今年のEWE/エタパ/TLSが20倍面白くなる!2023年のレガシーのメタゲーム解説!
今年も11/25に常滑にてエターナルウィークエンド(EWE)レガシー部門が、そして続く12/10および12/24にはエターナルパーティの開催が予定されている。更に、12/16には招待制イベントであるThe Last Sunが開催され、コチラでもレガシーがフォーマットとして指定されている。
今月の頭にも大型レガシーイベントであるレガシー神挑戦者決定戦が行われたこともあり、多くのレガシープレイヤーが年末の大型イベントに向けて気を高めていっているところではあるだろう。レガシープレイヤー諸兄はぜひともおうちから一歩外へ出て、この大型イベントを楽しんでいってもらいたい。
…さて、ここからはどちらかというと、「レガシーというフォーマットをガンガン遊んだことが無い人」向けの話である。この中にはレガシーを全く遊んだことのない方から、最近レガシーにご無沙汰していた元レガシープレイヤーまで含まれる。
筆者は昨年のこの時期も、レガシーのメタゲーム分析記事をNoteにて投稿させていただいたのだが、実は、去年と今年でレガシーの様相は大きく激変している。
カードプールの広さから、あまりメタゲームに変化が乏しいとされるレガシーだが、禁止改定、そして新エキスパンションや特殊セットのリリースに当たり、また去年とは違った様相を呈し始めているのである。
こんな面白い環境を「みんな豆食ってる」「色がクッソ汚い環境」と切って捨てるのは非常にもったいない。というわけで、今回はレガシー大型イベント前の特別編。筆者が知りうる限りのレガシーの現在の姿をまとめてみようと思う。
1.レガシーのメタゲーム概略
さて、2023年11月現在におけるレガシーのメタゲームだが、一言でまとめるとこうなる。
まず、「デルバーはもはや現レガシー環境のメタゲームの中心にいない」という事はハッキリと言っておく必要があるだろう。
去年のこの時期にイニシアチブストンピィと一緒に環境を席巻していたイゼットデルバーだが、今年の春先に強力なアドバンテージ源である《表現の反復》が禁止される。
これに伴い、今まで息切れ知らずで戦えていた状態から一転。テンポよくライフを詰めていける反面、アドバンテージを得られず息切れしやすくなるデッキになってしまう。
それでも禁止改定直後は《ドラゴンの怒りの媒介者》《濁浪の執政》といった強力なクリーチャーに物を言わせて何とかメタゲームの一角を担っていたが、「指輪物語:中つ国の伝承」にて《オークの弓使い》が環境に現れたことで状況が一転。今まで強力なクロックだった《秘密を掘り下げる者》は除去の的へとなり果ててしまう。
更に、デルバーが得意としていたコンボデッキも、《完全なる統一者、アトラクサ》《鏡に願いを》といったカードを獲得。一気に安定性と速度が向上し、デルバーの《意志の力》《目くらまし》といった妨害を平気で乗り越えてくるようになる。
挙句の果てには、デルバーが苦戦するコントロールは《一つの指輪》《豆の木をのぼれ》《ロリアンの発見》といった強力なカード、更にイニシアチブストンピィは《進め、エオルの家の子よ!》という便利なフィニッシャー手段を獲得する始末。
結果、デルバーは以前ほどの勢力を維持できず、多色化によって何とかデッキパワーを維持しているという印象である。
では、クロックパーミッション自体が完全に死滅したのかというと、そういう訳ではないというのがレガシーの面白い所である。
先にも言った通り、デルバーデッキの中で弱体化したカードは《秘密を掘り下げる者》のみである。つまり、もう少しクリーチャーの質を高めてやれば、まだ十分戦うことが出来るのだ。いわゆる「〇〇マークタイド」と呼ばれるデッキ群がこれに該当する。
《秘密を掘り下げる者》を捨てて安定性を得ることにより、逆に1ターン目の動きはデルバーほど高速でなくなっていく。これに伴い、レガシー全体のゲーム速度が遅くなり、現在のレガシーは少しゆったりとしたテンポ感となっている印象である。
