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悲しきマッサージチェア

 昨日は休みだったのだが、何もやることがなかった。あまりに暇だったので、運動をした後に、嫁さんの部屋に置いてあるマッサージチェア(あんま椅子のことを今はそう呼ぶらしい)にかかった。それを使うのは今年初めて、というかおよそ1年半ぶりだ。

 そのマッサージチェアだが、5年程前に嫁さんの会社で従業員に斡旋していたものだ。その企画があった時に、嫁さんが、
「マッサージチェアの安売りやっているんだけど、いる?」と聞いてきた。
 ぼくは「いらない」と言って断ったのだが、付き合いのいい嫁さんは断りきれず、「さらに安くしてくれたよ」などと適当な理由をつけて買ってきたのだった。

 それから一週間ほどして、そのマッサージチェアはうちにやって来た。ちょっと見は豪華に見える。が、よく見るとやはり安物だ。搭載された機能も、その節々に安物感が漂っている。
 使ってみると、これが酷い。下手くそな整体師がやっているようで、ただただ痛い。初めて使った時、翌日揉み直しが必要になったほどだ。ぼくが、
「せっかく買うなら、もう少しいいのを買ってこい」と文句を言うと、嫁さんは、
「これしか斡旋してなかったんよ」と言う。

 現在そのマッサージチェアは、洗濯カゴなどを置く物置台になっている。嫁さんは、
「これ、ちょっと物を置くのに都合がいいっちゃね」などと仰っている。
 この機械が本来の実力を発揮できるのは、昨日みたいにぼくが暇な時だけだ。実に悲しいマッサージチェアである。

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