幻のワンダーフォーゲル部
※5月10日分
大学1年生の時、1ヶ月だけワンダーフォーゲル部に入っていた。というか、ちゃんと活動したことは無かったので、入っていたとは言えないかもしれない。
高校まではずっと野球をやっていたが、思うように上手くなれなかったので、大学からは違うスポーツをしてみたいと思っていた。サークルという選択肢もあったが、しっかりやっている感を得たかったので、体育会の部活に入ろうと思っていた。
中学・高校時代にロードバイクやマウンテンバイクに乗っていたので、自転車競技をやろうと思っていたが、進学した大学には自転車の部活が無かったので、これまた趣味でやっていた山登りからワンダーフォーゲル部を選んだ。
ワンダーフォーゲル部の部室の横には山岳部の部室があったが暗い雰囲気を醸し出していたし、部員がほとんどいないようだった。ワンダーフォーゲル部の方はメンバーも数十人いて、女子部員もいたので、こちらの方がいいと思った。
嘘か本当かわからないが、ワンダーフォーゲル部の先輩が「ワンダーフォーゲル部と山岳部の違いについて、山岳部は垂直方向の動きがあるが、ワンダーフォーゲル部にはそれが無い」という感じのことを言っていた。山岳部の方が危険だから人が少ないのだろうか。
ワンダーフォーゲル部の新歓では大学の裏山にみんなでハイキングをするというものだった。先輩も優しく、色々なことを教えてくれた。登山活動の帰りや練習終わりにはみんなでラーメンを食べに行くこともあるなどと聞いて、雰囲気も良さそうだと思った。
全体練習も火曜日と水曜日だけと聞いたので、これならアルバイトや他の勉強などとも両立できるのではないかと思って、入部を決めた。
入ってまず驚いたのが装備を揃えるのにかかるお金である。靴やザック、靴下から、ウェアや食器などを揃えると約20万円くらいかかるという。装備が必要だとは思っていたが、こんなにも高いとは思わなかった。先輩は「どれも丈夫で一生使えるものだから」とは言ったが、決して安くはない。
ここで少し思っていた感じとは違うと思ったが、すぐに辞めるのも情けないので、装備の採寸会には参加した。
私が退部を決めたのはトレーニングについてであった。体幹トレーニングはキツかったが必要なものだと納得できた。
ただ、ランニングのトレーニングがあって、それは感じ的にはトレーニングというよりも根性を鍛える、試すという感じだった。
山登りでいえば持久力が必要となるはずであるが、トレーニングでは数キロの距離を全力ダッシュするというものであった。こんな瞬間力は必要ないはずだ。
私にはどうしてもトレーニングというより、ただ根性を鍛えるだけというか、代々そういう苦しみを味わってきたというような伝統で行われているように感じた。
私は大学の部活も結局は高校野球みたいな感じなのかと思ってガッカリした。そして、これなら部活をやる必要は無いなと感じた。私は山登りがしたいのであって、根性を鍛えたいのではない。なので、退部を決めた。
私と同時に同学年の女の子も1人辞めた。今まで文化系の部活だったので、トレーニングがきつすぎるということで退部を決めたらしい。
私は退部を決めて良かったと思っている。部活として何かを頑張ることはそれは素晴らしいと思う。だが、先輩が決めた山に登るより、自分で決めて山に登る方がずっと楽しい。根性がどうこうなんてつまらない。
私はそう思った。