2.環境に居座るメタデッキ解説
さて、ものすごくざっくりとしたメタゲーム全体の解説を済ませたところで、現在メタゲームに居座るデッキがどういう特徴を持つのか、解説していこうと思う。
2-1.アグロ/クロックパーミッション
■デルバー(ティムールデルバー/グリクシスデルバー)
去年までは一大勢力を誇っていたイゼットデルバーだが、《表現の反復》を失った穴は大きすぎた。この空いてしまった穴を埋めるために様々なカードが試されてきたが、結局のところ、多色化に活路を見出すことになった。
その中でも人気が高いのが、《探索するドルイド》を採用するティムールデルバー、そして《オークの弓使い》を採用するグリクシスデルバーの2つである。
《探索するドルイド》の出来事《獣の探索》で一時的なアドバンテージを得ていくのがティムールデルバーの基本戦術となる。《探索するドルイド》自体も強力であり、基本的に0~1マナで唱えられる呪文で構成されるデルバーデッキなら、あっという間にサイズが膨れ上がること間違いなしである。
一方のグリクシスデルバーは《オークの弓使い》を採用。単純なカードパワーはもちろんのこと、相手の追加ドローをけん制しつつ、こちらに害をなす相手の《オークの弓使い》を処理するという側面も強い。
また、多色化により、サイドボードで対策カードを採用しやすくなったのも注目点だろう。ティムールデルバーは《溜め込み屋のアウフ》などに代表される置物対策や《時を超えた英雄、ミンスクとブー》という強力なフィニッシャー、グリクシスデルバーは《思考囲い》によるコンボ妨害や《疫病を仕組む者》といった横並びデッキに対するけん制手段を獲得している。
■ティムールマークタイド
先ほど説明した通り、《秘密を掘り下げる者》に対する信頼性の低下から、デルバーデッキをより太くした構成にしたデッキが増えている。この「ティムールマークタイド」もそんなデッキの一つと言えるだろう。
このデッキ最大の特徴は、なんといっても《タルモゴイフ》だろう。確かに総合的なサイズ感では《濁浪の執政》や《探索するドルイド》に劣るかもしれないが、追加の大型クロックとしては申し分ないだろう。《ミシュラのガラクタ》《退去の印鑑》でサイズアップを図ることが出来るのも大きい。
また、追加のアドバンテージ源で《豆の木をのぼれ》を採用しているケースもある。この場合は《タルモゴイフ》をオミットし、《騒ぎ回るマンドリル》《天上の餌あさり》といった探査クリーチャーを採用していることが多い。
いずれにせよ、墓地が重要となってくるので、《ドラゴンの怒りの媒介者》はデルバーデッキから続投されている。諜報で能動的に墓地を増やせるほか、ドローの質向上につながるのはかなり大きい。
■ディミーアマークタイド(UB Scam)
《オークの弓使い》には《オークの弓使い》が強い。ならば、相手よりも多くの《オークの弓使い》を使うことが出来れば、そのデッキは最強なのではないか?ディミーアマークタイドの根幹を形成するのは、そんな理論である。
もちろん5枚以上の《オークの弓使い》は採用できないわけで、何かしら工夫が必要である。そこで白羽の矢が立ったのが《再活性》。わずか1マナで墓地に落ちた《オークの弓使い》を再利用出来る、破格の性能を持ったソーサリーである。
そして、その《再活性》と相性のいい《悲嘆》《カザド=ドゥームのトロール》を採用。《悲嘆》で相手の手札を2枚抜けばゲームプランを大幅に狂わせることも出来るだろうし、《カザド=ドゥームのトロール》は一度場に出してしまえば、ほとんど止める手段がない。そしてどちらも簡単に墓地に送ることが出来るという特徴がある。
また、1~2枚ほど採用されている《サウロンの交換条件》は非常に強力なアドバンテージ源である。手札が効果的に増えるのもさることながら、墓地に送ったカードは《濁浪の執政》のコストに充てられるというのも大きい。
