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延命十句観音経霊験記-就職編
「ああ、仕事が見つからん」
十八年前、勤めていた会社を辞めてから、ぼくはけっこう長い時間、個人でいろいろなことをやっていたのだが、それがにっちもさっちもいかなくなり、しかたなく就職を探している頃のことだ。
すでに五十歳を超えていたために、そうそう仕事は見つからない。資格を活かそうと、その方面の仕事を探ってみたが、雇ってもらえない。体力があるほうなので、力を使った仕事の面接も受けてみたが、年齢を理由に断られる。
それからのことを考えると、気になって夜も眠れない。そういうことが何日か続いた。
ある日、ぼくはとにかく眠ろうと、かの十句観音経を必死に唱えていた。一時間くらい唱えた頃だったか、ようやくぼくは眠りに着くことが出来た。
翌朝、コンビニで仕入れてきた求人誌を手に取り、パッと広げたページの記事を見て、ぼくは思わず笑ってしまった。
そこには、ぼくの愛車と同じ車のイラストが描いてあり、その前にぼくと同じ柄のネクタイを締めた男の画が描いてあったのだ。
そこに載っていた仕事は、ぼくの専門分野で、一度はやってみたいと思っていた職種だった。
「これだ」と思ったぼくは、さっそく先方に電話した。数日後、面接を受けてその場で、就職は決まった。それも好条件で。ぼくにとって久しぶりの霊験だった。
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