第101回おうちでレガシー カバレージ Round1 スン(ディミーアリアニメイト) VS 柳統也(スローデプス)
ここに「スローデプス」というデッキがある。デッキ名の「スロー」はSlowという意味であり、《暗黒の深部》から《マリット・レイジ》トークンを生み出すまで、じっくりと立ち回るデッキである。最近で言うと「セレズニアデプス」がこの好例と言えるだろう。
しかし、今回「柳統也」が持ってきたこのスローデプスは一味違う。デッキリストに4枚搭載されたスローな生物《のし歩くメガ・スロス》が目を引く。これと《暗黒の深部》を組み合わせると一気に8/8の巨体を押し付けることが出来るのである。
この異色ともいえるデッキに立ち向かうは「スン」。彼は「ディミーアリアニメイト」を選択。《再活性》による高速展開を可能にしつつ、じっくりと立ち回る事が出来、ある意味「スロー」なデッキともいえる。
互いに「スロー」なデッキ同士、じっくりと腰を据えた戦いが幕を開ける。
■Round 1
柳は《エルフの開墾者》を展開し、スンの墓地利用に対しけん制していく。対するスンも《不毛の大地》をセットし、柳の《暗黒の深部》ルートをけん制。いきなり互いに膠着状態に陥る。
状況を打開しようと柳は《北方行》をプレイするが、これは《目くらまし》により打ち消される。その間隙を突き、スンは《オークの弓使い》を展開する。
が、レガシーを代表するこのクリーチャーも、柳の《エルフの開墾者》を前に動けない状況。業を煮やしたスンは、《北方行》を唱えたことで《エルフの開墾者》の起動マナが無くなったことを確認し、《納墓》をプレイ。《残虐の執政官》を墓地に埋め、《動く死体》で釣り上げようとする。
しかし、ここに柳は想起コストで《忍耐》。スンの墓地を吹き飛ばし、事なきを得る。スンの出鼻をくじき、続いて柳は《演劇の舞台》を設置。こちらもコンボに王手をかけていく。
じわじわとしたやり取りが続く中、スンは《カザド=ドゥームのトロール》をプレイ。パワー6の巨体でゲームを終わらせにかかる。柳は《エルフの開墾者》から《暗黒の深部》を持ち込むが、この時点でアクティブなマナは1マナ。《演劇の舞台》を起動できないと踏んでか、スンは更に2体目の《カザド=ドゥームのトロール》を展開。一気にゲームを畳みにかかる。
が、柳はターンを貰うと、ここで手札から《エルフの指導霊》を追放。残ったマナと併せて《演劇の舞台》を起動。6/5を大きく上回る20/20という規格外の邪神を前に、スンは盤面を畳んだ。
■Round 2
2ゲーム目、柳は《虚空の力線》を展開し《エルフの開墾者》と好スタートを切るが、スンは《致命的な一押し》で対応。その上で《ダウスィーの虚空歩き》を展開し、柳のライフを削りにかかる。
何とか二の矢を継ぎたい柳、しかし、ここで痛恨のマナスクリューが発生してしまう。更にスンは《謎めいた外套》も展開。柳の《紅蓮破》は《目くらまし》で対応しつつ、一気に圧力を高めていく。
結局、柳は有効打が取れず投了。1ゲーム目とは対照的に早期に決着がつくこととなった。
■Round 3
最終ゲーム。柳は《成長の揺り篭、ヤヴィマヤ》をセットし、続くターンで《暗黒の深部》を展開。そしてデッキコンセプトである《のし歩くメガ・スロス》を展開しようとする。
が、これはスンが冷静に《意志の力》で対応。そのまま《ダウスィーの虚空歩き》を展開し、2ゲーム目同様に早期決着を狙いにかかる。
対する柳は《鏡割りの寓話》をプレイ。ゲーム中盤~終盤にかけて極めて強力な立ち回りを可能とするカードを前に、スンは焦りを感じたか《再活性》を柳の《のし歩くメガ・スロス》にプレイ。一気に圧力を高め、ゲームを畳みにかかる。
この時点で両プレイヤーに齟齬があるとすれば、現在のゲームのテンポ感であろう。
8/8の巨躯はゲームを畳むうえでは確かに魅力的にである。一方で、追加コストとしての10点ライフロスは無視できない代償であり、きちんと現在のゲーム展開を評価している必要がある。
現在、柳の盤面には長期的には脅威となるものの、すぐさま脅威をもたらすことのない《鏡割りの寓話》1枚のみ。つまり、現在のゲームの展開は「スロー」なもの、少なくとも自分は次のターンに負けることはない。
スンの《再活性》はこのような考えに基づくものだろうし、スンに限らず多くのプレイヤーはそういった判断を下すに違いない。
が、柳は全く違う考えでゲームを進めていた。
「このデッキは断じて『遅いデッキ』ではない。」
次のターン、この判断を嘲笑うかの如く、柳はこのデッキの真のコンセプトを披露していく。
彼が取り出したクリーチャーは《舷側砲の砲撃手》。誇示によりクリーチャーを生贄に捧げ、そのマナコスト+2点のダメージを与えることが可能なクリーチャーである。
このデッキの「スロー」は「Slow」という意味ではない。盤面に早期に着地させた《のし歩くメガ・スロス》を「Throw」ことで、一気にライフを詰め切ることを可能とした、極めて攻撃的なデッキなのである。
予想だにしていないクリーチャーを目の前に目を白黒させるスン。更に柳は想起コストで《忍耐》を展開。これを《舷側砲の砲撃手》でスンの顔面にぶつけることで試合終了。「スロー」なデッキを駆使した柳に軍配が上がることとなった。