■4Cマークタイド
「強いカードを全部入れればデッキも強くなるんじゃない?」この理屈に則って作られたデッキをジャンクデッキと呼ぶ。この4Cマークタイドは、まさにそのジャンクデッキの王道と言えるだろう。
ベースとなるのはティムールマークタイドだが、そこに更に《オークの弓使い》を投入。白以外の4色で構成されたこのデッキは、クロックパーミッションというよりもミッドレンジという方が適切かもしれない。
間違いなくデッキパワーだけでみれば、ここまで挙げてきたデッキの仲で最強クラスと言っても過言ではない。が、安易に多色化を推し進めると、足元を掬われるのがレガシーの常。相手の《不毛の大地》や《血染めの月》には十分ご注意を。
特に《不毛の大地》は多くのデッキが採用しているため、サイドボードから《壌土からの生命》を採用するケースも見受けられる。
■イニシアチブストンピィ
1ターン目に《虚空の杯》などの妨害手段を叩きつけ、その後《混沌の洞窟の冒険者》や《練達の地下探険家》でイニシアチブを獲得。後は《地下街》を掘り進めて相手のライフを一気に削り勝利する。これがイニシアチブストンピィの基本的な戦術である。
余りの安定性の高さとイニシアチブへの干渉手段が限定的であることから、去年のEWE以降ありとあらゆる非クリーチャーデッキを根絶やしにしてきたこのデッキだが、《白羽山の冒険者》の禁止に伴い、ずいぶんとデッキの勢いは落ち着いたように見える。
しかし、あくまでそれは適正なパワーに戻っただけの事。マナ加速を絡めて早期に飛び出てくる《選定された法の番人》や《エメリアのアルコン》は今でも脅威そのものである。
また、最近は《進め、エオルの家の子よ!》を獲得。これまで少数精鋭のクリーチャーで攻め切る戦法しか取れなかったのが、横並びの戦法も取れるようになったのは非常に大きい。更に統治者も得ることが出来るため、手札を使い切った状態で更に二の矢が用意できるようになった。
地味に有用なエンチャント《精霊界との接触》。普通に使えば《忘却の輪》相当のカードなのだが、魂力能力でクリーチャーをブリンクすることが出来る。
相手の《濁浪の執政》《探索するドルイド》のサイズダウンや、軍団トークンなどの処理。そしてなんといっても、イニシアチブ持ちのクリーチャーに撃つことで、再度イニシアチブを誘発させることが出来る。まさにこのデッキのためにあるカードと言っても過言ではない。
■黒単
今まで黒単というと、《トーラックへの賛歌》《小悪疫》《陥没孔》《ヴェールのリリアナ》などでリソースを締め上げ、《呪われた巻物》でチミチミと相手のライフを削り勝利するといった クッソ性根の悪い 黒単POXが主流だった。
しかし、現在は《ダウスィーの虚空歩き》《オークの弓使い》《敵対工作員》《悲嘆》といった強力な黒のクリーチャーを獲得しており、これらを《暗黒の儀式》を経由して早期に叩きつけ、圧力をかけていくというのが昨今の黒単のトレンドである。
特に強力なクリーチャーが《黙示録、シェオルドレッド》。《稲妻》《致命的な一押し》といった除去で処理されづらく、盤面が膠着したとしても、自分は延命しながら相手のライフを削っていくことが出来る。フォーマットを問わず活躍するクリーチャーだが、レガシーでもそのパワーは健在である。
ディミーアマークタイドでも触れた《再活性》は、このデッキにおいても強力なカードとなる。《悲嘆》を使いまわしてもよし、サイクリングした《カザド=ドゥームのトロール》を釣り上げてもよし。消耗戦になった際に墓地に落ちたカードを拾うもよし。色々活用してやろう。
■Death and Taxes
《リシャーダの港》《不毛の大地》で相手の土地を縛りつつ、自分は《霊気の薬瓶》からクリーチャーを展開。そして《スレイベンの守護者、サリア》などで相手の動きを阻害しながら殴り勝つ。由緒正しいアグロデッキであるDeath and Taxesだが、最近はその構成に変化が見られつつある。
