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頭髪事情
若い頃、人からよく「髪が多いね」と言われていた。なるほど髪が伸びるとサイドが妙に膨らんで、影だけ見ると、まるでヘルメットをかぶっているようだった。
ハゲる家系ではないし、おそらくは死ぬまでこの重そうな頭を抱えていくものだと思い、頭の蒸れる夏場などは憂鬱な気分になることもあった。
ところが、年をとるにつれそうでないことがわかった。白髪が増えていくごとに毛細りしてきたのだ。おかげで髪のふくらみはなくなり、気分的には軽くなった。
だが、そのことで喜んだわけではない。白髪と毛細りのせいで、髪を洗うと、地肌が透けて見えるようになったのだ。
『もしやハゲていっているのでは?』と心配したのだが、別に髪が減ったわけではなかった。その証拠に、床屋に行くと相変わらず「髪が多いね」と言われているのだ。
だけど、床屋はそう言いながらも、ぼくの髪をスクことはしなくなった。