》の登場により、デッキの根幹をなす《垣間見る自然》を全否定された上に自前のクリーチャーを全て除去されるという状況に陥ってしまう。結果、メタゲームの表舞台から姿を消した…はずだった。
だが、ここにきて一転、MOのイベントでも結果を残すようになり、以前のような存在感を放つようになってきているのである。
エルフが表舞台に舞い戻った理由こそ、《有翼の叡智、ナドゥ》である。何らかの能力や呪文がクリーチャーを対象にするたびアドバンテージを稼ぎ出すこのクリーチャーは、まさに《垣間見える自然》と言っていいだけの破壊力を有しており、現在これを主軸に据えたエルフが主流となっている。
《有翼の叡智、ナドゥ》の相方としてはエルフである《クウィリーオン・レインジャー》や《エルフの牧人》が採用されている他、0マナでクリーチャーを対象に取ることが可能な《コーの遊牧民》も採用されている。
また、《有翼の叡智、ナドゥ》と相性のいい《春心のナントゥーコ》も当然のように採用されている。クリーチャーが増えると《ガイア揺籃の地》のマナ出力も大幅に上がるため、最終的に途方もないマナを捻出し、《引き裂かれし永劫、エムラクール》を叩きつける動きも可能となる。
■クレイドルコントロール
こちらは先のエルフから《ガイア揺籃の地》と《春心のナントゥーコ》によるマナ加速を抽出し、空いた枠に様々なユーティリティクリーチャーを採用したデッキである。
マナクリーチャーが多く採用されており、これと《春心のナントゥーコ》《ガイア揺籃の地》を組み合わせることで、一気にマナ加速をすることも可能となる。基本的に賛美を持つ《貴族の教主》《下賤の教主》が採用されており、これを《春心のナントゥーコ》でコピーし、とんでもないサイズで殴りつける奇襲性も備えている。
また、《ガイア揺籃の地》は《聖遺のワイト》《エルフの開墾者》でサーチしてくることも可能だ。この土地を探す動きを活かし、相手の墓地を追放可能な《ボジューカの沼》、除去から身を護る《マダラの鉤爪門》を適宜サーチする動きも強烈である。
最終的に稼いだマナで《孔蹄のビヒモス》を叩きつけてもよし。《自然の秩序》や《緑の太陽の頂点》で適宜状況に応じたクリーチャーをサーチするもよし。とにかくマナが貯まってからできる動きが多く、相手のデッキの理解と何がサーチできるかの把握が必要となってくる。
■セファリッド・ブレックファースト
呪文や能力の対象に取られるとライブラリーを切削する《セファリッドの幻術師》に《手甲》や《コーの遊牧民》の0マナで対象に取れる能力を任意の回数起動する。それにより自分のライブラリーを削り、最終的に《戦慄の復活》のフラッシュバックにより《タッサの神託者》を釣り上げ特殊勝利する。
ざっくりまとめるとこのような動きになるセファリッド・ブレックファーストだが、この「0マナで対象に取れる能力を持つカードを一定数含む」という要素が先に挙げた《有翼の叡智、ナドゥ》にベストマッチ。《有翼の叡智、ナドゥ》でアドバンテージを稼ぎ出し勝利するという戦法を取ることが可能となった。
とはいえ、クリーチャー自体がお世辞にも強力とはいいがたく、最終的に圧倒的なアドバンテージをベースにコンボを通す、コンボが封じられた場合に《有翼の叡智、ナドゥ》によりライブラリーを空にして《タッサの神託者》をプレイするといった動きが前提となるだろう。
■スタイフルノート
軽量だがデメリットが強烈な《ファイレクシアン・ドレッドノート》のデメリットを《激しい叱責》《門衛のスラル》で取り除き展開するデッキがスタイフルノートである。
このデッキの大きな変更点として、まず《もみ消し》が《記憶への放逐》へ置き換わったことが挙げられる。起動型能力は打ち消せないが、それ以上に無色のカード、すなわちエルドラージを打ち消すことが出来るのが重要である。序盤のやり取りが重要なエルドラージ相手に対応ができるというのは大きなメリットだろう。
そしてもう一つが、《虚構漂い》の存在である。3マナ想起コストで唱えることが出来、滅殺で相手のパーマネントに圧力をかけることが出来る。また、唱えた際に2ドローできるのだが、この能力は《激しい叱責》や《門衛のスラル》の影響を受けることはない。まさにスタイフルノートにうってつけのクリーチャーと言えるだろう。
■The Spy
ライブラリーから土地を全て排し、《欄干のスパイ》を叩きつけて自身のライブラリーをすべて削り、《陰謀団式療法》で前方確認した後に墓地に落ちた《タッサの神託者》を釣り上げて勝利する。いわゆるオールインスタイルのコンボデッキ、それがThe Spyである。
モダンホライゾン3の加入により変わったことは何かと言われると、単純に両面土地が増えたという事に尽きる。特にアンタップイン可能な土地が増えたため、今まで取っ散らかっていたデッキの色を収束させることが可能となっている。
なお、墓地を経由するデッキなので、リアニメイトへの風当たりが強い昨今のメタゲームでは注意が必要である。サイドボードに3枚追加で積まれている《タッサの神託者》はそういった側面があるのかもしれない。
■赤単プリズン