基本的に白単色で組まれることが多かったDeath and Taxesだが、ここ最近は《オークの弓使い》を使うために、黒がタッチされていることが多い。それだけ強力なカードと言える。
また、元々《石鍛冶の神秘家》《ちらつき鬼火》《スカイクレイブの亡霊》《孤独》とEtB能力を持ったクリーチャーが多いため、これと相性のいい《空を放浪するもの、ヨーリオン》を相棒に指定。盤面が膠着したらサイドボードから引っ張ってきて、そのままEtB能力を再利用していくわけである。必要なクリーチャーは適宜《護衛募集員》からサーチすれば、ライブラリーが80枚になってもOKというわけだ。
地味に活躍しているのが《剛毅なるサムワイズ》。《不毛の大地》などの使いまわしが主たる目的だが、指輪の誘惑により任意のクリーチャーを伝説化できる。これにより好きなクリーチャーを《カラカス》で手札に戻し、再度展開して能力を利用するという事が可能となるのだ。
■8Cast
0マナアーティファクトを多数展開し、親和によってマナが軽減された《思考の監視者》《物読み》で手札を補充。後は《ウルザの物語》から出てくるトークンや、《河童の砲手》を叩きつけてゲームセット。これが高速アグロである8Castの勝ち手段である。
《湖に潜む者、エムリー》を活用することで、ほぼ手札が尽きることが無くなるデッキなのだが、追加ドローを多用するため、《オークの弓使い》という天敵を前に、一時は衰退を余儀なくされた経緯も持つ。
そのデッキが再びメタゲーム上に現れた最大の理由が《継ぎ接ぎ自動機械》である。要は《河童の砲手》同様、アーティファクトを唱えることで巨大化していくクリーチャーなのだが、護法2がめっぽう硬い。
能力からも守ってくれるので、《オークの弓使い》を捌きながら、一気にサイズを大きくして殴り勝つというのが基本戦術となる。
最近は《オパールのモックス》《水連の花びら》と併せて《産業の塔》も採用し、サイドボードから青以外のカードを取ってくることもある。筆者が確認した例だと《窒息》なんかも採用している例があった。メタに応じて多彩なサイドボードが取れるのも強みの一つである。
2-2.ミッドレンジ/コントロール
■多色コントロール
基本的に《剣を鍬に》《虹色の終焉》《至高の評決》《終末》といった除去で盤面を整えつつ、《意志の力》《否定の力》といった打ち消しで相手の行動を阻害する。そして相手の息切れに合わせ、フィニッシャーを叩きつけて勝利する。これがコントロールの基本形となる。
その性質上、青と白が基調となるはずだが、上のサンプルリストを見ていただけられれば分かる通り、それ以外の色も多分に含めることで、あらゆる強力なカードをつぎこみ、圧倒的なデッキパワーを有するようになっている。
この一見破綻したマナベースを支えるカードが《ロリアンの発見》である。島サイクリングを持っているため、フェッチランド同様、《Volcanic Island》《ゼイゴスのトライオーム》のように、島タイプを持つ多色土地を持ってくることが可能なのだ。ソーサリーの性能としても申し分なく、マナが貯まれば3ドローできる。
あらゆる多色土地を使うので、追加の除去枠として《力線の束縛》が採用されている。反面、環境の中~低速化に伴い、《虹色の終焉》の枚数は減っているのが最近のトレンドだ。
また、新たなるアドバンテージ源として《豆の木をのぼれ》を採用している多色コントロールも見かけるようになった。この場合は《空を放浪するもの、ヨーリオン》を相棒として採用し、《豆の木をのぼれ》と相性のいい《終末》や《力線の束縛》を積極的に採用する場合が多い。
■土地単
