見出し画像

よいお年を


1,
「よいお年を」
社会に出てから、この言葉を何度口にしただろう。年末に会った人との別れの挨拶は、すべてこの言葉を使っている。

 実はこの言葉、社会に出る前には、一度も口にしたことがなかったな。いったいこの言葉、どうやって覚えたのだろう。別に「年末の挨拶は“よいお年を”と言わなければならん」などと強要された覚えはない。ということは、見よう見まねで覚えた挨拶なのだろう。

2,
 それでは社会に出るまで年末の挨拶は、いったい何と言っていたのだろう?

 考えてみると、別れの挨拶は年をとるにつれ変わっている。
 高校を卒業する頃までは、いつも「バイバイ」だった。
 その後、社会に出るまでは「じゃあね」とか「またね」だった。
 社会に出てからは、「お疲れさん」で、「バイバイ」と言ったことはない。

 それらの言葉は、強要されて言い出したわけではない。
 また、高校を卒業したから「バイバイ」をやめて「じゃあね」と言おうとか、社会に出たから「じゃあね」をやめて「お疲れさん」と言おうとか決めていたのでもない。
 すべて流れの中で変化してきたものだ。

 ということなので、社会に出る前の年末の挨拶は、「バイバイ」とか「じゃあね」ですませていたのだと思う。

3,
 社会に出てからは、以前からの友だちにも「よいお年を」などと言っているが、これが照れ臭い。言う前から、「何で、こいつに挨拶せないけんとか」と思ってしまう。
 言っている最中も、ニヤニヤして「ばーか」などと思いながらやっているので、ありがたみも何もないだろう。まあ、相手もそう思いながらやっているんだろうけど。

いいなと思ったら応援しよう!