空飛ぶ円盤
1,
小5の3学期だった。
5時間目の授業中に、ぼくは隣の席のヤツとおしゃべりしていて、「二人とも廊下に立っとけ!」となったことがある。
3学期の廊下は寒い。さらに当時の校舎は木造だったので、窓から隙間風が入ってきて、その寒さに追い打ちをかける。その寒さを忘れるために、ぼくは一緒に立っているヤツにしゃべりかけた。
「おれ、さっきから気になっとったんやけど、あの雲の横に何かないか?」
「どの雲か?」
「左側の小さい雲たい。光っとるのがあるやろ」
「ああ、あれか」
「あれ、空飛ぶ円盤やないんかのう」
「まさか。飛行機やろう」
「いや、空飛ぶ円盤に違いない。飛行機は昼間は光らんし、ずっと止まっとるわけないやん」
「そうかのう」
そいつは信じてなかったようだが、ぼくはそれを『空飛ぶ円盤』と断定した。
そして授業が終わった後、教室に戻ったぼくは、皆の前でその話をした。皆ぼくの話を興味津々に聞いていた。
2,
小学生の頃、5時間目以降の授業の時は、いつも身が入らなかった。それは算数や理科といった嫌いな課目の時だけではない。あの日、先生から廊下に立たされたのは、大好きな社会科の授業の時だったから、課目の好き嫌いに関係なくダレていたのだ。
きっと食後の満腹感のせいでそうなったのだろうが、おかげで将来のネタを見せてもらったのだった。
3,
『空飛ぶ円盤』、ぼくが小学生の頃までUFOのことをそう呼んでいた。
調べてみると、『UFO』と呼び出したのは、1970年代にイギリスで「謎の円盤UFO(ユーエフオーと言っていた)」というドラマが始まってからだという。
4,
ぼくはUFOを三度見たことがある。
一度目はその時で、二度目は中三の時ドローンのような光の隊列。三度目は社会に出てからで、葉巻のような形のものが空に浮いていた(その時は嫁さんも目撃している)。
UFOを見てから人生観が変わったとか、影響を受けたとか言う人がいるが、ぼくはそうはならなかった。ブログのネタになっただけだ。