パーマネントの質が年々向上しており、特に《鏡割りの寓話》を獲得して以降はメタゲームの重要な一角を占めている赤単プリズン。その存在感は依然として強く、特に《血染めの月》がエルドラージに劇的に効果的という事もあり、今後も見かけることが多いデッキと言えるだろう。
最近は追加のアドバンテージ源+《舷側砲の砲撃手》の弾として《一つの指輪》が採用されていることも多い。序盤に失ったアドバンテージをこれで回復し、負荷カウンターが増え始めたら《舷側砲の砲撃手》で投げ飛ばす動きは強烈の一言である。
また、モダンホライゾン3では《パイロゴイフ》を獲得。盤面に出た際にパワー分のダメージを与えるクリーチャーだが、その条件が「《パイロゴイフ》ないしは他のルアゴイフが出た際に誘発する」というもの。つまり、2枚目の《パイロゴイフ》を出せばダメージが2倍となる。
このギミックと《キキジキの鏡像》との相性が極めてよろしく、《パイロゴイフ》1枚から相手のライフを吹き飛ばしたという事例が後を絶たない。《ネザーゴイフ》《バロウゴイフ》に比べて存在感はないかもしれないが、舐めてかかると笑えない状況になるため、注意が必要である。
■赤単ペインター
《絵描きの召使い》で色を塗り、その上で《丸砥石》でライブラリーを削り切り勝利する。基本的なペインターコンボの骨子はこれであり、更に《ゴブリンの技師》によるアーティファクトサーチ、および《紅蓮破》《赤霊破》を強く運用できることから、基本的に赤を基調として組まれることが多い印象である。
このデッキの最大の強みは、なんといっても《苛立たしいガラクタ》である。マナを支払わない呪文を全て打ち消すことが可能なので、《意志の力》《目くらまし》《否定の力》《活性の力》といったピッチスペルを封じ込み、その上でこちらのコンボを達成しにかかることが出来るのである。
また、いらなくなったら1マナで生贄に捧げドローに変換できるのだが、これと《ゴブリンの技師》が組み合わさると、生贄に捧げた《苛立たしいガラクタ》を墓地から引き上げることが出来、更に追加のドローにつなげていくことも可能である。
また、《栄光の競技場》もナイスカード。これを督励しマナを出すと、そのマナでプレイしたクリーチャーが速攻を持つ。つまり《ゴブリンの技師》の起動型能力をいきなり使うことが可能となる。
■緑単ポスト
サブタイプに「神座」を持つ《雲上の座》や《微光地》を展開し、《運上の座》からマナを一気に捻出。そのマナをベースに様々なビッグアクションを相手に押し付けていく。この土地の名前を元に「ポスト」と呼ばれているデッキ達だが、モダンホライゾン3の登場により、更に様相が変わっている。
最大の追加点は《次元の結節点》。「あらゆるサブタイプを有する」と書かれたこの土地は、当然神座としてもカウントされるため、《運上の座》のマナ出力に貢献してくれるのだが、「ウルザの・塔」「ウルザの・魔力炉」「ウルザの・鉱山」というサブタイプを持つことも注目したいところ。
つまり、この土地と《ウルザの塔》が一緒にあるだけで、《ウルザの塔》から3マナが出るようになるのである。
このように、よりマナ出力が向上したポストだが、相変わらず《不毛の大地》は天敵である。そこで採用されているのが《攪乱のフルート》。カード1種類の起動型能力を防ぎつつ、かつ呪文の場合はプレイする際に追加コストを課すこともできる。これと《苛立たしいガラクタ》で相手の動きを鈍らせつつ、こっちのペースに持っていこう。
■指輪フォージ
1ターン目にマナファクトや《古えの墳墓》を駆使して《一つの指輪》か《神秘の炉》を設置。後はこれらのアーティファクトから追加のマナファクトを並べ、マナを大量に生み出して勝利につなげていく。
このダイナミックな動きが売りである指輪フォージであるが、勝ち手段が基本的に《パラドックス装置》からの無限マナ無限ドロー→《大いなる創造者、カーン》へ到達→膨大なマナを《歩行バリスタ》へつぎ込んで勝利というもので、《一つの指輪》や《神秘の炉》からどうやって《パラドックス装置》につないでいくかというのが課題の一つであった。
その課題を解決し、あろうことかもう一つの勝ち手段を提供してくれたのが《まばゆい肉掻き》である。無色の呪文を唱えると無色マナを生成する落とし子トークンが生成されるため、これだけで《神秘の炉》の疑似ドローがより安定するようになる。
そしてこの《まばゆい肉搔き》、なんと無色のクリーチャーが盤面に出るたび、相手のライフを1点削っていくことが出来るのである。つまり、コイツさえ展開できていれば、別に《パラドックス装置》にたどり着かなくても、アーティファクトを適当に並べていくだけで相手のライフを削り取ることが可能となる。
3.終わりに
以上、レガシーのメタゲームの解説をざっくりとだが行った。今週末から開催される神挑戦者決定戦やEWEの参考になれば幸いである。
去年の記事でも書いたが、上で挙げたデッキがレガシーの全てではない。ほぼありとあらゆるカードが使えるレガシーでは、あなたの想像のはるか上を行くデッキやカードと対峙することもあるだろう。これこそがレガシーの難しい所であり、醍醐味でもあるところだ。是非存分に味わってほしい。