相手の土地を《不毛の大地》《幽霊街》で枯渇させ、クリーチャーは《The Tabernacle at Pendrell Vale》で対処。自分の土地は《壌土からの生命》で再利用しつつ、頃合いを見計らって《暗黒の深部》+《演劇の舞台》のコンボでマリット・レイジトークンを叩きつけて勝利する。土地単の動きを一言でまとめるとこう表現できる。
「モダンホライゾン2」で《ウルザの物語》を獲得したことで更に攻撃性が向上。構築物トークンを一気に並べて盤面を制圧し、リソース枯渇で何もできない相手に対して悠々と殴り勝つシーンを見かけることも増えた。
それから時は流れ2023年。デッキの構成自体に大きな変化はないが、ここ数ヶ月のリストを眺めると、メインボードから《抵抗の宝球》がフル投入されていることが多い。
元々クリーチャー主体のデッキに対しては無類の強さを誇る土地単だが、実はコンボデッキに対してはほぼ耐性が無いというのも事実。特に最近はコンボが隆盛していることもあり、メインボードから干渉手段を搭載しているというわけである。
■職工エルフ
事の発端は、エルフが《悪魔の職工》をデッキに入れたことに端を発する。元々《ガイア揺籃の地》や各種マナエルフのおかげでマナには困らないので、必要に応じて好きなクリーチャーをサーチできる用途としての採用だったのだろう。
そこから時は流れ「指輪物語:中つ国の伝承」により、《オークの弓使い》が加入。タフネス1のクリーチャーしか基本的に採用されておらず、《垣間見える自然》でドローを掘り進める戦略を取っていたエルフは、たった1枚のこのカードのためだけに、デッキの大幅な見直しを強いられる。
そして行きついた結論は「《悪魔の職工》や《緑の太陽の頂点》《自然の秩序》で適宜必要なクリーチャーを盤面に呼び込む枠組みは残し、タフネス1のエルフを大幅リストラして《垣間見える自然》もオミット。」という、苦渋の決断だった。
そうして出来上がったのが「デッキ名にエルフとあるのにデッキにはエルフがほぼいない」不思議なデッキ、職工エルフなのである。上のリストに至ってはエルフが全く採用されておらず、もはやその看板に嘘偽りしかないようにも感じる。
そんな何かの冗談みたいなデッキだが、その実力は本物。メタカードである《忍耐》《溜め込み屋のアウフ》を始め、単騎で盤面を制圧可能な《飢餓の潮流、グリスト》や、莫大なアドバンテージをもたらす《偉大なる統一者、アトラクサ》など、採用されているクリーチャーは一線級のものばかりである。
2-3.コンボ
■スニーク・ショー
去年こんなことを書いたスニーク・ショーだが、遂に2023年になって状況が一転。強力な大型クリーチャー《偉大なる統一者、アトラクサ》を獲得。
《グリセルブランド》と異なり、ライフを払わずに手札が増えること。そして接死がついているため、《濁浪の執政》をはじめとする大型クリーチャーとも相打ちが取れるこのクリーチャーは、長らくこのデッキが待ち望んでいたものである。これにより、デッキの安定性と単純な突破力が大幅向上。ついにレガシーのメタゲームに再び現れるようになった。
また、ほぼ同時期に獲得した《ヴェズーヴァの漂う者》の存在も大きい。ライブラリートップのクリーチャーのコピーとなれるこのカードはまさに追加の《実物提示教育》であり、いきなり《引き裂かれし永劫、エムラクール》と化して相手に襲いかかることも可能である。
中~低速の環境においては、《全知》+《実物提示教育》のパッケージを有するオムニテルと異なり、一気に勝負を決められるというのも大きな利点であるだろう。
■リアニメイト
元々去年から一大勢力を築いていたコンボデッキであるリアニメイトも、《偉大なる統一者、アトラクサ》の恩恵を受けている。
《偉大なる統一者、アトラクサ》の能力の恩恵を受けるため、追加のリアニメイト手段として《Dance of the Dead》を追加したり、《鏡割りの寓話》を採用したりしている工夫も見受けられる。
