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臭い町

 かつてたくましく煙を吐いていたこの町は、今や健康志向の町に変わっております。星もきれいに見えております。おそらくあの頃から今の煙のない町を見れば、希望のない田舎町と映ることでしょうね。

 しかし文明は進歩するものだ。きっと何か変わったところがあるはずだが、さて何が変わったんだろう?いや何も変わってない。と、この町に六十年以上過ごしている、ぼくは思うのであります。

 市をあげて環境問題に取り組んではいるものの、企業による汚染を減らしただけのことでありまして、今はあの当時にはなかった汚染があるのです。

 一つに車による汚染がありまして、当時とは比べものにならない量の車が走っているのです。町は排気ガスが充満し、とくに幹線沿いなどは、臭くてとても歩ける状態ではないのであります。

 また、飽きもせず道路工事をやっているせいで、そこにアスファルトや重油の臭いが充ち満ちて、町は確実に汚れていっているのであります。

 もう一つに異国からの公害がありまして、春になると目が痛くなる。もう少し暑くなると息苦しくなる。さらにはいろいろなゴミが漂着し、きれいになった海を汚している。

 結局、環境問題に取り組んでいるこの町は、ストレートに臭い町から、どんより臭い町に変わっただけでありまして、他の地域の人から見ると、相も変わらず臭い町に映るのであります。

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