【詩風】ラバー・ソウル (2012/11/20)
部活を引退したぼくたちを待っていたのは、
慣れない夕方ラッシュだった。
それまでわりと遅く家に帰っていたので、
いつもバスはガラガラだった。
短い乗車時間だったけど、
だだっ広い空間の中でぼくたちは
疲れた体を横たえて寝ていた。
それがあまりに心地よかったので、
窮屈な夕方ラッシュは地獄に思えた。
地獄の思いをして早く家に帰っても
受験勉強なんぞするはずもなく、
西日の差し込む三畳部屋に引きこもっては、
ビートルズのラバー・ソウルに針を落として、
手当たり次第に本を読んでいた。
今でもラバー・ソウルを聴くたびに
オレンジ色が連想されるのは、
夕日に照らされた三畳の部屋が
心の中でよみがえるからに違いない。