また、先のスニーク・ショーが完全に《偉大なる統一者、アトラクサ》に移行したのに対し、《グリセルブランド》が一定数採用されているという点も注目である。相手の《外科的摘出》に対する対策の他、《悲嘆》《暴露》といった手札破壊を連打するために、一気に手札を補充する手段としての《グリセルブランド》はオンリーワンである。
そのせいか、最近は《浅すぎる墓穴》も採用されるケースが見受けられる。《グリセルブランド》と併せ、一気に手札を稼ぎ出すことも可能となっている。
なお、《グリセルブランド》は《オークの弓使い》に弱いという側面もあるのだが、一方で《偉大なる統一者、アトラクサ》はコントロールに弱いという事もあり、メタゲーム次第でこのバランスは変わってくると思われる。
サイドボードは対墓地対策カードのほかに、手札から直接コストを踏み倒す《実物提示教育》や、墓地対策件アタッカーである《ダウスィーの虚空歩き》が採用されているのが一般的である。
■ANT
由緒正しいストームデッキであるANTも、令和に入って《Pair o' Dice Lost》《願い爪のタリスマン》という強力なカードを獲得してはいた。
しかし一方で、デルバーデッキの隆盛に伴うメタゲームの高速化に伴い、勝負を決める前にライフが尽きてしまうケースが見受けられ、禁止改定によりデルバーデッキが沈静化したと思ったら《オークの弓使い》の登場により、なかなか思うように活躍できなかったデッキでもある。
このデッキがメタゲームに躍り出た最大の理由は《鏡に願いを》である。4マナ以下のカードをサーチし、協約コストを支払うことでそれを唱えることが可能となる。
そしてその相方として抜擢されたのが待機を持った《ヨーグモスの意志》こと《ガイアの意志》。これを踏み倒すことで、墓地に落ちた《ライオンの瞳のダイヤモンド》《暗黒の儀式》などを再利用。更に墓地の《鏡に願いを》を唱えなおし、《苦悶の触手》をサーチして勝利する。というのが昨今のANTの主な勝ち手段である。
協約コストを支払うため、《金属モックス》や《嘆きの大霊堂》あたりが使われることが多いが、最近は《ウルザの物語》にも注目されている。協約用に構築物トークンを用意し、第三章から《ライオンの瞳のダイヤモンド》などのマナ加速手段をサーチできる。
■ギャラクシーカスケード
最後に、最近話題になっていたピーキーなコンボデッキを紹介しよう。
やることは至って簡単。環境のありとあらゆる2マナランドを展開し、6マナたまったところで続唱を持つ6マナのクリーチャーを展開。これだけである。
こうすることで、5マナの《創造の技》が続唱により唱えられる。ライブラリーをシャッフルして再度ライブラリートップを踏み倒して唱えるため、再び続唱を持つカードにアクセスできる。後はこれが延々と繰り返されるため、盤面に一気にクリーチャーが展開され、一気に相手のライフを削り切ることが出来るという寸法である。
また、《創造の技》は実演という能力を持っており、自分と相手にそれぞれ《創造の技》のコピーを提供することが出来る。そのため、打ち消しに滅法強く、安定して上記のループを繋げることが出来るのである。
こう書くと極めて強力なデッキに思われるが、基本的に3ターン目までは何も動くことが出来ないので、《不毛の大地》で土地を割られたり、手札破壊で続唱クリーチャーを捨てられてしまったりして動きが止まってしまうこともあるのがご愛敬。捨てた続唱クリーチャーを《再活性》で釣られるディミーアマークタイドやリアニメイトは天敵である。
3.終わりに
以上、レガシーのメタゲームの解説をざっくりとだが行った。来週から開催されるEWEやエターナルパーティーの参考になれば幸いである。
去年の記事でも書いたが、上で挙げたデッキがレガシーの全てではない。ほぼありとあらゆるカードが使えるレガシーでは、あなたの想像のはるか上を行くデッキやカードと対峙することもあるだろう。これこそがレガシーの難しい所であり、醍醐味でもあるところだ。是非存分に味わってほしい。